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ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan
【本日の標語】 „Die Eule der Minerva beginnt erst mit der einbrechenden Dämmerung ihren Flug“ - Georg Wilhelm Friedrich Hegel 「ミネルヴァの梟は迫り来る黄昏に飛び立つ」 - ゲオルク・ヴィルヘルム・フリートリヒ・ヘーゲル ヘーゲルの『法の哲学』の序文にある言葉です。
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文法 die Eule:フクロウ der Minerva:die Minerva ミネルヴァ(ローマ神話の知恵の女神)の2格(属格)。前にある名詞にかかって「ミネルヴァの」 beginnt mit 〜:beginnt は beginnen(始まる)の三人称単数に対応。beginnen mit 〜で「〜で/に始まる」
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der einbrechenden Dämmerung:まず、der Dämmerung と「黄昏」は3格(与格)。これは前置詞 mit が3格を要求するため。einbrechenden < einbrechend 「侵入してくる/押し迫ってくる」 ihren Flug:ihren は所有代名詞 ihr の4格(対格)。これは beginnen の目的語となるため。「その飛翔を」
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さて、ヘーゲルという方はえらく難解な書物を書かれていて、中の人は読んでいて何度挫折したやらわかりません(単に中の人に哲学的なセンスがないだけですが)。なので、ざっくりとした説明をいたします。 彼によると、「世界の歴史」とは「世界精神」という存在の自己開陳の結果と言います。
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結果として、精神的な進歩と現実世界との歴史には開きが出ることがあります。 例えば、「民主制」と「専制」とは、「精神的には前者の方が進歩しているのでは? だが、なぜ東洋は専制国家が多いのだ? ああ、世界の精神はどうやら西側から運行するらしい」といった具合です。
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さて、とすれば十八世紀ごろのヨーロッパはフランス革命を皮切りに自由な精神が完成していく過程にあったと言えるでしょう。我が国や中国は幕藩体制や王朝時代(しかも高度に進歩している専制)だったことを思えば、一見これは「なんだ、ヨーロッパ万歳の考え方か」と思えます。しかし、実は逆です。
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「完成したもの」はそれ以上進歩するでしょうか? ヘーゲル後の哲学者たちは、ヘーゲルが完成させた精神の世界から抜け出ていくことから始まっています。キェルケゴールやマルクスがそれにあたり「完成した世界像は美しい」という考え方から「世界と自分はどう関われば?」という疑問にシフトします。
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan
今日挙げた標語は、そうした「ヨーロッパが自己批判に晒される前兆」を予感させるように響きます。 「知恵」が完成するのは時間がかかりますが、黄昏の後には宵闇が広がっています。その中で光を求めるには、己という指針を持って進まねばなりません。皆様にあっても、この世界での指針をお忘れなく。
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尚、今回はカール・レーヴィットの『ヨーロッパのニヒリズム』という小論を参考にしました。1930年代の終わり頃、日本で書かれたものです。 これとは異なる解釈もおありでしょうから、そうしたご意見がある方からのお便りをお待ちしています。 了
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【本日の標語】 „Kein Mensch muss müssen.“ - Gotthold Ephraim Lessing, Nathan der Weise 「何人(なんぴと)も強要されてはならない」 - ゴットホルト・エフライム・レッシング著 『賢者ナータン』より 話法の助動詞 müssen が効果的に使われている言葉です。
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文法 kein:否定冠詞。これがつく名詞は「一つも/全く 〜ない」という意味になる。 Mensch:「ひと/人間」 muss:müssen の三人称単数に対応 müssen:話法の助動詞。ここでは、「〜せねばならない」と言う意味。通常動詞にこの意味を付加するが、この標語のように動詞がない場合もある。
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan
さて、müssen の用法のご注意。英語の must に似ていますが、must の否定形は「してはならない」なのに対して müssen の否定形は 「する必要がない」になります。 例) Morgen musst du nicht arbeiten. 「君は明日働く必要はない」 You must not work tomorrow. 「君は明日働いてはならない」
ドイツ語学ドイツ文学たん @germanist_tan
したがって、本日の標語を英語に直すとこうなります。 No one has to be forced. 元のドイツ語とだいぶ趣が変わりましたね。 「英語に一旦置き換えて」という頭の運動は中の人もよくやりますが、それが効かないこともままあります。だんだんとドイツ語そのものに慣れていきましょう。 了

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