2020年2月17日

審神者の存在不確実性による世代間格差についての考察

SF的な乗っ取り見習いの考察
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2215年くらいの新人審神者見習いの話

さうす @sa__za_n_

審神者見習いの会話を聞いた。 「良いよなあ。月の悲劇の前の審神者って存在揺れしてないんだろ?」 「でもそもそも過去から要請した審神者能力者って、改竄度C以下でしょ?」 「だから歴史改変の危機感が薄いってのは問題だけどさ。そりゃ、変えても消えないもんな。気にならないわな」

2020-02-16 20:46:48
さうす @sa__za_n_

よくわからない話をしている。三人ともまだ若く、服装から見るに“現代”の生まれだ。俺は元号が昭和の時から来たから、彼らは俺といるときには気を遣ってそういう俺にとっての未来の話はしない。だから、悪いとは思うが盗み聞きすることにした。

2020-02-16 20:46:48
さうす @sa__za_n_

「同期の子に『歴史を守る理由が飲み込めない』って言われたんだよね。その子、よく聞いたら和賀から呼ばれたんだって。そりゃそうだよね。月の悲劇の前だもん。私たちと違って、存在揺れしてない。何かあっても、歴史の修正力が働くところだもん」 和賀──自分のいた昭和から何個か先の年号だ。

2020-02-16 20:46:49
さうす @sa__za_n_

「歴史を変えようとしたらなんであんなに大きな罪になるか、わかんないよねえ」 「……修正力は僕らには働かないからね」 「コウちゃんのことも、マリちゃんのことももう誰も覚えてないもんねえ」 「この力がなかったら、俺らも覚えてなかったろうさ」

2020-02-16 20:50:14
さうす @sa__za_n_

2150年以降生まれの審神者と、それ以前から呼ばれた審神者で、歴史修正主義者に対する解像度が違う話。若い子の方が結構ヤバい世界から来てるのでピリピリしてるけど、古い時代から来た審神者はのんびりしてる。でも互いに尊重することで、いい影響を与え合ってるとかいないとか。

2020-02-16 20:53:00

現代(2205年)の人間は度重なる歴史修正主義者との攻防により若い人ほど存在が不確かだという話。

さうす @sa__za_n_

『本丸乗っ取り』や『呪具』などで問題になる見習いは大概が2154年以降の生まれ。存在揺れと呼ばれる不確かな歴史の上に生まれ育ち、親友や親兄弟、身の回りの人間が消えたりすげかわったりするのが日常なので、平成や昭和生まれの審神者には理解しがたい闇がある。

2020-02-16 21:04:51
さうす @sa__za_n_

転向者は論外とはいえ、見習いたちの存在が不確かであることへの闇は深い。高官の一人娘、一人息子が甘やかされすぎだという意見もある。だが、その子が本当に一人っ子だったのか疑問が残る。ある見習いの少女の話をあげよう。

2020-02-16 21:04:52
さうす @sa__za_n_

このインタビューの動画を見たことがある人もいると思う。通称をインタビューガール。このインタビュー映像の中にしか存在が確認できない少女として、有名だ。 彼女は見習い制度が始まって直ぐの世代間格差是正のためのインタビューに応じた、とされている。

2020-02-16 21:55:23
さうす @sa__za_n_

──今の師匠で、何か不満なことはありますか? いいえ、先生はいつもとてもよくしてくれてます。ああ、でもただ、先生はいつだったかな月の悲劇の前より百年くらい前の生まれなんです。能力と霊力から召号されてらっしゃる方で、存在揺れは言葉さえ知らないと思います。……あなたもですよね?

