めざせコナモンマスター #4

高度0mで制空権争いを始める秋水と銀のたこ焼き 3:https://togetter.com/li/1414998 前編:https://togetter.com/li/1416207
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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2019-10-11 21:01:00
劉度 @arther456

【めざせコナモンマスター】#4

2019-10-11 23:48:34
劉度 @arther456

決勝の地はローマ。ヨーロッパで最も古い歴史を持つ都市だ。今日、この法王のお膝元で、初代コナモンマスターが決まる。ちなみに法王は「帰ってくれ」とコメントを残してバチカンに引きこもった。このイベントは、法王が関わるにはあまりにも世俗すぎる。1

2019-10-11 21:03:00
劉度 @arther456

「さあ、いよいよやって参りました!コナモンリーグ決勝戦!世界最強のコナモンマスターは誰か!白黒はっきりつける時がやってきました!」司会のグレカーレが声を張り上げる。会場は満員の人で賑わっている。人間だろうと深海棲艦だろうと、美味いものに目がないのは同じだ。2

2019-10-11 21:06:00
劉度 @arther456

「決勝は搦め手無し!純粋に味のみの勝負です!予算無制限、30分で一番美味しい料理を作ってもらい、審査員からより多くの点をもらった方が勝者となります!」審査員席には5人が座っている。筆頭は大会委員長ミルコ・ウリッセ、その次が大会スポンサーのジョヴァンニ氏。3

2019-10-11 21:09:00
劉度 @arther456

更にイタリアの最高機関『11人会議』からは“オーナー”と“皇帝”が参加する。オーナーはイタリア料理界の頂点に立つ人間であり、一流のシェフである。皇帝はとにかくグルメであることが知られている。そしてここに、特別審査員としてメガ・ネギュウドンが加わる。4

2019-10-11 21:12:00
劉度 @arther456

彼らはそれぞれ20点を持ち、料理には最大100点が与えられる。いずれも舌には自信がある面々だ。小手先のごまかしは効かない。「では選手入場です!まずは赤コーナー、ポルポ・ダンジェント代表、ヴァリアント!」入ってきたのは紅白の深海棲艦、深海地中海棲姫・ヴァリアント。5

2019-10-11 21:15:00
劉度 @arther456

「対して青コーナー!日本代表、龍驤!」反対側から入ってきたのは、小豆色の装束に身を包んだ少女。横須賀鎮守府第33艦隊所属の艦娘、龍驤だ。ヴァリアントと龍驤は、会場の中央でにらみ合い、バチバチの火花を散らす。言葉は不要、雌雄はたこ焼きで決するのみ。6

2019-10-11 21:18:00
劉度 @arther456

「まさか龍驤が決勝まで行くとはねえ」来賓席に座る提督は感慨深げに呟いた。「提督は、龍驤が途中で負けると思っていたのですか?」隣に座る不知火が尋ねる。「うん、まあ。お陰で審査員席に座れなかったよ。スポンサーの席、本当は私が座るはずだったんだぞぅ」「そうですか」7

2019-10-11 21:21:00
劉度 @arther456

話しているうちに、ヴァリアントと龍驤が調理の準備を進めていた。今回、龍驤は全ての食材を自分で揃え、持ち込んでいる。2回戦のような買い占めや裏工作を防ぐためだ。それに、この国では手に入らない食材もある。「よし、ソースはちゃんとあるな」自家製のたこ焼きタレだ。8

2019-10-11 21:24:00
劉度 @arther456

「準備はできた?できたね?」司会は後方に向かって頷いた。「それではっ!コナモンリーグ決勝戦、30分一本勝負……始めーッ!」太鼓が力強く叩かれ、最後の戦いが始まった。龍驤とヴァリアントはまずたこ焼き用鉄板に火を入れ、温めている間に具材を切り始めた。9

2019-10-11 21:27:00
劉度 @arther456

ネギ、紅生姜、そしてタコ。どちらも慣れた手付きで具材を適切な大きさに切り分けていく。ほぼ同時に次の工程、生地づくりに入った。小麦粉にだし汁と水を入れ、よくかき混ぜると、クリーム色の液体が出来上がった。これを鉄板に注ぐことで、小麦粉が固まり、たこ焼きが出来上がる。10

2019-10-11 21:30:00
劉度 @arther456

材料を作っている間に、最初に火を入れた鉄板が温まっている――はずであった。「何やと……?」龍驤の鉄板に異変が起きた。油を塗っているのに、鉄板から白い煙が上がらない。すなわち、温度が十分に上がっていないことを意味する。「……おい、まさか!?」11

