ヨロシサン・エクスプレス #8
「アバーッ!」SS客室の一室が血に染まり、無惨な犠牲者が生じたが、サクリリージにとってそれは単なる武器調達の作業の始まりでしかなかった。「ははは、大急ぎだ」サクリリージは決断的速度で迫るニンジャスレイヤーの足音を聞き、乾いた笑いを笑った。「腕がなるぞ」 0
2019-11-03 16:43:34サクリリージは惨殺体に身をかがめ、手をかざして、有用な部品を確かめた。犠牲となった二人のうち、今回の素材は体格のよい成人男性だ。肋骨の七番目の骨は左右とも良い形をしており、ジツが乗り易いと感じた。サクリリージは死体に手をうずめ、二本のダガーを引きずり出した。 1
2019-11-03 16:50:04「死者から助けを得る」。それがサクリリージに憑依融合したボトク・ニンジャが探求した「ボトク・ジツ」の真髄だ。サクリリージにとって、死者から助けを得るとは即ち、武器や爆弾を調達するための武器庫になってもらう、という事を意味していた。ニンジャは爆発四散するので、モータルがよい。 2
2019-11-03 16:53:11ボトク・ニンジャはシのクランのニンジャであり、高潔な精神でジツを制御し、戦乱の世界を旅して、ニンジャ・モータルを問わず供養行為を重ねた。サクリリージにはそんな記憶も人格もない。ボトク・ジツは便利なネクロマンシーに過ぎぬ。ボトクがアノヨにいれば「ヤンナルネ」と嘆いただろう。 3
2019-11-03 16:57:50「ンンー……よいバランスだ。よく生きた」サクリリージは惨殺体を称賛し、骨の刃に頬ずりした。そして接近しつつある敵を待ち構えた。ニンジャスレイヤーを。ニンジャスレイヤーはかつてアマクダリ・セクトの敵、つまりサクリリージの敵であったが、直接交戦した経験はない。しかも恐らく別人だ。 4
2019-11-03 17:01:49当時アマクダリと敵対したニンジャスレイヤーは、アガメムノン諸共にラオモト・チバの罠にかかり、月で爆発四散したとされる。その後なんらかの要因で生き延びた可能性もあるが……直接目にした瞬間に、彼のニンジャ第六感が、別人であると確信させた。事情は知らぬが、初対面の敵として対処すべし。 5
2019-11-03 17:06:37ヒュンヒュンと刃を振り、構える。この素晴らしい武器から、秒単位で失われゆく切れ味に、微かな郷愁をおぼえる。ボトク・ウェポンの持続性はさほど長くはない。死にたての新鮮な死体をその都度用意する必要があり、それもまたサクリリージの愉しみでもあった。人生の小気味よい彩りというものだ。 6
2019-11-03 17:10:11サクリリージは特にモータルの生命には敬意を払っていないので、戦闘が長引けば長引いただけ、いくらでも殺す。それを知ってか知らずか、ニンジャスレイヤーは相当な速度で追跡してきている。妙な輪郭のニンジャソウルの接近を感じる。あと二呼吸。一呼吸……。「イヤーッ!」 7
2019-11-03 17:12:39サクリリージは客室の扉を内から蹴り開け、襲いかかった!通路を進んできたニンジャスレイヤーに!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはかろうじて反応し、チョップで刀身を打ち逸らした。サクリリージの目が光った。もう一方のカタナで脇腹を裂きにいく!「イヤーッ!」 8
2019-11-03 17:16:37「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはサクリリージの膝を蹴り、斬撃を逸らした。「イヤーッ!」サクリリージの三度目の斬撃を、彼は後ろへ跳んで躱した。ゴゴウ、ゴゴウ、高速走行するシンカンセンの震動の中、二人のニンジャはあらためて睨み合った。 9
2019-11-03 17:18:27殺人事件推理の折、既に互いに食堂車で名乗った同士であったが、自然と二者はあらためてアイサツ姿勢に入った。「ドーモ。サクリリージ=サン。ニンジャスレイヤーです」「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。サクリリージです」通路でオジギする二者のカラテが凝集し、空気が重苦しく張り詰めた。 10
2019-11-03 17:23:49「アイエエエ!」隣接客室のドアを開けて様子を見ようとした乗客が悲鳴を上げて失禁し、昏倒した。サクリリージはニンジャスレイヤーのカラテの充実具合を推し量ろうとする。この者は十年前の同名者とは別人。<12人>を次々に殺した死神ではない。だが油断すれば死を招く、そんな不穏さも感じる。 11
