哲学院生のアライさんによる哲学話

哲学史に関する「新発見」や「最新の研究」、「常識と異なる実情」などを紹介しているのだ!読んだ人が哲学書や解説書、論文などを読んで哲学に触れることが目的なのでぜひ気になった参考文献を読んで欲しいのだ! もしアライさんの言ってることに間違いがあったり、疑問に思うところがあったらコメントや質問箱、リプで教えてほしいのだ!(引用は気づかないことがあるのだ) ※基本的には、日本語の文献を紹介していくスタイルなので、アライさんの思想を発表しているわけではないのだ。 続きを読む
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※基本的には、研究者による日本語の文献を紹介していくスタイルなので、アライさんの思想を発表しているわけではないのだ。
は使った文献の一部または全部がネットで無料で読める哲学話につけてるのだ!

ぜひ論文や哲学書を自分で読んでほしいのだ!

哲学話リスト(時系列順)

古代

哲学話①【ソクラテスは無知の知なんて言ってない?】

中世

近代①

哲学話⑬【ルターの信仰義認論の今!】
哲学話⑪【ベーコンの帰納法は普通の帰納法じゃない?】
哲学話⑫【ベーコンの「知は力なり」は単なる自然支配ではない?】
哲学話③【「我思うゆえに我あり」と「我思う、我あり」】
哲学話⑱【哲学史って勉強する意味あるのだ?(デカルト・スピノザ etc.)】
哲学話㉟【ホッブズは専制君主を擁護していたわけではない?】
哲学話㊲【ロックの権利論とは?】
哲学話㊹【ロックの権力分立論とは何か】
哲学話⑭【モリヌークス問題とは?ー経験論と合理論の対立?ー】
哲学話㊻【モンテスキューは三権分立なんて言ってない?】
哲学話㊼【モンテスキューは三権分立なんて言ってない?2】

近代②

哲学話㊳【ルソーの権利論とは?】
哲学話⑨【アダム・スミス・ルネサンスって何?】
哲学話⑩【アダム・スミス問題って何?】
哲学話㊱【カントの世界市民権・訪問権とは何か】
哲学話㊴【どんなときも嘘をつくべきではない?―カントと嘘論文】
哲学話④【ヘーゲルの歴史哲学の常識が覆されそう?】
哲学話⑰【「ドイツ観念論」という言葉は間違ってる?】
哲学話②【哲学の自殺者クラブって知ってる?】
哲学話㉓【最近マルクスに注目が?新たなマルクス研究=MEGA研究とは?】

現代①

哲学話⑲【キルケゴールの「実存」って何?】
哲学話⑳【キルケゴールの逆説弁証法って普通の弁証法とどう違うの?】
哲学話㉑【キルケゴールが重要視する信仰って結局なんなの?】
哲学話㉒【ニーチェ「神は死んだ」って本当はどういう意味?】
哲学話㉔【ヤスパースの実存とは?】
哲学話㉙【贈与論ってなに?―マルセル・モース―】
哲学話㉗【『論理哲学論考』の新しい読み方とは?―最新の研究】
哲学話㉕【ハイデガーと中世スコラ学との意外な関係?】
哲学話㉖【サルトルとレヴィ=ストロースの論争ってなんだったの?】
哲学話⑮【科学哲学と分析哲学の違いとは?】
哲学話㊶【アーレントにとっての悪とは?その1】
哲学話㊷【アーレントにとっての悪とは?その2】
哲学話㊸【アーレントにとっての悪とは?その3終】
哲学話㉘【フーコーは同性愛とどう向き合ったの?】

現代②

哲学話㊵【なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか】
哲学話⑯【反出生主義を批判できるのか?】
哲学話㉚【フェミニスト現象学って何?―「男らしさ」の現象学―】
哲学話㉛【フェミニスト現象学って何?―月経と身体論―】
哲学話㉜【フェミニスト現象学って何?―ボーヴォワール『第二の性』―】
哲学話㉝【感染した人の行動を制限していいの?】
哲学話㉞【「患者の権利」って何?】
哲学話⑤【ポピュラー哲学ってどうなの?】
哲学話⑥【カール・レーフラー事件!】
哲学話㊺ 【人新世の資本論とは何か】

東洋

哲学話⑧【『老子』は無為自然なんて言ってない?】
哲学話⑦【『大乗起信論』はインド産じゃなかった!?】

その他

哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

今日やるのは【無知の知なんてソクラテスは言ってない?】なのだ。 twitter.com/tetsugaku_arai… このアンケートの「最新の研究」、「よくある誤解とそれに対する指摘」なのだ。 twitter.com/tetsugaku_arai… こっちのアンケートでも「無知の知」だと教わっている人が多いけどそれが誤解であることを示すのだ。 pic.twitter.com/WcXWIBFePn

2019-07-03 19:54:27
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

学校や大学で、ソクラテスについて○○と習った?

