『原子力の経済学 新版』の要点 〔その4〕 原発が経済に何をもたらすか、そして事故の経過
『原子力の経済学』(室田武著)〔http://togetter.com/li/142044〕の続き、同書を総括する終章の内容を、これから連続ツイートします。〔「原子力の平和利用」が経済に与えた影響〕や〔事故が発生した場合に辿りうる経過〕などが中心。特に後者は震撼させられるかも…。
2011-05-31 04:30:44【原子力の経済学124】 「原子力平和利用」を世界的にみれば、もともとアメリカで、核兵器製造だけでは吸収しきれないほどに膨張した原子力関連諸事業の生産能力の余力を、民間産業界にも還流しようという営利的な目的と、…
2011-05-31 04:31:32【原子力の経済学125】 …「平和国家」を標榜するソ連が軍事力の面でアメリカと対抗するために、その軍事力に「平和」の名を冠しておこうという意図との、相互作用から生まれた概念であって、私たち日々のくらしを営むものが考える平和とは、まったく異なる次元で提出された概念である。
2011-05-31 04:31:43【原子力の経済学126】 ところが、不幸なことに日本では、産業界が原子力開発に本気で手をつけるよりも早く、進歩主義思想をもっ科学者や知識人と政治家の一部が、生産力をあげればあげるほど人間は幸福になる、という漠然とした信念に基づいて、…
2011-05-31 04:31:54【原子力の経済学127】 …原子力開発の思想的・行動的な先導者となり、「自主・民主・公開」の三原則から成る原子力基本法の制定(1955年)に力を貸す、という結果になった。
2011-05-31 04:32:05【原子力の経済学128】 原子力利用の本質が、死の灰やプルトニウムの生産以外の何物でもなく、それらを人間社会や人間を一部として含む生態系から安全に隔離する方法はないのだ、という基本認識はわきに押しのけられ、…
2011-05-31 04:32:14【原子力の経済学129】 …広島、長崎でみたあの巨大な破壊力を平和目的に転用しさえすれば、人間社会は、旧来の使用水準をはるかに上回るエネルギーを手にすることになり、それだけ自由の王国に近づくだろう、という漠然とした期待がそこでは語られた。
2011-05-31 04:32:25【原子力の経済学130】 1986年7月、通産省の諮問機関である総合エネルギー調査会の原子力部会は、2030年時点での原発設備を、1985年現在の2452万kWの5.6倍にあたる1億3700万kWに増やすという途方もない見通しを発表している。
2011-05-31 04:37:35【原子力の経済学131】 このような目標がかりに達成されるとすると日本はどうなるだろうか。電気出力100万kWの原発1基が1年間フル稼働すると想定すると、広島原爆のまきちらした放射能の約1000倍の放射能をもつ死の灰ができる。
2011-05-31 04:37:45【原子力の経済学132】 従って出力5000万kW以上であれば、1990年代には広島原爆5万発分もの死の灰が年々つくり出されるということである。さらに、出力1億3000万kW以上ということなら、2030年代には、広島原爆13万発分もの放射能が年々つくり出されることになる。
2011-05-31 04:38:38【原子力の経済学133】 こうなると話がいささかSF小説めいてくるが、「目標」がもし達成されれば本当にそうなることに注意したい。それほど気の遠くなるような大量の放射能の年々の累積分を事故なしに半永久的に保管するというようなことが、だれにできるというのであろうか。
2011-05-31 04:39:00【原子力の経済学134】 科学の進歩がなんとかしてくれるだろう、先端技術の力をかりてガンバロウ、などといってもダメである。なぜなら、むしろ科学は、自然に崩壊して他の元素に変わっていくのを待つ以外に放射能を消滅させる方法がないことを教えているからである。
2011-05-31 04:39:09【原子力の経済学135】 加速器などを使って人為的に消滅させようとすると今度は別の放射能がつくられることになり、かえって危険である。
2011-05-31 04:39:20【原子力の経済学136】 ロケットで地球の外へ棄ててしまおうとしたら、まずロケットをつくりその推進燃料をつくるのに莫大な石油・石炭が必要だし、誤って地上に落下したら環境に放出される放射能の量は小型の原爆などとは比べものにならないくらい大きい。
2011-05-31 04:43:55【原子力の経済学137】 年々広島原発5万発分つくられる死の灰をつめる容れ物をつくるには、鉛、鉄、ガラス原料など世界中からかきあつめ、私たちのくらしを犠牲にして石油、石炭をその製造工程に注入することが必要になろう。
2011-05-31 04:44:09【原子力の経済学138】 つまり、この「目標」は、「絵にかいたモチ」ならぬ「絵にかいた死の灰」であるか、あるいは本物の国土総汚染計画か、のいずれかであり、前者であることを望むのは筆者だけではないと思う。
2011-05-31 04:44:33【kaameenのコメント】 ここでエネルギー消費や汚染の拡大に依存した、社会・経済の「成長」が人間にとって本当に幸せなことなのかについて、筆者の持論が語られる。1960年頃の日本は今よりもずっと失業率が低かったし、川も海も空も食べ物も皆きれいだったと筆者は指摘する。
2011-05-31 04:57:01【kaameenのコメント】 私たちが経済の安定的成長を希望する中心的な理由は、雇用あるいは収入を得ることにより、豊かで安定的な暮らしをしたいと考えるからだ。でもそれは単なる信仰に過ぎないのではないか、経済はずっと不安定になった、本当の豊かさとは何なのかなど、色々考えさせられる。
2011-05-31 04:57:49【原子力の経済学139】 しかし、考えてもみよう。今日でさえ、日本全国において、大都市や工業地帯の熱公害と水汚染農地の農薬・化学肥料汚染、海の廃油ボール汚染、原発周辺の海と陸の放射能汚染、騒音公害等々数えきれない公害で多くの人びとのくらしがむしぽまれているとき、…
2011-05-31 04:58:01【原子力の経済学140】 …今日の2倍近い莫大なエネルギーを消費する状態の中で、私たちはどうやって生きていけばよいのか。現在それ自身が消費過多なのだから、まず最も不経済な原子力を廃絶し、さらに石油も減らしていくほうが、私たちとその後の世代にとってよほど幸福ではないのか。
2011-05-31 04:58:12【原子力の経済学141】 原発を廃絶し、石油消費を減らすといっても、それは、私たちの生活が江戸時代のようなものになることをまったく意味しない。現在の日本では、石油の熱量に換算して年間約4億キロリットル相当のエネルギーが使われているが、…
2011-05-31 05:03:06【原子力の経済学142】 …かりにこれをきわめて大幅に減らしてその1/4である1億キロリットル相当の水準にもっていったらどうなるか。恐ろしく不便な世の中になる、と思う読者がいるかもしれないが、筆者にはそうは思えない。
2011-05-31 05:03:16【原子力の経済学143】 …なぜなら、今日の1/4のエネルギーしか使っていなかったのは江戸時代どころか、1960年であり、いまから三十数年前のことにすぎないからである。その頃の日本には、食べるものも着るものもなく、遠く旅するためにも列車ひとつなく、自転車さえなかったか。…
2011-05-31 05:04:23【原子力の経済学144】 そんなことはない。当時の日本の穀物自給率は83%であり、その他の作物や食品も今日ほど汚染されておらず穀物自給率34%、添加物だらけの食品の氾濫、殺人的な通勤ラッシュと年々激化する受験戦争等々の重大間題を抱えている今日より、いくらかましだったのではないか。
2011-05-31 05:05:12