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ツイートまとめ エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~5世代目・後編8~ 終わらん…いや終わりに近づいてはいるが終わらん… ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ。 5318 pv 7

以下本編

帽子男 @alkali_acid
◆◆◆◆ これはエルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジー。 今は五代目オズロウ。黒の渡り手。盲目の船長。竜曳船の主。 世界を巡る長旅を終えて、故郷たる影の国に帰還し、父親に再会した。 四代目マーリ。黒の鍛え手。指輪作り。銀の腕。
帽子男 @alkali_acid
地下の宮殿の寝室で、暗い肌をした隻腕の男は眠っていた。左腕の付け根から胸へかけて焦げたような跡が広がっている。 心臓の真上には一匹の白い蝙蝠がまるで王に寄り添う后の如く張り付いて、淡い光を放っている。魔法。治癒の呪文だ。か細く歌うような声が途切れなく続く。
帽子男 @alkali_acid
「聞こえるか?ずっとああだ。よく続くものだ」 「ほわー」 黒の鍛え手の師である小人の工匠、影地歩きのモシークが面倒そうに説明すると、黒の渡り手オズロウはやや抜けた反応をする。 「以前に小生が思っていたより、あの蝙蝠は力があるらしい。だが鷲の騎士の雷槍は凄まじい強さだった」
帽子男 @alkali_acid
「ヤマオロシはんの、竜殺しの全力や。そらきっついわー」 「このままだと蝙蝠もマーリも共倒れだ。責具拵えが癒し手として働いているが、あやつは助産と女の病が専らでな。光の魔法で受けた重傷は手に負えん」 「ワテ、何とかするわ。アキハヤテはん手伝うて癒しの技もちょこっと覚えたんや」
帽子男 @alkali_acid
「アキハヤテ?ああ。鷲の騎士より前にマーリを殺しに来た飛刀使いか。まあ妖精の負わせた傷だ。妖精の技なら何とかなるかもしれんな。ほかに方法もない。影の国一の癒し手は今まさにそこで意識を失っているしな」
帽子男 @alkali_acid
モシークは義手でひげをひっぱった。 「適当にやれ。必要なものがあれば六大悪人に言え。責具拵えに追い払われていなければ、皆このあたりにうろうろしている。小生はちと外す」 「どこ行くん?」 オズロウが尖り耳をぴくりとさせて訊く。
帽子男 @alkali_acid
「影の国の守りを差配せねばならん。うっとうしい。こういうことが面倒で山の下を捨てたのだがな」 「影地歩きのおにーはんに守ってもらえるちゅうなら安心やわ」 「どうかな。エルフを殺してもよければ簡単なのだがな」
帽子男 @alkali_acid
「エルフやのうても、あんまきついことせんどいてや」 「マーリも竜に乗る前、同じことを言い置いたぞ。あげく黒の乗り手の黒焼きになりかけるのだから世話はない。ではな」
帽子男 @alkali_acid
盲目の船長は、風の司から、父を殺そうとした男から学んだ技で父の命を救おうとした。日頃のんびりした物腰だが、なさねばならぬ業に挑むと素早く細やかで巧みで、過ちがない。
帽子男 @alkali_acid
視力を持たずとも、音と匂いと温もりと気配と魔法の流れによって一切を把握し、どんな人間の癒し手誰も及ばぬほど適確に措置を施した。 だが指輪作りの容態はただちに快方には向かわなかった。 凶器となった雷槍は、竜を殺す武器。 東夷や小鬼、戦鬼、あるいは巨鬼が受けたとしても骨も残らぬ。
帽子男 @alkali_acid
槍穂と柄をつなぐ部分には力ある呪具、魔法の宝石の一つ紫玉がはまっている。 上エルフの名工が霧けぶる峰々の岩肌に注ぐ万雷を閉じ込め、西の果てへ去る際に船作りの港に残し、森の妃騎士が受け継ぎ、鷲の伴に授けた品だ。
