【2発表記念】「STAND BY ME ドラえもん」レビュー 『私がどうしても許せないこと』

「STAND BY ME ドラえもん」のレビューまとめです。批判的な内容なので、不快になる方は閲覧非推奨です。
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この時点で「感動的なBGM」を流すのは演出家が 『ほらしずちゃんがのび太のために頑張ってますよ!!どうです感動的でしょう!!』観客の後ろで背中をバンバン叩いてるようなものである。 正直ここの表情も含め、「英雄的行動ですよ」といった芝居付けがわざとらしいとも感じる。 pic.twitter.com/1fmC9G3bK0

2019-12-15 10:40:12
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

原作でも、確かにこの場面は感動を覚える。 しかしそれは「読者の第三者的視点」であって、劇空間はあくまで「切迫した状況の中でしずかが必死に助けようとしている」 そこに「しずかとのび太の絆」というサブテキストを感じるのは読者が行うことで、これを演出家が強調してはかえって冷めてしまう。

2019-12-15 10:40:12
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ここでは「切迫した状況」「それに負けず必死に行動するしずか」という感情が増幅されればされるほど、観客の心の中で「しずかの行動の尊さ」が浮き彫りになるはずである。 原作もそうだ。しずかの必死の形相が最小限のコマで描かれている。 手を握って微笑む暇などない。安心するにはまだ早い。 pic.twitter.com/4y6LfKv0T8

2019-12-15 10:40:14
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

要は「シーン内の人物の視点」「観客の視点」「演出家の視点」が統合されていないのである。 演出家だけが先走る、あるいは観客の理解力を信用していないのか『ほらほらここから感動シーンですよ!!』と囃されている感覚だ。 オバケ屋敷で先頭を歩いてる奴に先に全部ネタバレされているようである。

2019-12-15 10:40:14
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この回が感動的なのは、「周囲との対比」「しずかの混じり気のない、純粋一途な行動」があるからだ。 ここでわざわざ『しずちゃん頑張ってますぅ~!!』みたいな音楽を流すのは野暮以外の何物でもない。 しずかは自分を立派に見てもらいたいからこういう行動を取ったのか?否である。

2019-12-13 02:32:02
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

(補足) 大体、この映画は全体を通して「しずかと結ばれること」を大目標にしエピソードが組み立てられている。 ここで必要以上に「しずかの行いの尊さ」を強調するのは、背後にある未来の繋がりを強調することになる。 「未確定の未来ではなく現在が大切なんだ」というF先生の主張とは真逆なのである。

2019-12-13 03:17:12
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

そして最も許せないのがここの泣き出すタイミング。 まずそこまでの「言い方」が軽すぎる。原作のマジに心配してのトーンとは似ても似つかない軽い調子だ。 そして「バカ…バカ…!」といってのび太の胸で泣く。 オイオイ・・・そりゃないだろ。 pic.twitter.com/EX1MZ2gO8k

2019-12-13 02:32:03
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ここで「女の涙」は卑怯である。男は女の涙に弱い。こうされると何も反論出来ない。 それを、こういう切迫した状況でやる女。 私にはこの神経が理解出来ない。本気で相手を心配して、二度とこういうことをするなと諭さなければならない場面で、相手が反論出来ないような「泣き落とし」をするだろうか?

2019-12-13 02:32:03
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

些細な事だが、重要な違いだ。 しずかは「泣き落とした」のではない。 『涙を浮かべながらも一生懸命諭した』のだ。 対等な存在として、自分がどう思われるかといった些末な懸念などかなぐり捨てて、脇目も振らず精一杯怒った。 これは自己犠牲の精神にも似た、芯の強い人間にしか出来ない行動だ。

2019-12-13 07:29:36
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

自己犠牲の精神は、ドラえもんという作品にはよく出てくる。 メソメソと泣く姿を見せつけて「もうしないで…」と泣きすがるのとは真逆だ。それは自分の可愛さや、相手の弱みを分かっている人間のあざとい行動だ。 私が知っている「しずちゃん」は、そんな諭し方はしない。

2019-12-13 07:29:36
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ここに、F先生が描いた源静香の精神の高潔さはカケラも居合わせていない。ただの身勝手なあざとい女が居るだけである。 私はこのシーンを劇場で見て心底怒りに震えた。いやこの映画のダメなところはそれだけじゃないので、ここまでにもだいぶ怒っていたが。

2019-12-13 02:32:03
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この回は「未来を危惧する見当違いのロマンチストなのび太を、現在の関係を大事にしているリアリストのしずかが修正する話」である。 だから、将来の夫婦関係を持ち出したのび太と対比的に「お友達だもの」としずかが言う。 のび太の「予定」ではなく、読者はしずかの行為に「将来への希望」を見出す。

2019-12-13 02:32:04
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

そして「嫌われるのは今度にする」=未来のことじゃなく今を大事にする、とのび太が学習するのである。 映画版では「しずかちゃんに怒られちゃったよぉテヘヘw」と言うだけである。 この男、全くわかっていない。 pic.twitter.com/5WZUuf7g6b

2019-12-13 02:32:05
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

まあしかし、83億も稼いで「ドラ泣き」なんて言葉も流行り(?)「蕎麦煮たいよ~♪」という歌もヒットしたので、一般的にはそれなりに「好評な映画」だったのだろう。 原作を知らなければ普通に感動出来たのかもしれない。 しかし、この映画で感動したという方には是非原作を読んでいただきたい。

2019-12-13 02:34:11
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

もう一度言うが、私は批判はあまり好まない。わざわざ楽しんだ人の気分を害したくないし、自分の時間は良い作品に対して使いたい。 しかし、ここは心を鬼にして泣きながら怒った原作しずちゃんの高潔さを見習って、あえて言いたい。 「STAND BY ME ドラえもんはクソだ」(涙)

2019-12-13 03:35:03