@kaihiraishi先生の進化心理入門1 (聞き手 @myuuko)
@kaihiraishi そうだ、質問です。「今の人間の心は何万年もの狩猟採集時代に形作られたもので~」って説明がありますが、ということは、ヒトという種が誕生したときのヒトの心は今のヒトの心とは随分違ってたけど、その後狩猟採集生活に合わせて進化したよ、って理解で良いのでしょうか?
2010-04-15 16:58:11@myuuko ごめん。さっきの無し。進化心理学(EP)でそういう話をするときには、今の人間=ホモ・サピエンスの心のデザインは、ホモ属が登場した200万年前くらいから、徐々に狩猟採集生活に適応してきたって考えます。ちなみにサピエンスの登場は、諸説あるみたいだけど20~10万年前。
2010-04-15 17:06:45@myuuko だから質問に答えると「ホモサピエンスが登場したときの心」は、現代人と、そう変わってはいないだろう。でもホモ・ハビリスとかエレクトゥスとかとは、違うだろう。という話です。
2010-04-15 17:08:43@kaihiraishi なるほど。つまり、「ホモ・ハビリスやエレクトゥスが狩猟採集を始めたときには、今ほど狩猟採集に適応した心ではなかった」ということでしょうか。
2010-04-15 17:14:31@myuuko 真面目に考えると、種分化にかんする難しい質問なのです。大ざっぱな議論として、ヒト(ホモ属)は200万年前から、ごく最近まで狩猟採集生活だったんだから、そこに適応した心を持っているだろう。いつ適応したのかは分からないけど。という話かと。
2010-04-15 17:18:30@myuuko ホモ属は狩猟採集生活をしていた、という点ではだいたい同意があると思います。その生活への適応っぷりがどの程度だったのか、特に行動様式については、よく分からない。でも「狩猟者」じゃなくてscavengerだったという議論もある。
2010-04-15 17:26:31@myuuko もっとも、サピエンスの登場と、「芸術」が現れるまでには数万年のタイムラグがある(発券されている最古の芸術的遺物で7万年前くらい)ので、その間に大きな変化があったんじゃない?という議論はあります。代表的なところでは、Steven Mithen。
2010-04-15 17:11:11@kaihiraishi それは、「芸術は狩猟採集生活への適応とは独立に進化したかも」ってことですか?「発券」という誤変換に何かを感じつつ。
2010-04-15 17:16:02@myuuko 芸術についてはそうですね。Mithenは、物理的な問題にかんする心(モジュール)、博物的(動植物)な問題にかんする心(モジュール)が分かれていたのが、モジュール同士のやり取りが可能になって芸術が生まれたと言ってます。ああ短くまとめるのは難しい。
2010-04-15 17:20:44@kaihiraishi なぜモジュール同士のやり取りが可能になったのか?ということについては、Mithenは言語の可能性をほのめかしていたような。狩猟採集生活とは、直接には関係しない話。むしろ社会環境への適応の話かと。
2010-04-15 17:23:35@kaihiraishi なるほど。すごい勉強になります。しかし、モジュール同士のやり取りが可能になるってことは、芸術云々だけじゃなく、心のあり方そのものの変化のように思えますね。
2010-04-15 17:29:18@myuuko そうなんです。モジュールのやり取りが可能であるって話を、一般知能の進化とか、抽象的思考の進化という話と結びつけて考えることもできる。でっかい話です。
2010-04-15 17:31:44@kaihiraishi そんな大きな変化が数万年で可能なか?って疑問を持つくらいでっかい話ですね。人の心のうち、一部は前種から引き継いだもので狩猟採集生活への適応で説明され、一部は数万年前に進化したものでモジュールのやり取りで説明される、というイメージで合ってるでしょうか。
2010-04-15 17:44:42@myuuko サピエンスが登場したのが20万年くらい前として、芸術が登場したのが10万年前くらいだったとすれば、10万年。「モジュール同士のやりとり」って程度の変化は可能だったのかもしれない。とMithenが言っていたかどうかは覚えていないのですが。
2010-04-15 17:52:14@myuuko ちなみにMithenはネアンデルタールでは、モジュールのやり取りはなかったんじゃないか(芸術はなかった)、とThe prehistory of Mindでは言っています。でもネアンデルタールが使っていたらしい笛が見つかってるんですよね。音楽は他の芸術と違うのか?
2010-04-15 17:53:32結局「歌うネアンデルタール」を読んでいるんですが、ちょうど「ネアンデルタールの笛」の所にたどり着きました。Mithenはそもそも「笛」であることに否定的。曰く「クマの噛んだ跡だっていう研究もあるし、そもそも両端の骨組織が残っていて、空気通らないし」。とのこと。
2010-05-26 10:51:35昔みた「ネアンデルタールの笛」の写真には、等間隔に刻まれた溝があって(例えば http://ow.ly/1PTYL )、「これって象徴的思考の証拠じゃ?」と思っていたのだけれど、どうも溝付きと溝なしの写真がある。例えば http://ow.ly/1PU20 とか。ううむ。
2010-05-26 10:57:22あ石とか棒とかでリズムを取ったりといったことはしていただろう。とMithenは書いているので念のため(誰に向かって書いているのやら)。骨を加工して楽器にすること(=博物的知能と社会的知能の連携)は、認知的流動性のなかったネアンデルタールでは難しかったんじゃない?という議論です。
2010-05-26 11:01:51@kaihiraishi ということでMithenはThe Singing Neanderthals(スペル?)という本を書いています。が、途中まで読んで挫折中。歌と音楽から言語の起源を探るというスリリングな内容なのに。
2010-04-15 17:55:43@kaihiraishi 最近音楽の話を聞いた気がするのですがなんだったか思い出せません。言語の前段階だ、という話だったような。しかも進化じゃなく言語学習の文脈で。
2010-04-15 18:03:53@myuuko Mithenの音楽~言語の話は、Wrayの仮説に寄るところが大です。僕が読んだところまでではそうだった。「単語」を並べて「文」ができたのではなく、「文」が分節化されて「単語」が生まれたという、かいつまんで言うと、そういう話。専門家の指摘が待たれる。
2010-04-15 18:07:52@kaihiraishi The Prehistory of Mind、お金と気力があれば読んでみます。The Singing Neanderthalsは日本語訳出てますか?なんか「歌うネンダルタール人」って聞き覚えが。
2010-04-15 18:11:05@myuuko どっちも翻訳あります。「心の先史時代」「歌うネアンデルタール」。ちなみに補足事項として、ネアンデルタールはホモサピエンスのご先祖さまではなく、同じ時代を生きていた、別の種のヒトてtのが、今の多数派の意見だと思います。もちろん異を唱える人もいるけど。
2010-04-15 18:14:48