自転車は車と同じ、というvehicular cycling思想のジョン・フォレスター氏による唱導と日本への伝播

自転車は車と同じ(ように走るべきである)、というvehicular cycling思想。ジョン・フォレスター氏が1970年代以降にアメリカで広めたこの思想の自転車利用全体への影響と、日本への伝播について。
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Vehicular Cyclingのメリットとデメリット

「車と対等」であることを信条とし、車のための道路交通ルールに合わせて車と一緒に(幹線道路でもどこでも)車道を走るvehicular cycling。その走行テクニック(車線中央を走る、等)は、十分な身体能力を持ち、練習を積んだ人にとっては役に立つ場面も多いものです。
しかしながら、そうした走り方を実践できる人は少数です。vehicular cyclingを前提とした自転車政策は大多数の自転車利用者(および潜在的自転車利用者)を置き去りにしたものになり、道路環境は物理的な力で勝る自動車にとって有利なものになってしまいます。
現在、事故・健康・環境など多くの点で社会全体の負担になる自動車依存を低減するべく世界各地の都市で道路再編が進む中で、幹線道路の自転車走行空間は車の流れから物理的に分離されたものにすることがスタンダードになっています(オランダやデンマークが手本)。

フォレスター氏インタビューへの反応

となりのじてんしゃ @BikeNextToYou

「車と同じように走ればよい」「分離インフラは不要」というvehicular cycling思想。 これをイギリスからアメリカへ持ち込んで広め、全米の自転車インフラ整備の停滞と自転車利用の低迷を引き起こしたJohn Forester氏(89)との対談。とても読み応えがあります。 注目した点をいくつか連ツイします。 twitter.com/Pflax1/status/…

2019-10-03 17:35:01
Peter Flax @Pflax1

That time I had a two-hour interview with John Forester. If you ride bikes or care about how cities are designed—or even if you hate bike lanes—you may find this interesting. This is not a bare-knuckles debate; it's an actual conversation. medium.com/@peterflax/a-s…

2019-09-30 05:15:57
となりのじてんしゃ @BikeNextToYou

John Forester対談、最も恐ろしく感じたのは追突事故(=死亡リスクが高い)の軽視です。同氏は事故全般における交差点事故の多さを挙げて「追突を心配することは非科学的」と論じていますが、怪我と死を等価に扱うことこそ非科学的です。 同じ論法を日本の自転車行政に関わる人々もしばしば使います。

2019-10-03 17:47:52
まとめ 側方間隔ルールと構造分離 ~クルマが自転車を安全に追い越す・追い抜くようにするには~(2016年11月) 「自転車で車道を走るとクルマがスレスレを通って怖い」と感じている人は少なくないはず。混走環境での「側方間隔ルール」は世界各地にありますが、現実に強制力を伴っている例は稀です。ここでは米英の先進施策を紹介し、愛媛県の「思いやり1.5m運動」と比較してみました。加えて、車道の重大事故リスクが報告されているのに「混走を防ぐ構造分離インフラ」の推進に力を入れようとしない国土交通省の問題も指摘しています。 9508 pv 95 1 user 6
となりのじてんしゃ @BikeNextToYou

車に混じって車道を走っていると(ルールを守っていても)追突事故に遭い命を落とすかも、というごく当然の恐怖。 John Forester氏はこれを、車優越主義者らが植え付けた、実体の伴わない恐怖症と断定。 一種の陰謀論を用いて(恐らく自分でも信じて)現実と気持ちの問題をすり替えているわけです。

2019-10-03 17:59:53
となりのじてんしゃ @BikeNextToYou

安心感が高く実際に安全性も高いことが様々な研究により示されている、物理的に車の流れから分離された自転車走行インフラ。 その整備をJohn Forester氏は車優越主義に従属するものとみなしています。 車と同じに扱われるか、という形式とメンツを何より(現実の人の命や恐怖より)重視する思想。。

2019-10-03 18:11:48
となりのじてんしゃ @BikeNextToYou

車を「優」、自転車を「劣」と扱わない、との(抽象的な)考えには賛同します。が、何をもってそうした扱いの優劣を判定するのか。 自動車に偏って割り当てられていた道路空間を自転車利用者のために再配分することを、車と同じように扱っていないという理由でJohn Forester氏は「劣」扱いとみなす。

2019-10-03 18:30:45
となりのじてんしゃ @BikeNextToYou

車のための空間を減らし自転車のための空間を増やす施策は、現実における車と自転車の扱いの不平等を是正することですよね。 これを否定して車道混走という名目上の対等さにこだわるJohn Forester氏の思想は倒錯しています。でも、同様の思想が日本でも自転車行政に大きな影響を与えてきました。

2019-10-03 18:53:31
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

medium.com/@peterflax/a-s… 1970年代以降、アメリカを始めとする英語圏の自転車政策に絶大な影響力を及ぼしてきたvehicular cyclingという思想。その生みの親であるジョン・フォレスター氏へのインタビュー記事です。

