2019年11月29日

「ワンスアポンアタイムインアメリカ」レビュー 『脚本術の観点からのヌードルス妄想説の否定』

「ワンスアポンアタイムインアメリカ」についてのツイートをまとめました。
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

改めて見返してみると、モリコーネのスコアが本当に素晴らしい。ハズレ曲が皆無という様相で、どうでもいい場面でも音楽が流れるだけで涙が・・・。

2019-11-24 21:42:04
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

本編は「全部ラリったヌードルスの妄想か?」という論争が昔から絶えない。自分も昔は妄想説支持派だったが、今回(配信が通常版しかなかったので通常版だが)改めて見てそれはないなと思った。

2019-11-24 21:42:04
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

物語を掴むには、登場人物の造型、変遷(アーク)を意識して見るとわかりやすい。 本作はアヘン窟でラリるヌードルスの回想から始まり、少年期編、中年編を通過し更に老年期編に到達し、ラストシーンでまたアヘン窟でラリるヌードルスの笑顔で終わるという

2019-11-24 21:42:04
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

難解で複雑な構造で有名な作品だが、作品の軸が何なのかということを意識して見るとわりとシンプルな映画だ。

2019-11-24 21:42:04
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

作品の軸、ヌードルスの人物造型の核となっているのは本編三分の一ほどを占める「少年期の思い出」である。 改めて見ると本作で印象的な場面は少年期編が圧倒的。キャストこそ豪華だが、大人になってからは平々凡々なシーンが続く。

2019-11-24 21:42:05
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ヌードルスにとって大切なのは「少年期の仲間との想い出」であり、これは要はスタンドバイミー」タイプの作品なのだ。古今東西の物語は色んな分け方が出来るが、「スタンドバイミータイプ」は、歴史的に結構散見される。

2019-11-24 21:42:05
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「アメリカングラフィティ(SBMより前の作品で元祖だが)」「ミスティックリバー」「イット」「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」等がそうである。『少年期の体験への郷愁』作中の絶対的な理念として存在し、登場人物達はその頃の記憶に、時には呪い的に縛られている、というタイプの物語。

2019-11-24 21:42:05
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ヌードルスという人物は、よく見るとカラッポである。キャラクターの造型を見るには「大切にしてること、もの」「嫌いなこと」に注視すればよいが、大人になったヌードルスはこれが非常に希薄なのである。

2019-11-24 21:42:05
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

普通の映画では、第一幕(開始30分ごろ、分量でいえば全体の四分の一)までに、主人公のバックボーンがセットアップされる。どういう人物で、何が大切で何が嫌いか、何を目的とするかといったことである。

2019-11-24 21:42:06
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

本作の全体の三分の一以上を占める少年期では、ヌードルスの貧困、幼馴染のデボラへの淡い恋心、マックス達悪友との青春が描かれる。収監され出所した後のヌードルスは、何も状態を更新しない。再会したデボラとの恋は失恋に終わり所帯を持ったりもしない。親友のマックスとは決別してしまう。

2019-11-24 21:42:06
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

普通の映画なら「自分の大切なものを守る」という方向性で、マックス達の愚行(銀行強盗)を止めようと奔走する展開が、後半の軸になっていると思う。しかし本作は時系列を解体した特異な構成で、「止めようとするが自分はトンズラする」「時間が経過し老人になったヌードルスの時間軸に移行する」

2019-11-24 21:42:06
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ヌードルスの銀行強盗阻止は失敗に終わり、マックス達は死んだものと思われる。しかし、マックスは更にその裏をかき生きていたことがわかる。 これがスタンダードな構成から見ると妙な展開で、観客に何を伝えたいのかがイマイチわからない。本作がややこしいのはここだろうと思う。

2019-11-24 21:42:06
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

これは、ややこしいが結局は「ライバルとの対立」なので、そう捉えるとわかりやすい。つまりマックスは、創作に頻出する「味方のふりをしていた敵対者」なのである。 普通の作品であれば敵対者の陰謀がクライマックス直後に露呈し主人公が回避策を取るのだが、ヌードルスは「何もしない」

2019-11-24 21:42:07
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

これはどういうことなのかというと、敵対者であるマックスの人物造型(理念)と、対立軸が何なのか(何を争っているのか)を見るとわかりやすい。 二人は親友同士だが、結局幼少期の頃から憧れてる人は同じライバル同士だったのだ。 マックスはヌードルスを出し抜き、

2019-11-24 21:42:07
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ヌードルスの想い人であったデボラを愛人にして、子供まで産ませている(デボラもまた幼少期の旧友と関係を持っている点に注目) この「三角関係」何に依拠しているかというと、それが本作の最も中核的理念の「少年期の幸せな想い出」なのである。

2019-11-24 21:42:07
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

つまり少年期からの片思いを成就出来ず親友をも裏切ってしまったヌードルスの心理的変遷は、そこで既に「止まっている」ヌードルスという人物はデボラと別れた時点で進むことを止めてしまった人物なのである。

2019-11-24 21:42:07
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ヌードルスはデボラとの最後の逢引のシーンで「刑務所で思い出したのは君とドミニクの死の瞬間だけだ」と言っている。これはわかりやすい『ヌードルスにとって大切なこと』である。 物語はこういう場面を意識して掴むと理解が早くなる。

2019-11-24 21:42:08
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

そして、敵対者のマックスはというと、本当にデボラのことが好きだったのか?少年期にはあまり関わりがないし、愛人にしているだけ。 ここから推察出来るサブテキストは「ヌードルスへの嫉妬」しかない。 上昇志向の強いマックスを縛りつけているのもまた、「少年期の想い出」という呪縛である。

2019-11-24 21:42:08
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

だので全てを手に入れたマックスは、ヌードルスを呼びつけて「自分を殺してくれ」と頼む。 しかし抜け殻のヌードルスには現在のデボラもマックスの行く末もどうでもいいので何も手を下さない。マックスは破滅して終わる。

2019-11-24 21:42:08
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

劇中で「ヌードルスのヤク中」という情報がどこで出るかというと、デボラと別れた後である。ヌードルスの「アーク」は、ここで完結している。 後は対外的な状況の処理(マックスの事情)しかないのが、本作の歪んだ構造の特徴である。

2019-11-24 21:42:08
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ヌードルスにとって大切なのは「少年期の想い出」であり、アヘン窟に逃避して過去を回想する自堕落な毎日になった時点でアークが完結しているので、ラストシーンは「ラリって想い出にふけるヌードルスのアップ」なのである。 本作のシナリオの構造を見ると「ヌードルスの妄想説」はまずありえない。

2019-11-24 21:42:09

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