2019-11-03 17:26:27アンブッシュからのダガー斬撃を防いだワザマエは実際見事。だがその手さばきに余裕は感じなかった。何か隠している?不本意な状態にある?「お前が何者なのか、多少興味があるが……」サクリリージは言った。「相互理解の余地がないのは残念なものだ。あのヤモトに肩入れすると決めたようだからな」12
2019-11-03 17:31:35「貴様と話す事は特にない」ニンジャスレイヤーの目に赤黒い光が走った。カラテを構える彼の身体の奥で、ミシミシと音が鳴った。筋肉の鳴動だ。サクリリージは目を細める。「構わん。俺としても、ヤモトがキャスケットの奴を……」まさにその瞬間、ニューロンに違和感。「……ああ。今、死んだか」 13
2019-11-03 17:35:26となれば、一刻も早く殺さねば、2対1のイクサに持ち込まれるわけだ!「イヤーッ!」サクリリージは地を蹴った!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーが応じる!切れ味鋭い骨のダガーの攻撃をかいくぐり、ニンジャスレイヤーはワン・インチに潜り込む!「イヤーッ!」「イヤーッ!」 14
2019-11-03 17:37:26間合いを詰めれば得物使いには不利。ニンジャスレイヤーは的確な判断で襲いかかる。彼の動きには豊富な戦闘経験からくる細かい判断の積み重ねがあった。「イヤーッ!」サクリリージは後ろから逆手のダガーで腎臓を刺しにいく。ニンジャスレイヤーは彼の動きを察知し、手首を掴む! 15
2019-11-03 17:40:47「ヌウッ!」……「イヤーッ!」「グワーッ!」瞬間的なカラテの増幅と共に、ニンジャスレイヤーはサクリリージの手首をドアノブめいて捻った。関節破壊を嫌ったサクリリージは自ら投げ飛ばされ、床に受け身をとる!「グワーッ!」「イヤーッ!」ケリ・キックが襲う!サクリリージは転がって回避! 16
2019-11-03 17:43:19「イヤッ!イヤーッ!」転がりながらサクリリージはダガーを投げつけた。ニンジャスレイヤーが投擲物をチョップで打ち払う隙に、彼は床で昏倒するカネモチの中年の頭を掴んだ。「イヤーッ!」「アバババーッ!?」頭ごと背骨を引きずり出し、鞭を作り出す!「イヤーッ!」鞭打攻撃! 17
2019-11-03 17:45:59「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは鞭を殴り返す。巻き付く背骨!逆の手のチョップで切断する!「イヤーッ!」そこへサクリリージが襲いくる!「グワーッ!」トビゲリを肩に受け、怯むニンジャスレイヤー!サクリリージは鞭の根本の頭部を振り上げ、鎚鉾を生み出して殴りつけた!「イヤーッ!」 18
2019-11-03 17:48:33「ヌウーッ!」ニンジャスレイヤーはクロス腕で防御し、鎚鉾を弾き返した。鎚鉾は一打で砕け、サクリリージは不満げに眉根を寄せた。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは顎を殴りあげる!「グワーッ!」サクリリージは受ける寸前に自ら跳んでダメージを軽減!間合いを取り直す! 19
2019-11-03 17:51:32「アイエエエエ!ダーリン!」室内で悲鳴を上げるのはカネモチの愛人と思しき若い娘だ。サクリリージはそちらを見た。「ふむ……」その眼差しは昆虫の捕食の瞬間を思わせた。だがニンジャスレイヤーは間髪入れず襲いかかった!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ぶつかり合う二者のカラテ! 20
2019-11-03 17:54:20「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは激しい連打でサクリリージを後ろへ押しやってゆく。殴りつけるたび、赤黒い火の粉が微かに散る。「アイエエエ!」半狂乱悲鳴!サクリリージは後方別室に素材を探すべく、ニンジャ第六感を研ぎ澄ませる! 21
2019-11-03 17:57:16『ニンジャスレイヤー=サン!聴こえてるか!?』その時、車内スピーカーから車内アナウンスらしからぬ電子音声が発せられた。『オレだ、タキだ。オイ、シンカンセンがメチャクチャ攻撃されてるのは、わかってるな!?』「イヤーッ!」「イヤーッ!」『そいつ片付けて、どうにかしねえとヤバイぞ!』22
2019-11-03 18:01:48