イメージの中の「ハリウッド・プロデューサー」の具現化、ロバート・エヴァンズ

BBC News (UK) @BBCNews

Robert Evans, Chinatown producer, dies at 89 bbc.in/31S74Te

エンタメ放浪者 ウディ本舗 @woody_honpo

ロバート・エヴァンズが亡くなった。彼は「ゴッドファーザー」と「チャイナタウン」のプロデューサーで済ませてしまうには、ユニークで重要な存在だ。私達が心の中でイメージしていた「ハリウッドの映画プロデューサー」が具現化したような人でもあった。 theguardian.com/film/2019/oct/…

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ロバート・エヴァンズは売れない二枚目俳優からプロデューサーに転身して数々の女優と浮名を流した。政財界や暗黒街と繋がりスターや監督の上に君臨する「イメージのハリウッド・プロデューサー」そのものだが、人間的にはともかく、映画については確かな目と情熱を持った本物のプロデューサーだった。 pic.twitter.com/a1wKteufsI

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ロバート・エヴァンズは、70年代のTVに押されていたニューシネマ全盛のハリウッドで、娯楽映画の新しい形を示した。「ローズマリーの赤ちゃん」は70年代ホラー・ブームの、「チャイナタウン」はネオ・ハードボイルドの、そして「ブラックサンデー」は刑事対テロリスト・アクションの、先駆けとなった。 pic.twitter.com/JfUHLot08u

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「ローズマリーの赤ちゃん」は、往年の怪奇映画作家ウィリアム・キャッスルが原作権を持ち自分で監督したがったが、ロバート・エヴァンズは新しい才能が必要だと考え、ロマン・ポランスキーを起用した（ウィリアム・キャッスルは「製作」に棚上げした）。そしてこの作品はモダンホラーの原点となった。

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ロバート・エヴァンズは「チャイナタウン」で再びロマン・ポランスキーを起用する。この作品はレイモンド・チャンドラー世界の完璧な映像化と言われるが、同時にネオ・ハードボイルドにも影響を与えた。欧米では、「ゴッドファーザー」ではなく「チャイナタウン」をエヴァンズの代表作とする者もいる。 pic.twitter.com/VShzeLjstR

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ロバート・エヴァンズ制作、ジョン・フランケンハイマー監督「ブラックサンデー」は圧倒的に面白い。中東の描写が偏向だと抗議され日本の上映が中止になったが、今観ると「テロリストの事情」を描いているのに驚く。80年代以降の人間味のない絶対悪としてのテロリストとは全く違う、悩める個人なのだ。 pic.twitter.com/Ym4qtLRyxc

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映画の中のテロリストが宗教色と狂信性を強め、中東問題が宗教戦争のように言われ出すのは、80年代以降のことだ。70年代の映画やミステリを見れば、元々は欧米でも、中東問題の本質が宗教対立とは考えられていなかったことが分かる。

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「ある愛の詩」は、プロデューサーのロバート・エヴァンズが妻のアリ・マッグロウをスターにする為に作った映画で、当時すでに古臭かった難病ものを階級問題で装飾してリバイバルさせた。完成間近に「何かが足りない」と感じたエヴァンズは、フランシス・レイを強引に口説き落として音楽を差し替えた。 pic.twitter.com/FXNHWgv1bj

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「ある愛の詩」は小説の出版前から映画化が進行していて、小説、映画、音楽が重層的に宣伝展開されブームを作り出す「メディアミックス戦略」が初めて本格的に採用された作品だった。「ある愛の詩」の小説版を周囲の反対を押し切って翻訳出版したのが、まだ映画制作を手がける前の若き角川春樹だった。

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「ある愛の詩」は極め付きの公私混同企画だったが、それが映画史のメルクマールになってしまうのがロバート・エヴァンズの一筋縄ではいかないところだ。アリ・マッグロウはスターになったが、そのおかげで主演した「ゲッタウェイ」の共演者、スティーブ・マックイーンと恋に落ち、駆け落ちしてしまう。

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ロバート・エヴァンズが「ゴッドファーザー」の監督に、まだ成功作のない若いフランシス・コッポラを起用したのは、彼がイタリア系だという理由だけだった。エヴァンズはリアリティを出すには監督はイタリア系でなければと考えたが、実録マフィア物にビビって大物イタリア系監督には全て断られたのだ。 pic.twitter.com/XqgLpCtcqy

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映画会社は若いコッポラに難色を示したが、エヴァンズは撮影されたラッシュを見て「こいつは出来る！」と評価を改める。しかし、完成した映画に逆の意味で驚いた。それは2時間に編集された「普通のマフィア映画」になっていたのだ。 「これはどういうことだ？」 「会社に2時間にしろと言われたのです」

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「こんなものは私の知っている『ゴッドファーザー』の予告編にすぎない。いいシーンを全部捨てちまったじゃないか。家族のドラマにしたいんじゃなかったのか？」エヴァンズはコッポラと共に再編集に挑む。「ゴッドファーザー」は「プロデューサーの要請で映画が長く再編集された」珍しいケースなのだ。

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このエピソードにコッポラは反論しているが、後のコッポラが自分で編集した「タッカー」や「コットンクラブ」を観ると説得力がある。「描写にはコクがあるが、語り口にコクが足りない」感じなんですよね。一方「地獄の黙示録　完全版」等は妙に冗長で、コッポラ、編集はあまり上手くないのではないか？

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「コットンクラブ」はロバート・エヴァンズがコッポラと再び組んだ作品だったが、映画の撮影中に起きたマフィアの殺人事件に巻き込まれてエヴァンズは制作から外されてしまう。完全した2時間の映画を観て、エヴァンズは再びショックを受ける。素晴らしいディテールの多くがカットされていたからだ。 pic.twitter.com/MIImyIsbqW

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エヴァンズはコッポラに長い手紙を書く。 「君の撮った最高のシーンは編集室の床に捨てられている。『ゴッドファーザー』の時のように、また二人で再編集をしよう。そうすれば、この作品は『ゴッドファーザー』を超える君の最高傑作になるんだ」と…。 しかし、コッポラから返事が来ることは無かった。

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作家の色川武大は当時「コットンクラブ」のディテールの素晴らしさを絶賛していた。色川武大と同世代の米国ショウビジネス・マニアは「コットンクラブ」に熱中して「コットンクラブを観る会」があったらしい。しかし、マニアでない者にもその素晴らしさが分かる映画には、なっていなかったんですよね。 pic.twitter.com/ZqOOYgyTQC

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「ゴッドファーザー」のロバート・エヴァンズとフランシス・コッポラが再び組んだ「コットンクラブ」は大きな期待を集めたが、興行的にも批評的にも中途半端に終わった。しかし、色川武大の熱狂などを見ると、ロバート・エヴァンズが再編集した「コットンクラブ」は、ぜひ観てみたかったと思うのだ。 pic.twitter.com/H8XSfbterp

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70年代には、確かに「ロバート・エヴァンズの時代」があったのだ。当時パラマウント制作部門のトップだった彼の作った映画を並べると ・ゴッドファーザー ・セルピコ ・華麗なるギャツビー ・カンバセーション　盗聴 ・チャイナタウン ・マラソンマン ・ブラックサンデー その渋さと密度に目眩がする。

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ロバート・エヴァンズという大物プロデューサーについては以前コラムを書いたことがあるので、興味のある方はご一読ください。 『エヴァンズとコッポラ、「ゴッドファーザー」を巡るプロデューサーと監督のドラマ』 woody.south-sign.com/?p=1061 woody.south-sign.com/?p=1070