坂井豊貴さんの読売書評まとめ(2018~19)

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坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

本年から読売新聞の読書委員を拝命しました。およそ二週間に一度のペースで、日曜版に書評を寄稿します。初回は本日。中田敦彦『天才の証明』(日経BP社)を評じています。どうぞ皆さまよろしくお付き合いください。

2018-01-07 13:16:26
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

本日の読売新聞で書評した中田敦彦『天才の証明』(日経BP社)ですが、私には「なるほどー」が多い本でした。言われると当たり前に思えても 、言語化されないと意識できないことが、色々と書かれてます。商品開発やチーム作り、子育てに関わる人には収穫の多い本だと思います:amazon.co.jp/dp/4822259218/…

2018-01-07 17:28:13
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

本日1/28(日)の読売新聞に、田中洋『ブランド戦略論』(有斐閣)への書評を寄せています。世の中には無数のブランドと戦略があり、一つひとつはアートのように見えます。本書はそれらアートを体系的にサイエンスとしてまとめあげた、ブランド研究の金字塔。今後の実務のバイブルともなるでしょう。

2018-01-28 10:20:44
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

この書評は「私は先日グッチのネクタイを買った。けっこう高かった」から始まります。私にとってこの本は、1999年の石井淳蔵『ブランド ―価値の創造』(岩波新書)以来の傑作です。私は長く「ブランドに関する本格的な書籍」を探していたのですが、ついに登場。

2018-01-28 10:36:39
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

本日2/11(日)読売新聞の朝刊に大屋雄裕『裁判の原点』(河出書房新社)への書評を寄せています。本書では、裁判への通俗的なイメージがことごとく覆され、立法府と司法府の担うべき役割が問われます。対話式で読みやすい。大屋節の遠慮ない語り口は、法廷劇よりスリリング。amazon.co.jp/dp/4309625096/…

2018-02-11 10:54:10
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

本日2/18(日)読売新聞に、松島斉『ゲーム理論はアート』(日本評論社)への書評を寄せています。ゲーム理論の世界的な第一人者による、ゲーム理論に関する事柄についての読み物です。自由奔放に書かれた本書こそがアートのよう。

2018-02-18 09:49:26
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

書評の一部より: ・・・著者がゲーム理論を使って、さまざまな事象の「なぜ」を語ってゆく。語る対象はバブルや差別から、サッカーやテロ対策まで多岐にわたる。著者独特の語り口はざっくばらんで、余談や脱線も多く、ときに愚痴も交じる。

2018-02-18 09:53:00
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

本日3/11読売新聞に、永見瑞木 著『コンドルセと<光>の世紀』(白水社)への書評を寄せています。コンドルセが構想するのは、「人間は間違える」という可謬性を前提とする政治社会。官僚的な無謬性の真逆。反省的な問い直しに開かれていることを、何より重視していました。kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-97845…

2018-03-11 09:52:02
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

読売新聞3/11に寄稿した、永見瑞木 著『コンドルセと〈光〉の世紀 科学から政治へ』(白水社)への書評。フランス革命の時代を生き、40歳で落命したコンドルセに、思想の全容を書き残す時間はありませんでした。没後200年以上を経て、著者は本書でそれを明らかにします。yomiuri.co.jp/life/book/revi…

2018-03-22 12:15:14
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

このコンドルセの本は、いまの時代状況を考えるのにも、本当に適している。不思議なのは、著者がこの本を書き始めたのは何年も前のことのはず、ということ。でも優れた学者って、こういうものだよなー、と思う。ひとつの時代精神を反映する人は、巫女的だよなー、とも思う。yomiuri.co.jp/life/book/revi…

2018-03-22 12:23:18
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

本日3/25の読売新聞に、丸山俊一・NHK「欲望の民主主義」制作班 著『欲望の民主主義』(幻冬舎新書)への書評を寄せています。同名の番組をもとにした、米仏独6人の識者へのインタビューがまとめられています。読み易いうえ濃密。政治思想へのエントリーとしてもお勧めです。amazon.co.jp/dp/4344984889/…

2018-03-25 13:40:18
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

本日4/1の読売新聞に、韓載香 著『パチンコ産業史』(名古屋大学出版会)への書評を寄せています。利害の異なるプレイヤーたちが「業界の存続」を共通の利益として結び付き、暴力団を排除し、不当競争を除外し、業界のなかに秩序を打ち立てるさまを「社会契約」のように読みました。

2018-04-01 09:51:06
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

余談。書評する本は(もちろん)最初から最後まで全部読んでいる。『パチンコ産業史』は400頁を超す本格的な史書だが、水のような文章で、すいすい読めた。もちろん読みやすさと内容の良さとは別の概念だが、読み手としては読みやすいほうが有難い。もちろん本書は内容も格別。