2019-10-16 03:13:42
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

思想の影響力は2010年代に入って終焉を迎えたと言われますが、約40年間に亘り支持を集めた思想の原点である人物は、一体どんな生い立ちで、どんな思考回路の持ち主なのか。非常に興味深い記事でした。

2019-10-16 03:13:42
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

先に背景を説明しておくと、vehicular cyclingは自転車が一台の車として車道を走ることを最善とする思想で、1970〜2000年代に掛けて、アメリカを始め英、豪、NZなどで一部のサイクリストから熱狂的に支持され、車道から物理的に分離された自転車通行空間の整備を妨げてきました。

2019-10-16 03:13:43
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

その影響で、つい最近まで米英豪NZでは日常の移動手段としての自転車は絶滅の淵に立たされていました。同じ40年間でオランダが自転車道を地道に整備し、一度はモータリゼーションで激減した自転車利用者数を回復させ、自転車大国になったのとは対照的です。

2019-10-16 03:13:43
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

2000年代後半から、そうした国々の各都市がオランダやデンマークに倣い自転車道(protected bike lane)を整備するようになります。嚆矢であるニューヨークでは、自転車利用者の増加や、その年齢・性別の多様化、トリップ数当たりの事故件数の減少が報告されています。

2019-10-16 03:13:43
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

こうした背景から私がこのインタビューで最も注目したのは、フォレスター氏が自身の思想と現実の齟齬にどう整合性を取っているかです。普通に考えればvehicular cycling思想の問題は明らかですが、なぜ今に至るまで同氏がそれを認めずにいられるのかが疑問でした。

2019-10-16 03:13:44
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

記事でインタビュアーは、自転車のために専用通行空間が確保された事や、その結果として自転車利用者が増えたのは良いことなのでは?と問いますが、フォレスター氏は、インフラ整備前のNYでも私は何の問題もなく自転車に乗れていたと主張しています。

2019-10-16 03:13:44
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

(フォレスター氏や血の気の多いメッセンジャー達なら平気かもしれませんが、大多数の人にとってニューヨークの街中で自転車に乗るなど、以前は正気の沙汰ではありませんでした。 youtube.com/watch?v=E85HMN…

2019-10-16 03:13:44
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ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

そして空間再配分や自転車ユーザー増加といった利点は一切肯定せず、ユーザーを車道より本質的に危険な通行空間におびき寄せていると批判しています。

2019-10-16 03:13:44
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

欧州やニューヨーク、シカゴの事故統計から、分離された通行空間を整備すると安全性が高まるとのデータを突き付けられても、「それが不思議な点だ」の一言で済ませ、自転車がドライバー向けの車道のルールに則って走れない状況を嘆いています。

2019-10-16 03:13:44
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

インタビュアーから、vehicular cyclingの走り方は追突される確率が低いにしても、あまりにも恐怖感が強くて殆どの人はしたがらないと指摘されても、車至上主義のドライバーどもが自転車をどう思っているかなんて知ったこっちゃない、と全く噛み合わない回答をしています。

2019-10-16 03:13:45
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

結局、フォレスター氏は自転車が日常の気軽な移動手段として多くの人々に使われているかどうかには興味が無く、車道において自転車が一人前の存在として認められているかどうかが、今も昔も最大の関心事のようです。

2019-10-16 03:13:45
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

車依存社会を問題視していないと読める発言も目を引きます。空間再配分で自転車インフラが整備されてきた都市は例外的な過密都市で、車に依存する弊害が住民自身に跳ね返ってくる。だから、土地に余裕のある大多数の都市では空間再配分は必要ないとの見解を示しています。

2019-10-16 03:13:45
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

だとすれば、車依存からの脱却を基本的価値観とする陣営から見て明らかな失敗と映る、自転車の交通分担率の低迷に、微塵も信念が揺らがないのも道理です。

2019-10-16 03:16:40
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

記事の冒頭と最後に掲載されているフォレスター氏の写真からは、この価値観の断絶を象徴する痛烈な皮肉が感じ取れます。

2019-10-16 03:53:05
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

フォレスター氏が手に持っている「自転車の車道通行禁止|歩道を走れ」という標識は、1970年代のパロアルトに一時期存在した条例を周知するもので、車道通行こそ安全と信じる氏の怒りに火を付け、その後の活動に駆り立てた切っ掛けそのものです。

2019-10-16 03:53:05
ろぜつ@自転車 @rzt_ashr

法廷闘争の末に条例を撤回させ、標識を盗んで自宅に保管している当人にとっては、武勇伝として誇らしげに掲げる敵将の首のようなアイテムなのかもしれませんが、氏の圧力活動でインフラ整備を40年近くも押し留められた側から見れば、標識は囚人が手に持つマグショット・ボードそのものです。

2019-10-16 03:53:06