2019-07-02 08:40:59
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⓪【無知の知なんてソクラテスは言ってない?】 今回はソクラテスの「無知の知」について問題にするのだ。ねらいは (1)「無知の知」(②③④)がまちがっていることを示す(⑧⑨⑩) (2)原典に遡って研究することの意義を示す(⑤⑥⑦) (3)おまけ(⑪~⑰) の二つなのだ!読みたいとこを読むのだ!

2019-07-03 19:58:16
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

①【参考文献】 ・一般書:納富信留『哲学者の誕生 ソクラテスをめぐる人々』、ちくま新書 amazon.co.jp/dp/4480062491/… ・論文:同「ソクラテスの不知―「無知の知」を退けて―」、思想(948) ci.nii.ac.jp/naid/400057375… 納富はかせは有名な東大の古代哲学研究者なのだ!二つとも同じ内容を扱っているのだ

2019-07-03 20:00:51
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

②<無知の知のよくある誤解1> まずは、よくある「無知の知」の理解を紹介するのだ。ソクラテスは「国家公認の神々を否定し、青年たちを腐敗させた」罪で起訴されて死刑になり、毒杯を飲んで死ぬのだ(史実)。その裁判での弁明をプラトンがアレンジしつつ(?)書いたのが『ソクラテスの弁明』なのだ! pic.twitter.com/A1iYXp0AsS

2019-07-03 20:03:25
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

➂<無知の知のよくある誤解2> ソクラテスが知者と対話したら、知者も善や美といったことを「知らないのに知っていると思っている」ということがわかったのだ。でもソクラテスは「知らないということを知っている」から他の知者よりちょい優れてる!これが「無知の知」のよくある理解(誤解)なのだ!

2019-07-03 20:06:54
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

④<無知の知は変?> でもよく考えてみるとおかしいのだ。「無知の知」というと聞こえはいいけど、なんか変なのだ。ソクラテスは「自分は何も知らない」と言っているのに一つ知っているのだ?つまり、「何も知らない、ということを知っている」という点で 「無知」じゃないのではないか?なのだ。

2019-07-03 20:08:30
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑤<ギリシア語でチェックするのだ!1> 「おかしいな」と思ったらよく読んでみるのが一番なのだ。そこで研究の出番なのだ。このとき大事なのは、翻訳ではなく原典に遡って調べることなのだ。今回は誰でも見られる無料のサイトを紹介するのだ!→Perseus Degital Library perseus.tufts.edu/hopper/

2019-07-03 20:12:15
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑥<ギリシア語でチェックするのだ!2> ソクラテスの弁明 の該当の箇所はここなのだ 21d perseus.tufts.edu/hopper/text?do… 右の English の show をクリックすると英訳が出てくるのだ。このサイトは単語をクリックすると意味と文法がすぐ出てくるという優れものなのだ!でもこれに依存するのは要注意なのだ pic.twitter.com/avFP0bQ90v

2019-07-03 20:16:07
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑦<ギリシア語でチェックするのだ!3> 「a知らないということをb知っている」のaは εἰδέναι(エイデナイ,εἰδώ,οἶδα)=知る、bは οἴομαι(オイオマイ)=思う、という動詞なのだ!つまり、「知らないということを知っている」ではなく「わたしは知らないから…知らないと思っている」だったのだ! pic.twitter.com/WLLiQpHI7b

2019-07-03 20:23:32
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑧<じゃあ知と自覚ってどう違うのだ?> エイデナイはknow、オイオマイはsupposeとかthinkなので、違う言葉なのだ!じゃあそもそも「知」と「思う(自覚)」はどう違うのだ?納富はかせは、自覚(思う)は「自己の在り方」に関わるもので、知のような「確固とした認識」と違うことを示しているのだ。

2019-07-03 20:25:32
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑨<不知の自覚と知への愛> 実は、知らないとを自覚している、という自己の在り方は、「知を愛し求める」につながるのだ!「無知(知らない)」を知っているだけだったり、知らないのに知っていると思っているなら、探究なんかしないのだ。でも、知らないとを自覚している人は探究をやめないのだ!

2019-07-03 20:29:00
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑩<知を愛し求めるとは?> ここで哲学=PhilosophyはPhilo(愛・求)とSophia(知)の二つでできていて、プラトンは「知を愛し求める」という動詞で表現したのだ!納富はかせによると、ソクラテスの探究は「知ること」を目指すというより、自分の「知らなさ」への反省を徹底すること、だそうなのだ!