2019-10-11 21:33:00
劉度 @arther456

龍驤はヴァリアントの方を見た。ヴァリアントは得意げな顔を見せると、龍驤に見せつけるかのようにたこ焼きの具材を鉄板で焼き始めた。「やられた……!」何らかの細工はしてくるとは思っていた。だが、まさか大会運営の目をくぐり抜けて、調理器具に細工をしてくるとは!12

2019-10-11 21:36:00
劉度 @arther456

「おーい、審判!ガスの調子が悪いんや!新しいの、持ってきてくれるか?」「ガスですか?はい……えーと、準備に10分かかります!」「何やて!?遅いわドアホ!」既に10分が経過している。具材を焼く時間を考えると、これ以上遊んではいられない。13

2019-10-11 21:39:00
劉度 @arther456

「火、火……!」龍驤は必死に考える。すぐに用意できて、十分な火力を吐き出せるもの。「……あ」そこで龍驤は、今回ヨーロッパに来た目的を思い出した。すぐさま来賓席の提督の下へ駆け寄る。「どうした、龍驤」「キミ、あのロケット戦闘機、貸してくれへん?」「え、ええっ!?」14

2019-10-11 21:42:00
劉度 @arther456

提督がヨーロッパに来た理由はコナモンリーグのためだけではない。ドイツでようやく実用化に至った、高高度迎撃用戦闘機の使い魔を、ドイツから受け取る仕事もあった。「頼む、どうしても今すぐ火力が必要なんや!後で返すから、な?」「いや、でもねえ……」15

2019-10-11 21:45:00
劉度 @arther456

「何やー、ケチ!ドアホ!人がこんだけ頼んでんのに!」「一応軍事機密だよこれ!?それに、龍驤じゃこの使い魔は使えないでしょ?」その言葉に、龍驤はむっとした。「おいおい、ウチが何年空母やってると思っとるんや?ごまかし方の一つや二つ、ちゃーんと知っとるで」16

2019-10-11 21:48:00
劉度 @arther456

龍驤は調理場に戻り、チョークを取り出すと地面に何か書き始めた。「おっと、龍驤選手、何か書いています。料理が美味しくなるおまじないでしょうか?」やがて、龍驤の足元に簡易航空基地魔法陣が描かれた。「どや?これなら、飛ばすくらいならできるやろ?」17

2019-10-11 21:51:00
劉度 @arther456

「う、むむ……そこまで言うなら……仕方ない」提督はようやく折れた。不知火から差し出されたケースを開き、中から水晶を取り出す。ドイツ式航空式神だ。「おおきに!」それを受け取った龍驤は、水晶を眼前にかざすと、呪文を唱えた。18

2019-10-11 21:54:00
劉度 @arther456

水晶から強烈な光が放たれる。それが収まると、龍驤の手の中に緑色の航空機を模した式神が現れた。ロケット戦闘機『秋水』。高高度から飛来する爆撃機を迎撃するために開発され、しかし遂に完成しなかった、幻の機体であった。「えっとこれをこうして……」龍驤は秋水を操作する。19

2019-10-11 21:57:00
劉度 @arther456

すると、ロケットブースターが点火し、巨大な火柱が吹き上がった。「オアーッ!?」「何だァ!?」騒然となる観客!「龍驤!危ない、やっぱやめろ!」「構わへん!コナモンのためなら、例え火の中水の中草の中森の中や!」「それは違う意味で危ない!」20

2019-10-11 22:00:00
劉度 @arther456

龍驤が集中して念じると、ロケットの火は徐々に収まり、ガスバーナーぐらいの大きさになった。「どや?」「どや?じゃないよ、どうするのそれ」「そらな、勿論、こうするんや!」龍驤は秋水の火をたこ焼き鉄板の下に突っ込んだ。たちまち鉄板が熱され、白い煙が立ち上った。調理準備は万端だ。21

2019-10-11 22:03:00
劉度 @arther456

「さあ、仕切るでーっ!タコ隊、ネギ隊、紅生姜隊、発艦!」刻まれていた具材が、満を持して鉄板に飛び込んでいく。具材を焼く間に龍驤は小麦粉をボウルに空け、だし汁と水を注ぎ込み、それらを混ぜた。たこ焼き生地ができあがった頃には、具材も十分焼けていた。22

2019-10-11 22:06:00