貴金属スペシャリスト 池水雄一によるツイートで読み解く貴金属講座「プラチナとパラジウム」

日本貴金属マーケット協会(JBMA)代表・貴金属スペシャリスト 池水雄一によるツイートで読み解く貴金属講座。
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Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「パラジウムとプラチナその1」 プラチナ945ドル、パラジウム1963ドルで現在2倍以上です。かってはパラジウムはプラチナの5分の1だったことを思うと隔世の感があります。どうしてこうなったのか、これからどうなりそうか?時間がある時に連載風に書いてみます。

2019-12-13 09:51:31
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「プラチナとパラジウムその2」 まずその鉱山生産。プラチナは南アとその周辺で80%生産されますがパラジウムは南アとロシアがほぼ40%づつ。年間生産量は両方ともほぼ200-250トンの間であまり変わりません。ちなみにゴールドの年間生産量は3200トンくらいなので、マーケット規模は20分の1くらいです。

2019-12-13 09:55:19
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「プラチナとパラジウムその3」 プラチナ需要の40%、パラジウム需要の80%が自動車排ガス触媒。プラチナはディーゼルエンジンにパラジウムはガソリンエンジンに使われています。これが現在の価格差の原因。世界で売られている自動車の大部分はやはりガソリンエンジン。EVは全体で考えるとまだまだです。

2019-12-13 10:02:50
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「プラチナとパラジウムその4」 ガソリンエンジンの触媒には当時安いパラジウムで十分でした。ディーゼルエンジンにはパラジウムは役不足。高いプラチナを使う必要がありました。逆説的ですが、パラジウムが安かったから、現在の高値になったのです。触媒性能はプラチナが上位なのです。

2019-12-13 10:06:42
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「プラチナとパラジウムその5」 ガソリン車が世界で圧倒的売れ、ディーゼル車がその主要なマーケットである欧州で、フォルクスワーゲンの触媒不正事件もあり、売れ行きが思わしくなくなっとこともパラジウム上昇、プラチナ低迷に拍車をかけました。プラチナには30%を占める宝飾需要の低迷も痛手です。

2019-12-13 10:11:36
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「プラチナとパラジウムその6」 もはやパラジウムの半値になった性能の優るプラチナをパラジウムに代替として使えばいい、と考えるのは当然。しかし、こと自動車触媒では、これはそんなに簡単なことではありません。まず現在の触媒生産ラインはパラジウムベースでできています。プラチナは使えません。

2019-12-13 10:15:15
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「プラチナとパラジウムその7」 自動車一台の触媒に含まれるメタル量はせいぜい3〜5gと言われています。1グラム 3000円の差があるとしても1台でせいぜい15000円の差です。車一台300万円するとすればこの差は自動車会社としてはおそらくほとんど無視できるレベルでしょう。代替コストの方が遥かに大。

2019-12-13 10:20:08
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「プラチナとパラジウムその8」 という事で代替可能分野ではどんどん代替が進んでいると思いますが、最大の自動車触媒分野では代替は難しいのが実情です。そして世界の自動車販売は昨年からスローダウンしていますが、世界の環境規制の厳格化から、触媒需要は逆に増えているのです。

2019-12-13 10:27:07
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「プラチナとパラジウムその9」 プラチナにはプラチナ鉱山があります。(南ア)しかしパラジウムにはパラジウム鉱山はありません。その鉱山の収入の50%以上を占める産物の名前を鉱山名としますが、パラジウムがメインの鉱山はないのです。パラジウムはあくまで副産物、バイプロなのです。

2019-12-13 11:01:33
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「プラチナとパラジウムその10」 パラジウムは南アではプラチナの、ロシアではニッケルの副産物として生産されています。副産物であるという事でその生産を積極的に増やす事は難しいのが現状です。ただしこのマーケット状況から南アではよりパラジウムリッチな鉱脈を掘る努力が進んでいるようです。

2019-12-13 11:04:23
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「プラチナとパラジウムその12」 いずれにしろ生産を劇的に増やすのは困難です。そして触媒需要が堅調に伸び続ける以上、パラジウムの供給不足は累積的に積み上がって行きます。もはや10年それが続いており、この先も簡単には解消されないとすれば、パラジウムの現在の価格の動きは必然の結果ですね。

2019-12-13 11:09:07
Bruce Ikemizu @BruceIkeGold

「プラチナとパラジウムその13」 過去20年のプラチナとパラジウムの価格推移チャートです。ほんの4年弱前の2016年年初はパラジウムは480ドルでした。 pic.twitter.com/Llvt1ASIcY

2019-12-13 19:29:53
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