エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~7世代目・その8~

白の錬金術師の反撃が始まる ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ
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まとめ 【目次】エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話(#えるどれ) 人間とエルフって寿命が違うじゃん。 だから女エルフの奴隷を代々受け継いでいる家系があるといいよね。 という大長編ヨタ話の目次です。 Wikiを作ってもらいました! https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 21674 pv 167 2 users

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まとめ エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~7世代目・その7~ 白の錬金術師の反撃がはじま…はじま… ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ 6415 pv 7

以下本編

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ この物語はエルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジー。 今は七代目キージャの話。黒の繰り手。影の国の縫匠。 愛しい奴隷のために美しい衣装をあまた縫い上げる。

2019-12-29 16:42:11
帽子男 @alkali_acid

キージャの目下の悩みは、影の国唯一の奴隷であるダリューテを所有しているのが、父たる黒の料り手ダウバであること。自分のものにしたいのに親が邪魔。 でもキージャはダウバのことも大事なのだ。 「父様!はようダリュをこなたに譲ってくりゃれ」 「んだか」 「なれど父様が死ぬのは嫌じゃ!」

2019-12-29 16:44:20
帽子男 @alkali_acid

無理難題である。 奴隷には呪いがかかっている。 代を重ねるごとに強まる呪い。奴隷は呪いによって魔法の指輪とつながっており、指輪をはめたものが主人として意のままにできる。便利だ。 欠点もある。指輪を外すと主人は肉の器、つまり体と霊気、まあ魂のようなものが離れ、ありていに言うと死ぬ。

2019-12-29 16:47:36
帽子男 @alkali_acid

要するにいちどに奴隷を所有できる主人はひとりだけ。 最近はやりのシェアオフィスやシェアハウス、カーシェアみたいな、シェアスレイブは、残念ながらできないのだ。 何とか融通を利かせてほしいところだが、奴隷の方も厳しく、指輪をはめたものでなければ主人とは認めない。

2019-12-29 16:53:17
帽子男 @alkali_acid

「お前ならば、私のような生き腐れよりは、ずっとよき伴侶を得られよう。以前話していた朽縄の舌なる男はどうしている」 「朽縄の舌めはこなたを置いて出ていったのじゃ!腹の立つ男じゃ!でもまた戻ってくると。次はダリュにも会わせるぞ!ぺちゃくちゃ喋るばかりが能だが悪くはない」 「面白い」

2019-12-29 16:55:41
帽子男 @alkali_acid

キージャは父親と奴隷にごねながらも毎日めまぐるしく働いていた。 ありとあらゆる靴や服や帽子や手袋や靴下や水着や寝間着や緞帳や絨毯や、布巾や寝具やもろもろを仕上げていった。

2019-12-29 16:57:19
帽子男 @alkali_acid

ひとりでも相当な量の仕事をこなしたが、助けもあった。 蜘蛛だ。説明しそびれていたが影の国は、鬼だの竜だの狼だの蝙蝠だの巨人だの黒小人だの亡者だの、ありとあらゆる魔性が棲みついている。 その中でも上半身が鬼、下半身が蜘蛛の恐るべき一族は獰猛さも知恵も技巧もずば抜けている。

2019-12-29 16:59:14
帽子男 @alkali_acid

キージャは小さい頃、蜘蛛の一族のもとで扶育を受け、またみずからも糸を繰り紡ぎ織り縫う技に長けていたから、親しみがあった。 そもそもキージャとは暗黒語で蜘蛛の意味である。 蜘蛛族もキージャを慕い、一部は影の国をとりまく外輪山やはるか西の闇の森からも集まって来た。

2019-12-29 17:00:52
帽子男 @alkali_acid

黒の繰り手が、外国(とつくに)どころか魔法の力ではるか異界を逍遥してまで学んだ麻綿の作付や紡績、機織、染付、裁縫といった業(わざ)を、喜んで吸収し、分担して次々に服飾を生み出していった。

2019-12-29 17:03:23
帽子男 @alkali_acid

黒の癒し手ナシールの医療の技 黒の歌い手ラヴェインの音楽の技 黒の鍛え手マーリの工芸の技 黒の渡り手オズロウの航海の技 黒の料り手ダウバの料理の技 これらに加えて新たに服飾は影の国の誇りとなった。

