津原泰水@tsuharayasumi より又吉直樹に関する投稿抜粋(『火花』解題は中盤)

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津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

2:・又吉と何があるのか知らないがw 随分トーンダウンしたじゃないw/又吉さん、俺の『11』という短篇集を自費で買って雑誌で絶賛してくれたんだよ。編輯者が気付いた。問い合わせると、オビに名前を載せることも許可してくれた。吉本興業の人としては異例で、気骨のある人だと思ったな。>

2015-07-29 21:23:06
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

ちなみに僕は又吉さんの事も全く知らず、彼が恐らく自分で買われた『11』をレビューなさっていると知り、その書きぶりが自然体で良かったので、重版ぶんにお名前をという話に前のめりで同意した。流石に以後は文章を拝読するようになり、ご自身でも挑戦なさると思っていたから違和感はなかった。

2016-06-26 15:09:18
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

つまり又吉さんが『11』を認めてくださり、僕がその文章に感心をし、その美しい形而上の接触が『火花』の執筆ひいては大ヒットに繋がったのだから、あれは俺が書いたようなもんだ。はいはい、黙ります。だいいち未だ拝読してませんし、お笑い知識もハリセンボンで止まっていますし。御免なさい。

2016-06-26 15:17:57
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

なんてこたない、受賞しまくり作家をもっと優遇しろって話にしか感じられなくなってきた。芸能人はこっちの畑に踏み入るなと云うんだったら、小説家も報道される以外でテレビに出ちゃいけないんじゃないのか? 映像化はその原理主義に反していないのか? ちなみに僕は漫画の賞を頂いたわけですが。

2016-06-26 19:27:01
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

どんな職歴でも容姿でも、書けてるんだったら評価の俎上にのせるべきだし、売れる人は多いほどいい。これ以上文芸部門が縮小して、まず切られるのは労多くして得るもの少ない作業を、天職と任じて踏みとどまってきたマイナー作家たち。そもそもなぜそこは貴方の縄張りなのだと、本気で気分が悪いや。

2016-06-26 19:38:18
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

たかだか少女小説出身でも子供騙しをやってきたように云われてね、イロモノ扱いは本当に苦しいですよ。周囲と同等やそれ以上の物を書いても、正統なる方々は「芝生に立ち入るべからず」と。真価を分かってくれるのは差別意識なきファンのみ。又吉さんや押切さんの本、ちゃんと読まなきゃと思いました。

2016-06-26 19:55:50
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

有言実行。又吉さんの『火花』と押切もえさんの『永遠とは違う一日』、いまAmazonで買ったぞ。貰おうと思えば貰えるんだけど、ちゃんと買った。もちろん新品で。届いたら証拠写真を掲げますし、読んだら感想も記します。

2016-06-26 20:05:04
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

なんか疲れちゃった。そうそう、又吉さんと押切さんのご本、届いています。証拠写真をどうやって撮ろうかと思案中。双方、ほんの書出しのみ拝読。上手いじゃないですか。どちらも編集さんが「余所に持っていかないで」と請願するレヴェルですよ。又吉さんの方が肩に力が入っています。

2016-06-30 02:14:27
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

論理のふらつきはそのまま主人公の魂の彷徨かと思うので、瑕疵とは云えませんが、純文学だぜと気合の入った文にありがちな「頭の重い」状態になっていますね。拾い読みした中盤では本調子になっています。しかし急がず、丁寧に読んでいきましょう。ところでP4L1の「マイク」は「スピーカー」では?

2016-06-30 02:26:20
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

又吉作品のAmazonレビューを拾い読み。手厳しい方が多いですね。ただ全般に芥川賞の過大評価に端を発する苦言が目立ちます。新人賞なんですが? しかも他の新人賞の、回数だけで二倍、ダブル受賞も多いから、対象とされる文芸誌に発表の枠を持っていれば、かなりの高確率で獲れる賞です。

2016-06-30 02:56:55
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

名を成していない若手作家救済プロジェクト(むろん雑誌の宣伝を兼ねた)の草分けにつき、新聞やテレビでの報道が慣例化しているから、一般に名前が知られているだけです>芥川賞。「そのあとプロになる」と考えたほうがいいし、受賞しても生き残れない率が非常に高い賞としても知られています。

2016-06-30 03:01:31
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

また審査員に対して「出版社からお金を貰ってるんじゃないか」と投石しているレビューを見掛けましたが、審査にしてもオビ文にしても、お金を貰ってやるんですよ。オビは一桁万円ですが、審査料は高額です。芥川賞直木賞はたぶん最高額でかつ年に二回だから、それだけでワープアとして暮らせるくらい。

