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2020年2月2日

「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」レビュー 『最後のジェダイ監督ライアン・ジョンソンが込めた意図とは』

「ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」のレビューです。ネタバレあり
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

#ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密」の感想を。 今作の監督・脚本は「#スターウォーズ #最後のジェダイ」で全世界で盛大に叩かれた(とあえて言い切る)ライアン・ジョンソンである。 pic.twitter.com/77py4FGqYU

2020-02-02 06:21:14
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

まずあれだけの大作、バッシングの後これだけ早い新作に感心した。普通の監督なら良くも悪くもクールダウン期間を設けるところ。 しかも批評面、興行面で成功。映画本編も噂に違わぬ面白さ。大したものだと思う。 (画像は米大手レビューサイト「ロッテントマト」のスコア。左が批評家票、右が観客票) pic.twitter.com/14rXhntQFb

2020-02-02 06:21:16
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

本作は大変早撮りで予算もそんなにかかってないらしい。エンドロールも最近のハリウッド映画にしてはかなり短い。 内容は至って古典的なミステリー作品。古風さを前面に押し出したのが特徴か。 アカデミー賞では脚本賞にノミネートされている。

2020-02-02 06:21:16
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

※ここからネタバレあり。ミステリー作品なので当然無知識での観賞をお勧めします※ 確かに脚本がうまい。犯人当てミステリーといえば、通常は探偵が全編を通し事件の全容を洗い出し容疑者達を追い詰める。しかし本作はその構造は大枠ではあるものの、そうした構図は取っていない。

2020-02-02 06:21:16
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

本作の主人公はアナ・デ・アルマス扮する「マルタ」という移民系の女性。被害者と懇意にしていた彼女は成り行きで探偵役のダニエル・クレイグ扮する「ブノワ・ブラン」の相棒(つまりワトソン役)になる。 pic.twitter.com/C1Mkjv0UeN

2020-02-02 06:21:18
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

本作は開始早々いきなり容疑者達の取り調べから始まる。ここは登場人物紹介も兼ねていて、大勢の容疑者の特徴付け、それぞれから見た事件当日の様子の回想と取り調べ場面のシームレスな交錯等、脚本と編集が本当に見事。普通なら混乱しそうなところが、とてもすんなり入り込める。 pic.twitter.com/J5STDRptgl

2020-02-02 06:21:19
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

本作は劇的アイロニーが非常に上手く使われている。劇的アイロニーとは「登場人物と観客の知識格差」である。要は「志村うしろうしろーということ。観客はスクリーンに映される全ての情報を知っているが、作中の人物は知らない状態。 この冒頭の「取り調べ」で、容疑者達は大半がウソをついている。 pic.twitter.com/Ofher6mNBk

2020-02-02 06:21:20
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ここの演出も面白い。最初は並行して刑事の事情聴取と全員の事件当日の行動が回想されるが、この「ウソ」の場面になると少し長い回想になり、被害者と「ひと悶着あった」ことが観客にだけ提示される。 回想が終わると容疑者の顔のアップ「…エヘヘッ、なんもないっスよw」みたいな態度を取る。

2020-02-02 06:21:20
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

それが全員分続くので笑ってしまう。そして最後にマルタが登場し、ブランが既にそのウソを見破ってることがわかる。で、彼女も同じく取り調べと回想が入るだが、実は彼女自身が「犯人」だということが映画序盤、早々に判明する。 畳みかけるような「ウソ」の連発の末に開始早々ツイストが入る。 pic.twitter.com/MxKMjKzrzN

2020-02-02 06:21:22
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この「ウソ」もやはり観客(とマルタだけ)に明かされる。マルタは探偵ブランにそれがバレないよう、捜査に同行しながら何とか隠蔽工作を計ろうとする。 最初はいきなり取り調べが始まったので『オイオイあと二時間なにすんだ?^^;』と思ったらこういうことである。

2020-02-02 06:21:23
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

つまり作中の関係としては協力関係にあるのだが、ドラマツルギー的にはこの2人は「敵対者」なのである。前半は「主人公兼容疑者」のマルタと、「探偵」ブランの水面下での対立、攻防が軸。劇的アイロニーを上手く活かした構図と単純な謎解きに終始しないコンセプトが面白かった。

2020-02-02 06:21:23
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

事件の構造自体は分かってみればシンプルなもの。よくある「二重すれ違いトリック」である。思惑の違う2人の行動が少しこんがらがった結果を招いてしまっただけの話。 行動を共にする探偵と犯人の水面下の攻防というのもミステリーでは昔から散々使われてきた構造ではある。

2020-02-02 06:21:23
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

特にミステリーに詳しくない私でも「古畑任三郎」で散々見た構造だなということはわかる。 この後一応「本当に善良な人物であるマルタが犯人なのか?」という軸と、事件当日のいくつかの引っかかりから「本当は何があったのか」という軸で物語は展開する。 pic.twitter.com/xs6DcS2G7d

