茂木健一郎(@kenichiromogi）さんの連続ツイート第2376回「私がドラッグを使わない理由」

茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート２３７６回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、感想です。

茂木健一郎 @kenichiromogi

以下に書くことは、正しい、正しくないということではなくて、あくまでも私の個人的な価値観、趣味の問題なんだろうけれども、私はいわゆる「ドラッグ」はやらない。その理由はそれが非合法だからではなく（もちろん非合法はことは市民としてはやっていけないが）脳の仕組みからして問題があるからだ。

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ドラッグの多くは幻覚や高揚、幸福感をもたらす。その際例えば報酬系であるドーパミン系を活性化させて、それが依存症にもなる。ドーパミン系は本来、何かできるかできないかわからないことにチャレンジしてそれができたときに放出されて強化学習が起こる。そのプロセスが省かれてショートしてしまう。

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ドラッグを使うことで強化される行動は、つまりはそのドラッグを使うということだけで、本来その間にあるべきさまざまな工夫、行動、努力が中抜きにされてしまう。脳の回路がショートして、途中のプロセスがなくなってしまう。これがぼくがドラッグを使わないもっとも根本的な理由である。

茂木健一郎 @kenichiromogi

ドラッグの中には幻覚作用があるものがあって、時間や空間の感覚が変わったり、さまざまなヴィジョン、音が体験されたりする。そのような記述を見ると興味深いけれども、以上に述べたようなドラッグの報酬回路をショートさせるリスクをおかしてまでそのような体験をしたいとは思わない。

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これは専門的な話になるけれども、意識の変性状態（altered states of consciousness）は確かに興味深いが、それ以前に、私たちが日常で経験しているクオリアに満ちた視覚体験などがすでに十分に異常でふしぎなものなので、それが変性したとしても特に新しいことが付け加わるとは私は考えない。

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一部の方は、たとえばビートルズのLucy in the sky with Diamondが頭文字LSDでドラッグの作用で書かれたものであると指摘される。しかし、ビートルズはドラッグを経験する前にすでにたくさんの名曲を書いている。創造性のためにドラッグを使うと効果的だという論は、せいぜい副次的なものでしかない。

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世界各地に自然の中にある植物などのドラッグがあって、人々はそれを使ってトリップして、不思議な体験や世界観を報告してきたが、今までの履歴（track record）を見ると、その結果画期的に新しいこの宇宙や人間の精神に関わる理論ができたということもない。とりわけ、意識の謎については貢献がない。

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アインシュタインが相対性理論をつくったのは、ドラッグでトリップしたわけではなくて、地道に緻密な論理的な思考を重ねたからである。結局、今までのドラッグ使用者の報告を見ると、確かに興味深い変性状態を経験しているのだけれども、その結果相対論のような新しい理論ができるわけではない。

茂木健一郎 @kenichiromogi

空海が洞窟で修業して、明星が口に飛び込んで悟りを開くように、脳内にもともとある生理的なプロセスを経てトリップするというようなことはあるかもしれない。もともと脳内には厳しい状況で生き延びることを助けるさまざまな物質（脳内麻薬）があり、それに作用が似ているからこそ、ドラッグは効く。

茂木健一郎 @kenichiromogi

仮に高揚感や意識の変性状態に価値があるとしても、それは、やはり空海とまでは行かなくても、ある目標に向かって努力、修業を重ねた結果、最後に脳が「ご褒美」として脳の生理的なポテンシャルの中で与えてくれるのが良いのであって、ドラッグでプロセスをショートしてそこに達するのは意義が低い。

茂木健一郎 @kenichiromogi

以上のような理由（他にも論ずるべきことはたくさんあるが）で、私はドラッグを使わない。もちろん人によって考え方はさまざまだと思う。ドラッグを犯罪として扱うことが適切ではないということは今までも論じてきたところである。結局、日々、日常の中で努力して新しい境地に到達することが一番大切。

茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート２３７６回「私がドラッグを使わない理由」をテーマに１１のツイートをお届けしました。