安藤礼二『列島祝祭論』(作品社)を+Mさんが読むスレッド

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安藤礼二『列島祝祭論』(作品社)。 pic.twitter.com/1eyh9jxBDJ

2019-11-14 18:16:40
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文化とは多かれ少なかれ習合的なものだ。 文化のうちに<原型>を探るとは、起源を辿る道行ではない。 何故なら習合的な時空において<原型>は<反復>されるたび“遡行的に分岐して、”起源を多重化してしまうものだからだ。

2019-11-14 18:17:47
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この列島においても、事情は変わらない。アニミズム/シャーマニズムのベーシックな習俗のうちに、道教神道仏教とが習合して、常に今、ここで、神々が交じり合うシンクレティズムの時空を開いている。 著者は神々が交じり合う今、ここのダイナミクスを<祝祭>という視座で捉える。

2019-11-14 18:18:47
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列島の時空を貫き支える政治、芸能、宗教、暮らしが渾然となった祝祭的なダイナミクスを、能、修験道、密教、天皇制などとして結ばれた<タマ>を解きほぐし、再度ある精神史のうちに結び合せるようにして論が運ばれていく。

2019-11-14 18:20:53
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著者はまず、能の翁に着目する。翁は能の演目のなかでも特別な地位を持つ。翁の発生を探っていけば、それは芸能の域を越え、宗教的な祝祭のうちにその原型を見出すこととなる。折口が憑かれたように通ったという天竜川沿いの村々で演じられている霜月神楽、奥三河の花祭り、新野の雪祭り、…

2019-11-14 19:20:59
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それらの祭においては、≪「もどき」たちが次々と舞を披露した後、神楽のクライマックスには、柔和な「翁」ではなく、凶暴な「鬼」が出現する。人々は、その「鬼」を荒々しい神、つまり「荒神」と名づけていた。「翁」の起源には「鬼」すなわち「荒神」が存在している。≫。

2019-11-14 19:24:00
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天竜川沿いの村々に神楽をもたらしたのは修験の徒であった。柳田が問題にした「山人」を修験者のように「山の信仰をその身をもって生き抜いていった人々」と捉えれば、折口が問題にした「翁」と、柳田が問題にした「山人」は、じつは同じ主題として捉えることができる。

2019-11-14 19:30:00
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≪表面的な対立を乗り越えて、柳田国男の民俗学と折口信夫の古代学を、「翁」と「荒神」をめぐる祝祭学、すなわち「翁の発生」をめぐる来たるべき祝祭学として組織し直す充分に可能だと思われる。柳田の探求の結果として位置づけられる常民論ではなく、柳田の探求のはじまりに位置付けられる山人論。→

2019-11-14 19:33:59
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→さらにはその山人論を引き継ぎ、放浪する乞食(コツジキ)としての芸能者(ホカヒビト)と即位する王者としての天皇(ミコトモチ)を二つの極として完成した折口の芸能論。その二つの学を、最も創造的なかたちで一つに結び合せなければならないのだ。≫

2019-11-14 19:36:15
+M laboratory @freakscafe

「山の信仰をその身をもって生き抜いていった人々」修験者。その「山の信仰」とはいったいどんなものか。 著者は、まず、修験者の山崎一司の研究を参照して、修験者が「どこから来て、どこに向かったか」その具体的な行程を追う。すなわち、熊野から諏訪までの行程。

2019-11-14 19:41:41
+M laboratory @freakscafe

出発点である熊野は、世阿弥や禅竹の故郷である大和(奈良)、天皇の起源である伊勢をそのなかに含む。終着点である諏訪には?諏訪には神懸かりによって地上に産み落とされる原初の王、神が人になり、人が神になる現人神がいた。

2019-11-14 19:45:43
+M laboratory @freakscafe

≪諏訪には正体不明のミシャクジ神ー石の神にして蛇の神ーの憑依によって生きたまま神になる、つまり現人神となる一人の年若き少年、「大祝(オオハフリ)」がいた。(…)その少年に憑依するミシャクジ神とは、『石神問答』で柳田國男が主題とした、記紀神話の圏外に存在する無数の小さな神々、→

