『史上最強の哲学入門』(飲茶)を読みつつ呟いてみた

『史上最強の哲学入門』(飲茶)を読みながら、要約や思ったことなどをつぶやいてみた。
9
H.Takano @midwhite

合理主義者デカルトの「我思う、故に我あり」とは、哲学における第一原理を探求した結果の言葉である。しかし、この言葉はイギリス経験論の権威ヒュームによって「自我とは、知覚の継続である。知覚とは、経験の集合である。」と批判された。「私」とは、過去の記憶が蓄積した存在でしかない、と。

2011-06-02 11:21:25
H.Takano @midwhite

カントは「自我が知覚であるなら、生物ごとに異なる知覚形式が存在する以上、世界を貫く普遍的な真理を知ることはできない。だから人間が追求すべき真理とは、人間の間でのみ通用する真理であり、逆に人間の間であれば共有できる真理を求めることができる。」と、ヒュームの懐疑論に反論した。

2011-06-02 11:36:10
H.Takano @midwhite

カントは人間の間で共有できる真理の存在を主張したが、その真理への到達方法は示せなかった。そこでヘーゲルが現れ、「真理と反真理を闘わせ、両者を包括する新しい真理を導く」という弁証法による真理への到達を提唱し、全ての歴史は弁証法的に発展し、それが人類の存在意義であると主張した。

2011-06-02 11:45:15
H.Takano @midwhite

全ては反駁されることで発展するとした弁証法にも、反駁される時が来た。それがキルケゴールの実存主義である。彼は「いつか来るだろう遠い未来の真理などより、今、私にとっての真理が必要だ」と主張し、「私がそのために生き、そのために死ねるような、私にとっての真理」の探求を目指した。

2011-06-02 11:53:09
H.Takano @midwhite

ヘーゲル弁証法とキルケゴール実存主義からジンテーゼを導いたのはサルトルだった。彼は「人間は自由の刑に処せられている」と述べ、真理や正しい価値観の存在しない世界の中で、弁証法的に新たな真理を打ち立てる歴史へ積極的に参加することこそ「人間個人として今を生きる意味」だと主張した。

2011-06-02 12:02:44
H.Takano @midwhite

しかしサルトルの提唱した「歴史への積極的な参加」(=アンガージュマン)も、構造主義者レヴィ=ストロースによって論破される。彼は「歴史が目指すべき人類唯一の最終到達点など存在せず、優劣のない多数の文化や価値観が存在するだけに過ぎない」と西洋哲学の傲慢を指摘し、サルトルを批判した。

2011-06-02 12:13:42
H.Takano @midwhite

弁証法的に、人の理性が常により良い方向へ発展させるはずの歴史は、二度の大戦やホロコースト、核兵器の大量所持など、人間の理性に対する懐疑を巻き起こし、時代は理性を批判する現代哲学のタームへ来た。その先鋒が実用主義(プラグマティズム)であり、哲学者は真理性の基準を有用性に求めた。

2011-06-02 12:25:20
H.Takano @midwhite

プラグマティズムの代表的な哲学者デューイは、「○○とは何か」という本質的な問いに答えは無く、その思索を続けることは無意味である。そこで問いや理説の「意義」に着目し、「Aを信じることが人間にとって有用性があるとしたら、Aの真偽によらず、Aは真理である」とする道具主義を唱えた。

2011-06-02 12:30:40
H.Takano @midwhite

デューイと同じく真理へ到達しようとする哲学を批判した者として、デリダが挙げられる。彼は西洋哲学が「真意が絶対唯一であり、それを探求する側が正しい解釈を求めて奔走する」という音声中心主義であるとして非難し、真理は探求する側が各個人で構築するという「他者による再解釈」を許容した。

2011-06-02 13:09:27
H.Takano @midwhite

そして現代における最も説得性のある真理は、レヴィナスの唱えた他者論である。他者とは「私に対して無関係であり、かつ決して理解できない不愉快な何か」であり、「私の主張を否定するもの」「私の生存や権利に無関心なもの」「私の理解をすり抜けるもの」など様々な意味を持つ抽象的な言葉である。

2011-06-02 13:19:36
H.Takano @midwhite

どんなに完全と思われる学問体系を打ち立てようと、必ず現れてそれを否定するもの。全てのものが持つ、不完全性そのもの。その他者の存在により、全ては決して完成し得ず、逆に全てを完全という行き止まりから救い出す無限の可能性である。他者がいる限り、我々は他者に対し、無限に問い続けられる。

2011-06-02 13:27:01
H.Takano @midwhite

サルトルは「他者とは地獄である」、レヴィナスは「他者とは私が殺したいと意欲し得る唯一のものである」と言った。究極の真理を求める者にとってはそれほどまでに不愉快な、同時に生きる者にとっては意味を見失わない唯一の希望。真理という幻想は、他者は、そのためにあり、それこそが真理である。

