「狼」に育てられた古代ローマ人の始祖「ロムルス・レムス兄弟」の正体ー「狼」では無く、「牛」の兄弟だった?

古代ローマのレムス、北欧神話のユミル、インドの閻魔(えんま)大王などは、全部インドヨーロッパ祖語*Yemo「エモ」に遡り、牛の牧畜を世界に広めたインドヨーロッパ語族の神話に由来する。その驚きの姿と真実とは?
古代ローマ 世界史 神話 歴史 言語学 中国史
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巫俊(ふしゅん) @fushunia
ロムルス・レムス兄弟って、に育てられた子と思いきや、ラテン語のルペルキluperci「狼の兄弟たち」の語源は「」だとされ、ロムルス・レムスが育ったルペルカル洞窟の名前の由来であり、本来は「」の神話にあたり、ロムルスに殺された弟レムスは、犠牲にされただったのです。驚きですね
巫俊(ふしゅん) @fushunia
ローマの建国神話には、インドヨーロッパ語族共通の神話が隠れており、デイヴィッド・W・アンソニー『馬・車輪・言語』によると、レムス「双子」を意味するインドヨーロッパ祖語に由来するとある。以前、ツイートしてたら、詳しい方から「閻魔大王」の閻魔も同一の語源にあたるとご教示頂きました。
巫俊(ふしゅん) @fushunia
古代ローマのレムス、北欧神話のユミル、インドの閻魔などは、全部インドヨーロッパ祖語*Yemoに遡るマヌ(男)とエモ(双子)という名前の兄弟が宇宙を旅していたが、この世界を創造するには「犠牲」が必要になり、牛もしくは弟のエモを犠牲にしてマヌが最初の祭司(生贄の儀式の創始者)になった
巫俊(ふしゅん) @fushunia
何で、狼の話なのに、言語的には牛由来なんだろう?と思っていたら、驚きの展開…新刊のミシェル・パストゥロー『図説ヨーロッパから見た狼の文化史』によると、ラテン語のルペルキは、語源が「狼=牛」で、バレンタインデーの遠い起源にあたる古代ローマのルペルカリア祭は、牛の祭りだと書かれてます
巫俊(ふしゅん) @fushunia
ちなみに、ステーキ系ファミレスで牛のヒレステーキ「極み」100グラムを食べた後に、本を読んでて気付きました。 twitter.com/fushunia/statu…
巫俊(ふしゅん) @fushunia
古代ローマ人は、メスの狼に「多産」のイメージを持っていて、娼館のルパナルも「狼」に由来するとありますが、ルパナルもルペルカリア祭も、lupで始まる同じ語根の言葉でした。ローマ貴族が神官になるルペルカリア祭は、妊娠を願う女性を「牛皮のひも」でたたいて、畜群の多産と農耕の豊穣を予祝する
巫俊(ふしゅん) @fushunia
インドヨーロッパ語族は、「牛」の牧畜と深い関わりがあり、インド方面の研究者の説明によると、人間の男女を関係を歌うときに、「あたかも牛であるかのように」その美しさを褒めたとあります。これ、全部つながってますね。 twitter.com/fushunia/statu…
巫俊(ふしゅん) @fushunia
娼館を指すラテン語ルパナルも、男女関係を「牛」の肌のつやつやさとかで表現してたことに由来してるはずで、牛の「多産」の表現だったものが、イタリア半島の古代世界では、子どもを愛情たっぷりに育てる「狼」のメスを表現する言葉に変わったってことになります。そして売春を意味する言葉にもなった
巫俊(ふしゅん) @fushunia
古代ローマでも、きわめて古いとされるルペルカリア祭は、しだいに盛大な淫乱な催しになったので、集団的な性的混乱を招き、5世紀の教皇が禁止して最終的に廃止されたとありました。「牛皮のひも」で女性をたたいて、妊娠を予祝するとありますが、これは男性器のモチーフなんでしょうね。
巫俊(ふしゅん) @fushunia
殷の始祖として、甲骨文に出てくる神話上の人物「王亥」(おうがい)は、牛に挽かせる車を最初につくった人だと伝世文献にあります。二里頭文化や、殷代前期の偃師商城からは車の轍(わだち)が出土するが、戦闘用馬車以前の段階だとされてます。そして車と馬は西方草原世界から伝来したと確定してます
巫俊(ふしゅん) @fushunia
亥 *[g]ˤәʔ 恒 *[g]ˤəŋ うう、これは気になる!牛の牧畜をしてた殷王の始祖も「王亥」「王恒」の兄弟なので。 twitter.com/fushunia/statu…
巫俊(ふしゅん) @fushunia
【1】殷の遠祖「王亥」は、車を牽引する牛の創始者と伝承 【2】世界で初めて「車」を広く普及させたインドヨーロッパ祖語集団が、4000年前に中国新疆に移動してきたことが考古学的に確認されてる 【3】復元された彼らの始祖神話が『楚辞』の王亥の話に酷似してる 【4】「全部後世の創作説」は誤り twitter.com/fushunia/statu…
河東竹緒 @rivereastbamboo