2019-12-29 17:06:05
帽子男 @alkali_acid

最もキージャは評判など構いつけない。ただ作った側と着る側の双方が満足ゆくものをしあげればよいのだ。 すっかり痩せて目もくらむほどの美貌となった父ダウバの採寸をし直しながら、次にしたてる一着に思いをはせ、やがてうつつに返る。 「父様。もっと食べねばならぬ」

2019-12-29 17:08:54
帽子男 @alkali_acid

「だども、痩せとった方がキージャの服が映えるだ」 「太った父様が好きじゃ!恰幅のよい男子(おのこ)にこそふさわしい衣は千も万もあるのじゃ!」 「オラ、細身に合うキージャの服が好きだ。薄焼菓子ちゃんと並んでもかっこええだど」 「むむむう!!」

2019-12-29 17:10:27
帽子男 @alkali_acid

細いおとがいに、たわわな乳房、くびれた腰、張りのある尻を持ち、娘にしか見えぬ息子は、しかし父親の肩を測り直して唇を尖らせる。 「なれど、父様の宿す竜の力は、腹を満たしてこそ十全。今の父様は本来の力の万分の一も振るえぬではないかや」 「ええだ。もうすぐ平和になるかもしんねえだ」

2019-12-29 17:12:35
帽子男 @alkali_acid

「朽縄の舌が説く西方との和義かや?たやすくあるまいぞ。朽縄の舌もみずから述べておった。平和とは一朝一夕になるものではないと。不断に努め折り合ってどうにか建てるものと」 「んだ。だどもオラ、朽縄の舌の言葉だけ考えとるわけでね…西方にはほかにも立派な騎士だの何だのおるだで」

2019-12-29 17:18:52
帽子男 @alkali_acid

「騎士かや?」 「んだ。騎馬の国のデルーヘナさ優れた騎士だ。巧みに命さ奪うもんだ」 「デルーヘナ。なぜ知っておるのじゃ」 「影の国にも間者さおるだ」 「間者かや?面白そうではないか。こなたにも詳しく教えよ!」 「知らんでええだ」

2019-12-29 17:22:09
帽子男 @alkali_acid

採寸が終わると、ダウバは昔からの癖でキージャを向かい合った格好のまま膝にのせる。 息子は機嫌よく父親の首に腕をからめ、豊かな乳房を玲瓏の面差しに押し付けると、しばらく身をこすりつけてから告げる。 「父様。こなたに隠し事をしてなはらぬ」 「済まねえだ」

2019-12-29 17:24:30
帽子男 @alkali_acid

「死んではならぬ」 「心配せんでももう、みずから命さ絶つつもりさねえだ。じっさまやおっどおさ犯した過ちさ繰り返さねえだ」 「なれど…何も食べぬのが…気にかかるのじゃ」 「キージャ。オラ、薄焼菓子ちゃんさ譲るだ」 「!!?まことかや?」

2019-12-29 17:26:20
帽子男 @alkali_acid

「んだどもオラと薄焼菓子ちゃんさ、指輪がつないどるだで、ひとまずは貸すちゅうことにするだ。んで、オラさちょこっと指輪さどっかにやる方法さ探してくるだ」 「指輪がなくてはダリュの主となれぬ!」 「主でなくてもええでねか」 「何を言うておるのじゃ?」

2019-12-29 17:28:29
帽子男 @alkali_acid

「キージャなら薄焼菓子ちゃん…ダリューテさ、指輪さなくても友達にも女房にもできるだで。それとも奴隷と主人でなくては不安だか?鎖と枷でつながねばそばに留めておけねえだか?」 「…むむ!むうう!!いいや!こなたは指輪などなくてもダリュを我がものにできるのじゃ!」 「んだか」

2019-12-29 17:30:50
帽子男 @alkali_acid

ダウバは莞爾としてまたキージャを抱きしめた。平らな胸と円かな胸が重なる。 「おめは指輪なぞなくても影の国も薄焼菓子ちゃんもうまく世話できるだど…蜘蛛さおめの味方だ…知恵深ぇ連中だで…きっとおめの役に立つ」 「父様もおるのじゃ」 「…そだ!おめに宴さ張るだ。とびきりの料理さ作るだ」

2019-12-29 17:33:49
帽子男 @alkali_acid

「こなたは晴れ着をこしらえるぞ!父様とダリュとこなたの分を!」 「ええだな…オラ達三人だけで邪魔されねえとこでやるだ…巨釜の中でどうだべ」 「巨釜の中?あそこに入るのか?狭くはないか」 「案外広ぇとこだど」

2019-12-29 17:35:12
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