2011-06-02 13:31:55
H.Takano @midwhite

稀代の変態ルソーの著作は、非常に優れていた。例えば教育を論じた『エミール』は、ある教師がエミールという名の少年と出会い、彼が結婚するまで教育を施すという物語形式で書かれている。その本の中に「不確実な未来のために、現在を犠牲にするあの残酷な教育をどう考えたら良いのか!」とある。

2011-06-02 16:37:45
H.Takano @midwhite

子どもの将来のためだからと、現在の幸せを奪い取って物事を教え込み、早く大人にしようとする教育の本質的な矛盾を指摘した一言である。エミールの教師は言う。「私はエミールが怪我をしないよう注意することはしない。」…この『エミール』は、現在でも教育界の必読書とされている。

2011-06-02 16:41:47
H.Takano @midwhite

アウグスティヌスが練り上げた神学体系が確立した西洋世界へ、12世紀を過ぎてアリストテレスの古代哲学が伝播した。そこで矛盾する二つの「真理」が対立し、神学が敗北しそうになった時、トマス・アクィナスが両者の統合を試みた。即ち、科学の方法では限界の部分を、神学が補うと主張したのだ。

2011-06-02 19:38:20
H.Takano @midwhite

ニーチェは大衆を嫌い、「神とは弱者のルサンチマンが作り出したものにすぎない」と断言する。彼は、かつて人間が自然に信じていた「善=強さ」という価値観が、キリストの処刑の瞬間から「強さ=悪」へ切り替わったと主張し、この非自然的な価値観をシニカルに「僧侶的・道徳的価値観」と呼んだ。

2011-06-02 18:53:10
H.Takano @midwhite

ニーチェが批判した大衆は、他人と同じ欲望を志向し、価値判断の基準を「善悪」ではなく「他人と同じかどうか」に求める。そして力を求める人々を蔑視し、自分の弱さを正当化する価値観を打ち立てた。ニーチェの大衆批判は、人のうちにある言い訳めいた思想を真っ直ぐに捉え、糾弾している。

2011-06-02 18:59:56
H.Takano @midwhite

ニーチェは「信仰=言い訳」と看破し、いずれ神や道徳が絶対的な価値観とならない時代の到来を予言した。そして現在、既にその時代は到来していると言える。そこにおいて目指すべき人間像として、ニーチェは力への欲望を無為にねじ曲げず、真っ直ぐな向上心を持つべきとする『超人思想』を提唱した。

2011-06-02 19:09:28
H.Takano @midwhite

「神は死んだ」と衝撃的な言葉を残したニーチェは、神のいない世界で生きる人々に、超人を目指すことを求めた。超人は判断基準を他人ではなく自分自身に求め、また力への意志を持って強く生きる。自分自身で生きるべき価値観を持てと主張する彼の言葉は、現代に生きる我々に真っ直ぐ向けられている。

2011-06-02 19:21:08
H.Takano @midwhite

神をめぐる哲学史を読んで分かったのは、これが価値観の問題であるということ。それは「神の信仰なんて人それぞれの価値観だよね」という意味ではなく、「時代を支配していた価値観は何か」という意味である。そしてそれは、かつては神であり哲学であり、現代では他人の欲望であり力への意志である。

2011-06-02 19:44:58
H.Takano @midwhite

【読了】『史上最強の哲学入門 (SUN MAGAZINE MOOK)』飲茶 ☆5 http://bit.ly/lJMdUE #booklog

2011-06-02 20:56:05
にわとり @hiyokoluv

哲学の歴史を踏まえて今世紀に最強を拝めるなんて運がいい。。。RT @midwhite: 【読了】『史上最強の哲学入門 (SUN MAGAZINE MOOK)』飲茶 ☆5 http://bit.ly/lJMdUE #booklog

2011-06-02 21:38:16
H.Takano @midwhite

『史上最強の哲学入門』(飲茶)を読みながら呟いた、今日の哲学ツイートをまとめてみた。 http://togetter.com/li/143522 この本もすごくオススメ。 RT @atlsoushi: かいちょーTogetterにまとめてください

2011-06-02 22:29:43
@mokemoke778

.@midwhite さんの「『史上最強の哲学入門』(飲茶)を読みつつ呟いてみた」をお気に入りにしました。 http://togetter.com/li/143522

2011-06-03 00:21:44
はやし @HayashiS1972

続きがありますよね。その力への意思も現状存在する不健康なニヒリズムを否定するという形で現状にやはり絡め取られるので、永劫回帰を見定めて自らの生命を一切の疚しさ無く肯定する無邪気な子供の様な境地に達するべきであるとQT @midwhite: http://j.mp/iMZNOM

2011-06-03 00:54:27