2018-04-01 10:00:49
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

私は心の一部に「学者らしくない選書をしたい」という欲望があるのだが、結局、今回の『パチンコ産業史』のように非常にまともな学術書を選ぶことが多い。学術的に優れた本を見付けると、きちんと評価せねばと心が作動する。アカデミアの訓練を受けすぎたというか、規範が内面化されているのだと思う。

2018-04-01 10:10:33
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

本日4/22付けの読売新聞に、黒崎真 著『マーティン・ルーサー・キング』(岩波新書)への書評を寄せています。「非暴力」運動で知られるキング牧師ですが、かつては銃をもち、武装した護衛がいました。しかしあるとき「非暴力」を自身の核に据えます。この「非暴力」が強烈。kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-97840…

2018-04-22 11:03:40
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

非暴力という「戦術」があるのですね。そもそも、殴られたときに殴り返したら、相手はさらにためらいなく殴ってきます。だから殴り返さない。代わりにワークショップで「頭部を保護する訓練」とか「罵倒されても腹を立てない訓練」を十全にやる。執拗に、問題提起を続ける。kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-97840…

2018-04-22 11:09:23
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

そして非暴力運動だと、暴力が苦手な人でも参加しやすい。すると大衆運動になりやすく、社会に問題提起しやすい。非暴力運動という「戦術」なのです。もちろん被害者は出ます。キングもたびたび危ない目に遭う。しかし、しつこく、しつこく、社会が無視できないよう執拗に問題提起を続ける。

2018-04-22 11:15:00
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

非暴力運動は、自制的な戦闘ではなく、戦闘的な自制。だからキングは非暴力の「闘士」なのですね。そしてキングにとって非暴力は、たんに「戦術」ではなく、「生き方」でもあった。最終的にキングは公民権運動で一定の勝利を収め、ノーベル平和賞に。この本は、ほんとうに面白かったし、胸を打たれた。

2018-04-22 11:18:47
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

私がこの本を読んで大きく変わったのは、「非暴力」のイメージもだけど、「運動」の意義。日本だと、たとえば国会前のデモですね。昔、柄谷行人氏がデモの意義を「デモができる社会になる」と述べたと思うのです。それはまあ、そうだなあと思うのですが、そもそも「問題を社会に視覚化する」のですね。

2018-04-22 11:25:05
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

この本を読んで「デモで社会が変わらない」は正しくない、と思いました。問題視している人がこんなにいる、ということを可視化。すると社会はその問題に、それなりに真摯に向き合わざるをえなくなる。それってけっこう社会を変えていると思うのです。政府の行動をいま変えることはできなくとも、です。

2018-04-22 11:35:34
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

本日4/29付けの読売新聞に、津川友介 著『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)への書評を寄せています。信頼性の高い根拠(エビデンス)とは何か、「健康によい」根拠のある食品は何なのか。究極的にまともで、すぐ食生活の改善に使える本です。kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-97844…

2018-04-29 14:24:16
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

この本は、出版界の分水嶺となるべき本です。健康食に限らず、科学に関する本は、まともな根拠を備えて主張せよ、ということ。あまりに「著者独自の説」(根拠は俺の感覚)の本が多すぎる。本屋でまともな本を選ぶのは、すごく難しいんですよ。宝石とゴミが同じような装丁で隣に並んでいたりする。

2018-04-29 14:35:58
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

書評する本を選ぶとき、大切かつ大変なのが、トンデモ本の排除。いかにもトンデモ臭がする本は一瞥して終わりですが、厄介なことに、ある程度読まないとトンデモと分からない本が多い。だから沢山読むのですが、トンデモ本は読んでも得るものが無い。悪貨が良貨を駆逐する前に、良貨を必死に探します。

2018-04-29 14:56:00
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

『究極の食事』からは、著者のトンデモ本への怒りを感じます。「嘘をついて稼ごうとする人」に怒っているわけです。しかしそういう人が溢れているのは健康本に限ったことではない。政治でも経済でも、虚偽答弁とかデータ粉飾とか沢山ある。それへの健全な怒りの大切さを、本書からは痛感しもしました。

2018-04-29 15:14:26
坂井豊貴(経済学のビジネス実装) @toyotaka_sakai

というわけで津川友介 著『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)、いまの時代に読むべき作品です。たんにエビデンスのある健康食の本としてのみではなく、嘘が跋扈する「ポスト真実」の時代において、なお真実を嘘よりも大切にしようとする一つの時代精神の表れとして。

2018-04-29 15:22:02
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