2019-11-14 19:49:13
+M laboratory @freakscafe

→さまざまな境界(山地と平地の境界が同時に生と死、人間と人間ならざるものの境界となる)に立てられる石ーあるいは男根状の石棒ーの神を代表するものだった。蛇の神もまた、おそらくは古代の大和朝廷とは対立関係にあったと推定される出雲系の神社に特有のものである。≫

2019-11-14 19:51:42
+M laboratory @freakscafe

神々や仏が習合する基盤には、「大祝」に見られるような、アニミズムを背景にしたシャーマニズムが、そのベースとしてあるはずだ。≪来たるべき祝祭学は、そうした憑依の諸相、芸術の起源にして権力の起源を探る学になるはずだ。≫

2019-11-14 19:57:39
+M laboratory @freakscafe

そのアニミスティックな「古相」を探るには、この列島の「内」だけでなく、アイヌ、琉球も含めて視野を広げる必要がある。そして、空間的な「内」と「外」は、時間的な「内」と「外」の関係にも読み替えられる。

2019-11-14 20:02:09
+M laboratory @freakscafe

≪諏訪にも、アイヌにも、古代的ー縄文的かつアルカイックーな要素が残されているのかもしれない。しかし、同時に両者とも、明らかに近代的ー現在的かつモダンーに変容したものでもある。縄文、すなわちアルカイックな狩猟採集社会を時間的な起源として考えるのではなく、→

2019-11-14 20:03:29
+M laboratory @freakscafe

→一つの初期条件として、そのなかで絶え間のない「習合」が起こり、変容が繰り返されていく一つの「条件」として考えていく必要があるはずだ。≫

2019-11-14 20:04:48
+M laboratory @freakscafe

この、神々の習合の基盤となる「条件」が、つまりアニミズムを背景とするシャーマニズムである。列島の憑依を問い直すことは、アジアにおける狩猟採集社会を背景にしたシャーマニズム を問い直すことに等しい。

2019-11-14 20:08:10
+M laboratory @freakscafe

シャーマニズム について、エリアーデは、エクスタシス(脱自)をその根源的な様態として論じたが、井筒俊彦はエリアーデが派生的として捨象した「憑依」という側面を、「エンタシス」という概念を対置させてすくいあげている。

2019-11-14 20:12:48
+M laboratory @freakscafe

シャーマニズムをエクスタシスという側面ではなく、憑依という側面から見ることは、ひいてはシャーマンという在り方を、自然を超越していく方向から、自然へと内在していく方向へと転回することに繫る。

2019-11-14 20:16:33
+M laboratory @freakscafe

シャーマニズム/アニミズムに基づいた狩猟採集社会と、天皇制として統制されていく農耕社会。だが、ここで論じられているのは、二つの異なる文明の対立などといったわかりやすいスキームではない。列島においてアニミズムの磁場は、農耕社会というテクノロジーの二重底として、常に作動している。

2019-11-14 20:24:28
+M laboratory @freakscafe

≪柳田は、シャグジの神とは「雑神」であるという。純粋な起源など考えられないほど、さまざまな「外来神」が習合してかたちになった神である、とも。柳田は仏教以前に伝来されていたと推定される「道教」を重視している。→

2019-11-14 20:26:45
+M laboratory @freakscafe

→さまざまな形態をもって列島各地で信仰されていた原初のシャマニズムが、「道教」を通して一つに習合されたのだ、そのことによって「神道」という一つの総合的な形態を備えることができたのだ、とさえ記している。≫

2019-11-14 20:28:29
+M laboratory @freakscafe

アニミズムを背景にしたシャマニズム(憑依)、その土地に結びついたコスモロジーが、道教を媒介とすることで解体ー習合され、それが神道を形作っていく。『日本書紀』においてアマテラスは一貫して「憑依神」として描き出されている。

2019-11-14 20:35:17
+M laboratory @freakscafe

そして、≪『日本書紀』を貫く「神憑り」の理論を、中世の列島で、実践的に体系化したのが修験道の行者たち、いわゆる「山伏」たちであった。「山伏」たちは、自ら「審神者」となって、「神主」たる憑座に神仏の霊を憑依させることで未来を予見し、また「神主」の病を治す→

2019-11-14 20:38:57