牛と狼の神話は印欧祖型神話というより汎ユーラシア祖型神話と考える方がよいのかも。ただ、インドより東、東南アジア〜華南は事情が違いそうな感じ。高速交通が船になるし、気候的にも乾燥地帯ではないのでちょい特殊。中緯度地域はだいたい北に開いてるから北寄りかなあ。
巫俊(ふしゅん) @fushunia
@rivereastbamboo チンギスの遠祖の蒼き狼が云々、烏孫の神話でも云々…という記述はよく見かけますが、私が気付いて無いのか、牛=狼というローマのような(語源的にしっかりした)共通モチーフは見たことが無くて、分からないでいます。家畜を襲うのが狼なので、関連付けされるだけ身近だということは分かるのですけど
河東竹緒 @rivereastbamboo
@fushunia 狼が絡む説話は高車や突厥を待たねばならないのですよね。強いて言えば、犬戎に白狼と白鹿という部族?があり、羌族に参狼という種があったくらいで。彼らは文字を持たないのでどのような位置づけだったのかは不明、と。 可能性があるのは要素じゃなくて構造ですかね、、、
巫俊(ふしゅん) @fushunia
インドヨーロッパ祖語で、「狼」と「牛」が同じ語源になる理屈がよく分からなかったのですが、「狼」が*lup-で、「牛」が*lōp-みたいです。
巫俊(ふしゅん) @fushunia
詳しい方のツイートによると、古代ローマ人は自分たちの始祖ロムルスが「弟を殺害」してることに違和感があったそうですが、元のインドヨーロッパ語族の「牛」神話がそういう話だったのだとすると、弟殺害は誰もが知る故事の前提だったことになるので、その話を外すことができなかったのだと思います。
巫俊(ふしゅん) @fushunia
日本の場合だと、海幸彦とか、幾つかの神話はマレー・ポリネシアと話が共通だったりしてて、ヤマト王権が英雄を語るときに、「よく知られたこういう話にしないと、民衆が納得してくれない」という事情があって、古い時代に何かの接触があったマレー世界と共通の神話になってるようです
巫俊(ふしゅん) @fushunia
だから、ローマの始祖のロムルスとその双子の弟レムスの関係については、つまらない諍いで兄が弟を殺害してしまったという話になってる訳です。ロムルスらが「つまらない理由」で争ってるのは、牛の牧畜の起源に関わる古い神話が共和政とか帝政期のローマ人にはよく分からないものになってたから。
巫俊(ふしゅん) @fushunia
インドヨーロッパ祖語やその系統の言語では、「牛」と「狼」の発音が近く、どちらも「多産」イメージがある動物だったので、古代ローマでは「牛の兄弟(双子)たち」の神話が「狼の兄弟たち」の神話に変わり、狼の乳で育った双子ロムルス・レムスの話になりました。感動的な子育てなのに弟殺害という話
巫俊(ふしゅん) @fushunia
ローマ帝国の貨幣には、ロムルス・レムスの育ての親である狼をレリーフにしたものがあるそうですが、せっかく育ったのに片方を片方の生命を奪ってしまった訳で、確かに残念な気持ちになりますよね。 twitter.com/fushunia/statu…
巫俊(ふしゅん) @fushunia
ラテン語の「語源的には狼=牛」と書いてるのは、ミシェル・バストゥロー『図説ヨーロッパから見た狼の文化史』です。詳しい方のツイートを見る限りでは、話が食い違ってしまうので、文化史の本に出てくる説明は、「狼と牛の発音が何か似てた」くらいの解釈で良いのではないか?と思いました。
巫俊(ふしゅん) @fushunia
今まで、私が調べてきた限りだと、歴史上の交流関係を示す言葉が、必ずしも「比較言語学の方法で完全一致」する訳では無くて、語源的には完全一致では無いけど、言葉が似てるから、歴史の物語に影響を与えてしまった言葉や習俗があると考えて良いと思います。
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コメント

巫俊(ふしゅん) @fushunia 2019年12月9日
私は歴史学専攻でして、言語学に関するツイートについては、『図説狼…』や『馬・車輪・言語』から引用したことをそのまま書きました(私の意見の部分もあるが)。この2つの本は言語学にも詳しいヨーロッパの歴史研究者が書いたものですが、彼らは比較言語学の研究者では無いので、言語学者の方から「ちょっと違うと思う」などの意見を頂くこともあるかもしれません。
巫俊(ふしゅん) @fushunia 2019年12月9日
それと私のツイートは、色々な本、史料から得た知見を、頭の中で再構成しながらツイートしたものです。なので、『図説狼…』の本に全部のことが書いてる訳では無いですが、アンソニーの『馬・車輪・言語』の「レムスと牛」の話を知っていれば、とても驚くことが書かれてました。アンソニーの本の内容を思い浮かべながら読むと、こういう風に読み取れるということになります。
Felinesula @Felinesula 2019年12月9日
最初の本の画像だけ見てジャレド・ダイアモンドかと思い込んだ…(出版社は狙ったよね?)
