- Yuusisaitou
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157分という上映時間は、内容を考えると少し長いように感じる。 改めて見ると、一つ一つのシーンが非常に長い。 大衆映画は通常、テンポのいい場面転換が鉄則で、ワンシーンは大体2~5分で終わるものが多いが、この映画のワンシーンは、具体的に数えてはいないがとても長い。
2019-11-24 23:44:31脚本上の役割を考えれば「もっと短くてもよくないか?」と思うようなシーンばかりなのだが、そこはやはり主演のアル・パチーノの鬼気迫る演技がそうさせなかったのだろうか。 映画の内容的に、120分尺に収めても何ら問題ないと思うし、そのほうが繰り返し見れる作品になったと思う。
2019-11-24 23:44:32映画編集、脚本の極意として有名なのが「遅く入って早く出ろ」なのだが、この映画はなかなか「出ていかない」。パチーノが演技している空間が、非常に長く濃密に編集で残されている。彼は今作で念願の初オスカーを獲得した。
2019-11-24 23:44:32シーンは長いが、かといって退屈という感じはしない。これはパチーノの演技と、フランク・スレードというキャラクターのユニークな造型の賜物だろう。 本当に目が見えてないんじゃと思ってしまうパチーノの盲人演技も凄いが、フランクのキャラクターがあまりにも強烈で、
2019-11-24 23:44:32映画自体ほとんど彼の一人芝居、と言っても過言ではない。 脚本は結構歪で、クリス・オドネル演じる主人公「チャーリー」の抱える問題と、フランクの抱える問題があまりマッチしていない。 前半部分でチャーリーの「密告問題」が片付けられ、中盤はフランクとの交流、
2019-11-24 23:44:33そして終盤またチャーリーの問題に戻る、というあまりスマートではない構成(というかここまで主人公の対外的問題が中盤放置されるのは結構珍しい) ラストの査問会で部外者のフランクが乱入し演説をぶち上げ一件落着、というのはちょっと出来すぎ?
2019-11-24 23:44:33映画脚本では通常、何らかの問題を抱えた人物が作中を通して得た力や知見によってそれを克服する、という構造を取るのだが、今作の主人公チャーリーはフランクとの交流を通して特に何かを成したり何かを学んだりということはない。
2019-11-24 23:44:33まあ心理的・物理的両面で問題を抱えてるのはフランクのほうで、彼が主人公という捉え方をすればいいが、しかし映画の視点はチャーリーから始まりチャーリーで終わるので、やはりフランクは「バディ(相棒)」という位置づけがしっくりくる。
2019-11-24 23:44:34チャーリーは劇中、一貫して誠実な青年で、それに感化されてフランクが変化し、チャーリーの物理的課題(告げ口問題)を解決してくれる、という構成。 個人的にはあんまりスマートじゃないと思うが、テーマがとてもいい。
2019-11-24 23:44:34「周囲の同調圧力に屈しず、自分を曲げずに誠実に生きる」というのは、学生の頃に見て非常に感化されたのを覚えている(ひねくれ者の自分にはカッコよすぎる哲学だが) 「都合が良すぎる」という批判も聞く作品だが、人生賛歌がテーマの作品はこれくらいでいいんじゃないかと思う。
2019-11-24 23:44:34「理解してくれる人が居るということ」というサブテーマもいい。フランクは孤独な盲人で、家族や身内からも煙たがられ、自殺を考えている。 素朴な青年チャーリーの命がけの説得により自殺を思い止まり、最後には素敵な女性教師の知り合いも出来る。 (この女優さんの絶妙な”その辺に居そう感”がいい)
2019-11-24 23:44:34フランクがタンゴ「ポル・ウナ・カベサ(ラピュタのテーマに似てるヤツ)」で踊るシーンが感動的。 退屈そうにしてる初対面の女性に声をかけ、盲人のフランクが華麗にリードし、「生の喜び」を発露する様は何度見ても泣ける。 このシーンの最後に出てくる「カレシの悪気のない軽薄っぷり」も絶妙。
2019-11-24 23:44:35トーマス・ニューマンの爽やかなスコアもいい。個人的には「007 スカイフォール」のイメージが圧倒的に強いが、今作や「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」といった感動作も手掛けてるようだ。そう言われてみれば劇伴のイメージが似ている気がする。
2019-11-24 23:44:35小ネタはチャーリーの同級生でフィリップ・シーモア・ホフマンが。カリートの道と続けて見たのでどちらもジェームズ・レブホーンが「悪役」だったのがちょっと笑ったのであった。(カリートは検事、今作では校長役)
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