2019-07-03 20:33:06
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑪<無知と不知> 納富はかせによれば、「無知」と「不知」も違うのだ。無知というの知らないのに知っていると思っているときの恥ずべき無知であり、愛知に向かわないのだ。でも不知は知らないと思っているときのもので、知を愛し求めることに向かうのだ。つまり「不知の自覚」が正しい表現なのだ!

2019-07-03 20:35:37
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑫<誤解の原因> なぜこんな「無知の知」という誤解が広まっているのだ?これはキケロ(前1世紀)→ラクタンティウス(後3-4世紀)~ラテン中世~クザーヌス(15世紀)…という感じで哲学者たちがまちがえて理解していたからなのだ…。日本にもこのまま導入されたので「無知の知」が広がっているのだ。

2019-07-03 20:37:04
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑬<これって外国もそうなのだ?> もちろん、外国にもこの誤解は広まっているのだ。しかし、最近では無知の知というかっこいい表現はやめて、より正確な言い方にする動きが出ているそうなのだ。納富はかせがあげている文献では1991年(イギリス)が一番古いものだったのだ。

2019-07-03 20:37:50
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑭<え?「無知の知」と言っている対話篇もあるのだ?> ちなみに、アルキビアデスⅠという対話編で3か所「知らないということを知っている」という表現は出ているのだ…。しかし、この本に「偽作疑惑」があるし、文脈が、無知の知を支持するものではない、と納富はかせは言っているのだ。

2019-07-03 20:41:29
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑮<まとめ> 「無知の知」は、よく読んでみると「そもそも書いてない」し、無知の知だと「ソクラテスの哲学を理解できない」ので誤解であると同時に害悪でもあるのだ。<知らないということを自覚しているからこそ、知への愛(哲学)へ向かう>、という含意を込めて「不知の自覚」が正しいのだ!

2019-07-03 20:42:37
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑯<おまけ:アライさんの心配なこと~哲学文献の統計調査~1> 納富はかせは日本への「無知の知」の流入について、「私の調査では、昭和初期以前にはほとんど見られない」と述べ、注では「…現在入手可能なものを主としている。不十分な点についてはご教示願いたい」と書いているのだ。

2019-07-03 20:43:41
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑰<おまけ:アライさんの心配なこと~哲学文献の統計調査~2> 哲学でも、「この時代には使われていない」とかを統計調査っぽいので示すけど、アライさん心配なのだ。文献の統計のやり方とかの技術を勉強していない哲学フレンズがこんなことをしても正確な調査ができるのだろうか…という心配なのだ

2019-07-03 20:45:17
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑱<補足> ・納富はかせがアルキビアデスIを偽書としてるかは微妙なのだ ・ほぼすべての翻訳は「知らないーと思っている」と訳し分けているのだ ・今回は史的ソクラテスの問題は無視したのだ ・『ソクラテスの弁明』は納富はかせも訳しててなかなか解説が充実してるのだ。 amazon.co.jp/dp/B00H6XBHOM/…

2019-07-03 20:58:56
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

①【哲学の自殺者クラブって知ってる?】 「自殺者クラブ」という極めて不気味な名前のサークルが哲学史にあるので、今回はそれを紹介するのだ…。 【参考文献】 論文:伊藤直樹「自殺者クラブ : 一八六〇年代のベルリンに集う若き研究者たちによる実証主義受容」(理想702) ci.nii.ac.jp/naid/400218427… pic.twitter.com/JljpVUHsO4

2019-07-09 22:32:09
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

②【自殺者クラブの参加者】 自殺者クラブは1860年代のベルリンにあったクラブで、参加者はH.グリム(グリム兄弟の弟の息子)、ディルタイ、W.シェーラー、J.シュミット、トライチュケなどが有名なのだ。メンバーもマイナー!!この中で哲学上かなり重要なのはディルタイ(とトライチュケ)くらいなのだ… pic.twitter.com/nGFkJSKvx7

2019-07-09 22:34:06
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

③【自殺者クラブの名前】 なんで「自殺者クラブ」という名前なのかというと、これがまたかわいそうなのだ。まだ教授になれず私講師だった彼らは「講義ではなく自分の研究に精を出せば、結果的に稼ぎは入らず自分の首を絞める」だから「研究すること=自殺すること」、ゆえの「自殺者クラブ」なのだ…

2019-07-09 22:35:59
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

④【自殺者クラブは何をしていた?】 自殺者クラブでは基本的に「自分たちの生活の苦しみについて」話してたらしく、愚痴を言う場所だったみたいなのだ。ア界オフ会?みたいなのだ もちろん哲学的にも重要なことをしていたのだ。それは「隆盛する自然科学」との対決と「実証主義」の批判的な需要なのだ

2019-07-09 22:38:02
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