Felinesula @Felinesula 2019年12月9日
各方面に踏み込んだ知識体系がないと理解できない気がする。私は持たないけど、でも面白かった。納得できない点もいくつか。なぜ牛=狼なのか(牧畜の民にとって生活基盤と外敵を混同した理由)と、牛=多産は無理があるでしょうという点。
さどはらめぐる @M__Sadohara 2019年12月9日
牛と狼の置き換えは単純に、伝承が伝わった地域の特性の問題かと思います。干支の動物やチェスのルークが国や地域によってさまざま異なるのと同じこと。親子間の不義、兄弟間の命を懸けた争い、国生み神話に代表される領土の定義は古代神話においては基本3点セットみたいなもんです
巫俊(ふしゅん) @fushunia 2019年12月9日
ありがとうございます。牛が「多産」かどうかは私も悩みましたが、「子どもを多く産む牛」(これも多産と呼ぶ)が好まれることもあるようですし、古代バビロニアの時代から、牧畜は個体数の増加を経営の前提としていました(粘土板より)。相対的な「多産」概念ではないでしょうか。そして、狼の方が繁殖力にすぐれていると Felinesula
巫俊(ふしゅん) @fushunia 2019年12月9日
そう考えないと、ミシェルの『図説ヨーロッパから見た狼の文化史』の中で、「古代ローマのルペルカリア祭で、牛皮のひもで女性を叩いた(日本の伝統的民俗の「孕めん棒」のようなものだ)」と説明されてることが理解できない気がします。
巫俊(ふしゅん) @fushunia 2019年12月9日
フォロワー様にご教示頂いたのですが、中国の新疆で出土したインドヨーロッパ語族(トカラ語を話した歴史時代の月氏や亀茲などの祖先集団)とされる集団の先史時代の岩絵に、興味深い表現があります。 「新疆出土の「陰茎ダンス」ですが、よく見ると牛の尾らしいものを腕につけて振り回す男性が2人います」 https://twitter.com/fushunia/status/874811948587663360
Felinesula @Felinesula 2019年12月9日
fushunia ありがとうございます、(平均出産数が一頭の)牛の場合の多産とは、(平均的な雌牛は1、2年に一頭産むところ)毎年子牛を産んで長生きして生涯出産頭数が多い雌牛を指す、みたいに理解すると良いということですか?(紐が牛革製なのは身近な皮革がコレだけだからという気もするんですけど、牛という点が重要なのですか?)
Felinesula @Felinesula 2019年12月9日
素人の思いつきですが、牛=多産というのは牡牛のほうを指すのかと思いました、最初は。自分が産むではなく産ませるほう。牡牛が精力旺盛のイメージと結びついている地域はありますし…古代ローマは存じませんが…。雌牛なのなら、ルペルカリア祭は女性が男性を革ムチでひっぱたくイベントでも良さげです😼
四号戦車 @Panzer_04 2019年12月11日
「牧畜を行う兄弟がいて」「兄が弟を殺す (もしくは弟が死ぬ)」という神話はアベルとカイン・ロムルスとレムス以外にもあることが分かったが、この類型なにか名前がついてるんだろうか? またその祖型は巫俊さん(@fushunia)が言うようにインド・ヨーロッパ語族起源なのかしら?
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