小池陽慈さんによる「高校生や浪人生のためのテクスト論入門」

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小太刀右京/Ukyou Kodachi @u_kodachi

この一連のツイート、TRPGライター志望者は抑えておくとよいです(もっというとソシュールの基礎は踏まえておくと良い)。ルールとワールドの双方にとって、もっとも大切なことが書いてあります。 twitter.com/koike_youji/st…

2020-01-29 01:17:55
小池陽慈 @koike_youji

#高校生や浪人生のためのテクスト論入門 何人かの生徒に「テクスト論とやらを教えろ」と脅されたので(笑)、ちょっと頑張ってみます。ざっくりとした説明にはなるかと思いますが、そこはあくまで「初学者のための方便」ということで、何卒お許しください…。 かなりのんびりいきます。 連ツイ失礼。

2018-09-28 22:56:02
ということなので、まとめてみました。
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

#高校生や浪人生のためのテクスト論入門 何人かの生徒に「テクスト論とやらを教えろ」と脅されたので(笑)、ちょっと頑張ってみます。ざっくりとした説明にはなるかと思いますが、そこはあくまで「初学者のための方便」ということで、何卒お許しください…。 かなりのんびりいきます。 連ツイ失礼。

2018-09-28 22:56:02
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

*参考文献については、初学者にも読めるようなものを中心に、最後にまとめたいと思います。 *ミスや間違い等がございましたら、願わくは、優し〜くご指摘くださると嬉しいです…。

2018-09-28 22:56:04
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

まず〈テクスト=記号の連なり〉と理解することが大切です。ただここで言う「記号」は、一般的に想像されるような、「以下の記号から一つ選べ」とかの「記号」とは、意味が異なります。僕らが一般的に想像するような「記号」を「符号」とするなら、では「符号」と「記号」とは、どう違うのでしょうか?

2018-09-28 22:56:05
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

(「符号」も「記号」という概念に包摂されるのですが、ここは便宜上、両者を区別して説明します)

2018-09-28 22:56:05
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

まずは「符号」。 これはまぁ、「便宜的に作られた、何かを表すための簡略化された目印」程度の意味で捉えておいてください。算数の〈+-×÷=<>〉的な。 では、それに対する「記号」とは…? それを理解する上での典型例が、僕たちが普段からバンバン使いまくっている、「語」ということになります。

2018-09-28 23:21:49
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

では、「語」はどのような構造を持つものとして理解されるのでしょうか? 例えば、今あなたが、いや、あなたの耳が、〈k-a-n-i〉という〈音〉をキャッチしたとしましょう。するとあなたは即座に、〈蟹〉の〈イメージ(=概念)〉を、その〈音〉から解釈したはずです。

2018-09-29 07:47:54
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

すなわちここにおいて、〈k-a-n-i〉という〈音〉と、〈蟹〉の〈イメージ(=概念)〉が、一つのまとまりとして結合したことになります。端的に言えば、この、〈音〉と〈概念〉とが結合したものが「語」であり、それを言語学者のソシュールは、「記号」の典型的なモデルとして考えたわけですね。

2018-09-29 07:47:55
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

ここでちょっと、用語の整理をしましょう。 確認したように、「語」をモデルとする「記号」は、〈音 + 概念〉という構造を持ちます。 もう少し詳しく説明するなら、「音」はなんらかの「概念」を「意味する側」、逆に「概念」は、そのような「音」によって「意味される側」ということになるはずです。

2018-09-29 12:01:02
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

まとめると、【記号】とは 〈音=意味する側〉と〈概念=意味される側〉の結びついたもの となりますね。 ただここは、もうちょっと詳しく用語を整理しておきたい。ちょっとめんどくさい説明が続きますが、ここをきちんと理解しておくと、後々かえって楽になるので…。

2018-09-29 12:01:02
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

まずは、【意味する側】の同義表現を列挙します。 【意味する側】 ‖ 【記号表現】 ‖ 【能記】 ‖ 【シニフィアン】

2018-09-29 15:57:11
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

このうち【能記】は、訓読すると「能(よ)く記す」となり、「意味する」という「能動性」を表しているとわかります。 また、【シニフィアン】も、フランス語の「〜を意味する」という動詞の〈現在分詞形〉なので、やはり「意味する」という「能動性」を前提とする表現であるとわかりますね?