帽子男 @alkali_acid
黒の渡り手の技を持ってしても、黒の鍛え手を救うのは難しいかに思えた。 あるいは黒の癒し手の術であれば、たやすくとは言わぬまでも危なげなく死の淵から救えたかもしれない。だが指輪を通じて経験と知識の一切を受け継いだ男は、今まさに倒れ伏せっていたのだ。
帽子男 @alkali_acid
「おとーはん。はよ元気になってな。ワテ、話したいことぎょーさんあるんよ」 オズロウは穏やかに話しかけながら、見えぬ目を細める。もし今、側に師である半妖精ロンドーがいれば、狭(はざま)の大地に残るエルフ随一の癒し手が助けてくれればどんなにかよかったか。
帽子男 @alkali_acid
だが養い親にして旅の伴であった年嵩の男は光の軍将、影の国にとっての敵だった。どれほど二人が親しもうと、互いに肝胆を照らそうとも、やはり変えられぬ立場の違いがあった。 「何とかなるて」 多分。 きっと。 まだ方法は掴めないが。
帽子男 @alkali_acid
「オズロウ様…オズロウ様」 かたわらで白い蝙蝠がかそけく啼く。もはや人の耳には聞こえぬ弱々しい囁き。だが黒の渡り手はちゃんと聞き取った。 「ヒカリノカゼのおねーはん?寝とらなあかんで。今はワテがおとーはんの面倒みるさかい」 「血を…あなたの血を…どうか…私にお与え下さい」
帽子男 @alkali_acid
「血?せや。おねーはん。血吸いよるんやな。お腹空いたん?」 「…魔力ある血を…糧に…さすれば…マーリ様の命をつなぐだけでなく…傷を治す呪文も」 「ええで。お安い御用や」
帽子男 @alkali_acid
オズロウは短い詠唱で氷の匕首を作り出すと、手首を浅く切ってから、傷口に盛り上がった赤い雫を、ヒカリノカゼに呑ませた。 ややあって小さな翼が強い光を放つ。 「ありがとうございます…オズロウ様」 「無茶したらあかんよ」 「今は…マーリ様を救わねば」
帽子男 @alkali_acid
復活した蝙蝠の魔法使いは、驚くべき癒し手だった。ロンドーほど精緻ではないが、大胆かつ躊躇なく呪文を振るい、ある意味ではロンドーを凌ぐ回復の術を使ってみせた。 「もう一度…血を…」 「おかわりやな。承知や」
帽子男 @alkali_acid
「ほわー…むちゃすごいわー…せやけどワテも手伝わせてや!」 父の臨床において、目の見えぬ船乗りは、白い蝙蝠から新たな奥義を学んだ。狭の大地ではなく、西の果てで培われた上エルフの癒しの技を。 一人と一匹の懸命な介抱によって、とうとう影の国の太守は命を取り留めた。
帽子男 @alkali_acid
「もう大丈夫ですオズロウ様。マーリ様の御体は安らぎ定まりました」 「おおきにヒカリノカゼはん」 「私はマーリ様の婢(はしため)。当然のこと。あなた様こそよくぞお父上を救われました」 「ワテ何もしてへん。全部ヒカリノカゼはんのおかげや。仙女はんみたいや…あれ?仙女はんどこやろ?」
帽子男 @alkali_acid
まだ昏々と眠る黒の鍛え手の横で、黒の渡り手と白い蝙蝠は声を落として話し込む。 「仙女。あのものはもうあらわれることはないでしょう」 「??なんでや?」 「二度と開かぬ牢獄に入りました。余りに多くの過ちを犯した報いです」 「んなー」
帽子男 @alkali_acid
「私がお仕えするのも、マーリ様で最後。それからあとはオズロウ様。どうか旅で得られた朋輩(ともがら)と力を合わせ、良き船乗りとなられませ」 「切ないわー。皆おらんようになったら、アンググも寂しがるで」 「アンググも覚めぬ眠りにつきましょう」 「え…?」
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コメント

よーぐる @Seto_yasu1987 2019年11月20日
敖閃さん羨ましすぎる……
水無月神魔@夢子ちゃんはかわいい @ShimmaMinadzuki 2019年11月20日
お亡くなりになったかと思われたウハウハドスケベ部分さんの出番が。