2016-06-30 03:10:29
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

又吉直樹『火花』も読み進める。会話文が多出し始めると急に期待通りの又吉節となる。と云っても僕は彼の漫才を存じ上げない(顔に色を塗って異星人?を演じているコントの断片程度)。つまり読書エッセイに見る、何事も考え過ぎな自分の背中を嘲笑している又吉語りになってきた、という事。

2016-06-30 20:36:48
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

冒頭部分を読んでいる間、筒井さんのオビ文はなんで太宰を引き合いに出しているのか理解できなかったが、ここに来て太宰的な味わいも生じてきた。一応だが僕は太宰という作家をかなり低く見ているので、これは加点ポイントとはならない。過剰な比喩が消え、常識的ロマンティシズムがちらほらと覗く。

2016-06-30 20:46:24
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

僕が講座で繰り返す話の実例。お手元に『火花』をお持ちの方はご確認いただきたい。P5L10「沿道から夜空を見上げる人達の顔は」以前を全部カットし、同行からこの小説を始めたとする。なんと見事に成立する。それどころかこの息の長い文章は「素人離れした素晴しい書出し」と賞賛されるだろう。

2016-06-30 20:57:15
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

助走たる冒頭部分をカットし、読者をいきなり巻き込む方向での推敲は、大昔からの小説作法の常套手段であって、斯様に単純なテクニックを、現代純文学の総本山たる文學界が新人に教示できないのは情けない。書き手自身が消した文章は蓄積となるが、公表は常に無駄撃ちと弾切れの危険を伴う。

2016-06-30 21:12:20
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

(『火花』をお持ちではない人のために引用しておく。現状の書き出しはこう)  大地を震わす和太鼓の律動に、甲高く鋭い笛の音が重なり響いていた。 (僕が推す、そのちょうど2頁後の文章は、長いので次のツイートとする)

2016-06-30 21:26:46
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

沿道から夜空を見上げる人達の顔は、赤や青や緑など様々な色に光ったので、彼らを照らす本体が気になり、二度目の爆音が鳴った時、思わず後ろを振り返ると、幻のように鮮やかな花火が夜空一面に咲いて、残滓を煌めかせながら時間をかけて消えた。 (又吉直樹『火花』P5L10-12)

2016-06-30 21:31:07
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

文頭の一字下げがうまく反映されない。諦めた。二つの文章の間に置かれた情報は、語り手が花火大会の余興の舞台に立っている事、群衆の心は始まらんとする花火にある事、演じたと思うセキセイインコのネタの記憶で、いずれものちに反復している。如何だろう? 比喩が適切かどうかは別の話として。

2016-06-30 21:40:55
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

「幻のように鮮やかな」という形容には初め「?」となった(幻が鮮やかだったら病気だ)が、それが小説冒頭にて提示されていれば、そうとしか表現しようのない、読まねば分からぬ比喩として許容されうるし、実際同文は、視覚(表現)化されたこの小説のテーマそのものではないのか?

2016-06-30 21:50:17
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

念のための念のため改めて公言しておくが、僕の特技には速読がある。僕と仕事をした人の多くが、僕が一冊を5分から10分で把握する現場を目撃している。ランダムに頁を捲るので異様な感じがするらしい。だから内容はもう知っているのだ。だけど愚直に前から、暗記でもするかのように読んでいる。

2016-06-30 21:55:59
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

揚げ足取りの読書は好まないが、ここを読んでいる出版関係者と物書き志望者のため「これは流石に」だけ。『火花』P45にある「独壇場(どくだんじょう)」は、「独擅場(どくせんじょう)」の単なる誤読と誤記が広まっただけの言葉につき、熟考タイプの語り手が敢えて誤記する必要性はない。

2016-06-30 23:50:47
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

また、僕が未だ読んでいない事になっている終盤、「嘯(うそぶ)く」の用法に微妙な箇所がある。これはベテランでもよく誤用する。口笛を吹く、詩を吟ずるという意味であり、「津原は嘯いた」は「嘘をついた」でも「本心を誤魔化した」でもない。口笛から転じて、尊大で厚顔無恥なセリフには使える。

2016-07-01 00:05:39
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

精読と熟考を要する作業に中間報告は相応しくないが、結局どうなんだよ、という気の短い方々を安心もしくは落胆させるために。目下、僕は『火花』を芥川賞受賞に相応しいと感じています。文句のある奴は同賞受賞のあれやあれを読み切ってみろ。又吉さんが仏に見えてくるぞ。読めるだけマシって賞だぞ。

2016-07-01 00:39:41
津原泰水(やすみ) @tsuharayasumi

では読む価値、買う価値のある本か? こちらのハードルの方がよほど高いわけですが、一種の麻疹(はしか)本ではあるので、どうせ読むんだったら若いうちの方がいいです。「凄い」と驚こうが「この程度か」と鼻で嗤おうが、いずれ歳をとれば作者が等身大に見えてきます。寧ろその時のための本です。

2016-07-01 00:51:22