2020-02-02 06:21:24
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

脚本自体とてもよく出来ているが、注目したいのは裏テーマだ。マルタは「移民系」で母親は不法入国した経歴がある。そんなマルタに、富豪一家は上から目線で『今まで尽くしてきてくれたから面倒みるよw』と声をかける。 しかし富豪ハーランの遺書により遺産の全てをマルタが相続することになる。

2020-02-02 06:21:25
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この家族は移民に差別的であり、立場が逆転した途端牙をむく。これは勿論トランプ政権と移民問題を暗に示唆したものであろうことは容易に想像がつく。 しかし私が本作に抱いた疑問と違和感はもう一つある。『なぜライアン・ジョンソンがこの時期にこんな作品を出してきたのか?』である。

2020-02-02 06:21:25
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

企画自体は最後のジェダイの遥か前からあったものらしいのだが、あの話題作の後にこの小粒な作品。何かあると思わざるをえない。 私は本作を見終わって奇妙な違和感が残った。それは「ロマンス描写の圧倒的な欠如」である。 pic.twitter.com/cBEj1dviZx

2020-02-02 06:21:26
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

主人公が若い女性で、欲望や因縁が渦巻くミステリーであれば、普通なら多少の性描写があるもの。しかし本作はそういった指向性は例の浮気写真以外一切ない。 この異様な淡白さは何なのかと思う。登場人物は皆とにかく「遺産が欲しい!」「アイツには絶対渡さない!」と捲し立てているのである。 pic.twitter.com/KHlXXO3fS8

2020-02-02 06:21:27
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

通常なら新たに出会った誰かが親密になり、新たな関係性が動き出すという構図がよくある。例えば同じくクレイグ主演の「ドラゴンタトゥーの女」でも女探偵リスベットとそういう描写があった。しかし本作はそうしたものが一切ない。探偵も結構個性が希薄「南部訛りの変人が!」と罵られるだけである。 pic.twitter.com/GCAzEwn0t4

2020-02-02 06:21:29
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

恋愛描写や性描写というのは『新しいモノを生み出す』という指向性がある。一人と一人が出会い二人になり、新しい生活が始まる。そういうことである。 しかし本作は登場人物全員が「アレはオレのモンだ!」と騒ぎ立てているのである。 創造性とは最も無縁な立ち位置にある。

2020-02-02 06:21:29
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

富豪作家ハーランも「自分の遺産をアテにする親族にウンザリだ。自分達の足で未来を切り開いてほしいとハッキリ口にしている。 ここまで書けば大体察しがつくと思うが、これは勿論「スターウォーズを巡る論争」を示唆しているのだろう。 pic.twitter.com/MvL5Tmu6Dr

2020-02-02 06:21:30
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

登場人物全員が「彼の遺産を相続する資格は自分にある!」と捲し立てて「自分こそに正統後継権がある!」といがみ合う。 作中での結論は「唯一良心に従って行動したマルタ」が評価される。面白いのは「故人の作品に関する権利」も譲渡されている点である。

2020-02-02 06:21:31
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

故人は、自分の著作の管理をしている息子に対して「お前には作品の内容にも触らせない」と通告している。となるとマルタは故人が生み出した既存作品の改変権も得たということになる。 これはもう明確にライアン・ジョンソンの「俺の家だ」という「宣言」だろう。 pic.twitter.com/Xs17czdzYo

2020-02-02 06:21:32
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

富豪作家が『血の繋がりや既得権益でなく精神的な繋がりを重視した』という点も示唆的。 ハイエナのように群がる「家族」が何を示唆しているかは自明だろう。 pic.twitter.com/X4J11hTYM5

2020-02-02 07:17:20
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自らの利益を守るために「アイツが殺したことにしてしまおう!」という流れになる。完全に最近のSW界隈におけるライアン及びEP8の扱いと被る。
しかし皮肉にも結局「自殺だった」ということが判明する。マルタは利益等顧みず自らの良心に従って行動した。そしてそのマルタが全てを手に入れ、全てを失った「家族」を見下ろす。
あまりにも痛烈なメッセージだ。

齋藤 雄志 @Yuusisaitou

移民問題を裏テーマにしたかと思いつつ、実は監督個人の「復讐」をテーマにしている。監督自らが脚本を書き上げたオリジナルの「古典作品」。異様に素早い制作、公開。全てがピタっとハマる。 「最後のジェダイ」への評価はさておき、本作で見せた手腕に関しては『参りました』と感服するほかない。 pic.twitter.com/gG1w5tXgTU

2020-02-02 06:21:33
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コメント

コェル @koleru 2020年2月2日
素晴らしいまとめ だけど未見の人は厳禁
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