2018-09-29 15:57:12
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

次に、【意味される側】の同義表現を列挙します。 【意味される側】 ‖ 【記号内容】 ‖ 【所記】 ‖ 【シニフィエ】

2018-09-29 20:40:55
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

【所記】の説明から。 「所」という漢字は、下に続く動詞を名詞節としてまとめる働きを持っています。かつ、訓読する時は下から上に返読。例えば、 所愛 → 愛する所 というように。 大切なのは、この「所」は、基本、下に続く動詞の〈対象〉を意味するという点です。

2018-09-29 20:40:57
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

つまり「所愛」は、「愛すという動作の対象」を意味するわけですが、それは要するに、その存在が、「愛す」という行為において「受け身」の位置にあることを表すことになります。すなわち「受動性」ですね。

2018-09-29 20:40:58
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

話を【所記】に戻しましょう。 もうおわかりですね? 【所記】は「記すという行為の対象」を意味する、すなわち「記す」という行為において「受け身」の位置にあるものを指す概念なのです。したがって、【意味される側】を表す用語として考案されたのですね。

2018-09-29 20:40:59
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

そして【シニフィエ】ですが、これは、フランス語の「〜を意味する」という動詞の〈過去分詞〉。【シニフィエ】の【エ】は、〈過去分詞〉を作る要素なのです。したがってこれを直訳すると、【意味される側】となるわけですよ!

2018-09-29 20:41:00
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

まとめましょう。 確認したように、「語」は〈音/概念〉の結合したものを言うわけですが、それを〈意味する側/意味される側〉と抽象化した際、そこに「記号」という考え方が成立するわけです。ここからは、【意味する側】は【シニフィアン】、【意味される側】は【シニフィエ】と表記していきます。

2018-09-29 20:50:56
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

さて、ここで考えたいことがあります。 先程、〈k-a-n-i〉というシニフィアンと〈蟹〉というシニフィエとの結合について触れましたが、なぜ僕たちは、〈k-a-n-i〉というシニフィアンから〈蟹〉というシニフィエを即座に連想することができるのでしょうか?

2018-09-30 08:40:59
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

端的に言えば、それは僕たちが、「〈k-a-n-i〉というシニフィアンは〈蟹〉というシニフィエと結びつく」というルール、あるいは法則を知っているからです。そしてこのように、シニフィアンとシニフィエを結びつける法則のことを、【コード】と呼びます。いわば、両者を繋ぐ接着剤のようなものです。

2018-09-30 08:41:00
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

つまり僕たちは、なんらかのシニフィアンを感知した際、無意識になんらかのコードを参照し、そしてなんらかのシニフィエを、そこに【解釈】しているわけです。この一連のプロセスによって、そこに「記号」が現象しているのですね。

2018-09-30 08:41:00
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

そこで考えたいのが、「あるシニフィアンに対してシニフィエを解釈しようとする際、そこに参照されるコードは、必ずそのコードでなければならないのか?」という問いです。 答えは、「否」です。

2018-09-30 12:51:29
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

例えば〈k-a-n-i〉というシニフィアンに〈蟹〉を解釈する際、その人は無意識に、〈日本語というコード〉を参照しているはずです。ところが同じ〈k-a-n-i〉というシニフィアンでも、〈アイヌ語〉をコードとすれば、〈私〉という一人称代名詞を意味するようになる。

2018-09-30 14:05:07
小池陽慈『"深読み"の技法』 @koike_youji

(実はアイヌ語の「kani」は「ka」にアクセントが置かれるので、事例としてはふさわしくありません。あくまでわかりやすさを意図しての誇張的な方便ですので、どうかお許しください)

2018-09-30 14:05:08
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