2020-02-16 22:02:26
さうす @sa__za_n_

──わかるものなんですか? あはは、だって先生と同じようにゆっくり喋ってらっしゃるから。私と同世代くらいの人って、みんなもっと早口なんです。一分一秒が惜しいっていうんですかね。 ──そうなんですね。私は平成から呼ばれてます。 わ、二百年くらい前ですね。先生より昔だ。

2020-02-16 22:02:26
さうす @sa__za_n_

──やはり、違いますか。 ええ。『弟を返せ!』っていうニュース動画知ってますか? 2157年に議会に乗り込んで喚き散らした人。 ──日本で初めてタイムパラドックスシンドロームが確認された事件ですね。 そう! 今ではTPSは審神者の力の発露ってわかりましたけど、当時はわかってなかった。

2020-02-16 22:06:09
さうす @sa__za_n_

私、柳井原議員の一人娘なんです。でも、初等学校五年生になるまで、お姉ちゃんがいました。 ──え。 父さんも母さんも覚えてません。アルバムに写真もありません。でも確かに、姉のことは覚えているし、姉と喧嘩したり遊んだりしてもらったことを覚えてます。 ──それが、TPSなんですね。

2020-02-16 22:10:02
さうす @sa__za_n_

そうです。同年代の審神者はだいたいそんな経験があります。友達がすげ変わったことに気がついてしまったり、兄弟がいなくなってたり。次は自分じゃないかって怖さがある。自分の連続性が不確かなんです。悲劇以前の人はそんなことないですよね。死ぬかもしれないとは思っても次の瞬間消えたりしない。

2020-02-17 00:29:30
さうす @sa__za_n_

だから、早く審神者として独り立ちしたい。早く自分の本丸が欲しい。本丸は時空が隔離されてるので、たとえ元の時間で私がいなくなっても、本丸の主として確立していれば、消えないんです。もしかしたら、そういう焦りがあるから、暴挙に出てしまう子もいるのかもしれない。

2020-02-17 00:35:09
さうす @sa__za_n_

──近親者がいなくなるということは、自分の直系が改変されたということだからですね。 はい。審神者になる一人っ子は親から溺愛されます。だって、次の瞬間にいなくなるかもしれないから。よくないのは分かってるんですけど、親の気持ちもわかってしまうから無碍にできないんですよねえ。

2020-02-17 00:35:09
さうす @sa__za_n_

──お互いにそういう事情があると理解出来れば、円滑に進みそうですね。 そうですね。私たちの焦りや恐怖みたいなのを分かってもらえれば少しでも過ごしやすくなるかな、と思います。 ──今日はありがとうございました。 こちらこそありがとうございます。早く立派な審神者になれるよう頑張ります。

2020-02-17 00:36:46
さうす @sa__za_n_

ご覧いただいた通り彼女はしっかりとした受け答えをした。議員の名前もある。だが当時そのような名前の議員は存在しないのだ。なぜこの記録だけが改変されずに残ったのかはわからないがこのインタビュアーは後にこのインタビューを何度も取り上げ見習いと審神者の世代間の意識の格差是正を呼びかけた。

2020-02-17 00:40:19
さうす @sa__za_n_

見習い制度初期の混乱を乗り越えたのはこのインタビュアーの功績が大きい。その所為もあったのではなかと考えられている。“インタビューガール”は歴史改変の最もはっきりとした被害者であり、もっとも有名な消失者の一人である。今年で歴史修正主義者との紛争が始まり三十年がたつ。

2020-02-17 00:45:43
さうす @sa__za_n_

月の悲劇の後、我々の存在は揺れ続けている。知覚できないだけで、今この瞬間にも人口は変動している。現代に生きるというだけで、存在の不確定に晒されているのが現状である。超刹那主義や、無常主義が現代に生きる若者の殆どの思想である。

2020-02-17 00:45:44
さうす @sa__za_n_

お互いを理解し、尊重する事で、対歴史修正主義者との強固な刃となるよう、審神者は尽くさねばならない。 ──とかいう、昔から呼び込まれた審神者への講習があったりなかったり。

2020-02-17 00:48:45
さうす @sa__za_n_

『歴史を守らねばならない』っていうのがあれだけ強固になってるっていうのは多分何百年単位の昔を守ろう!ってところだけじゃなくて今2205年を生きてる人の命を守る事でもあるんだろうなと思うわけですよ。現存する刀であればあるほど修正により存在が不確定になって消えてしまう人を知ってるのでは。

2020-02-17 00:51:09
さうす @sa__za_n_

あと、『歴史修正主義者』の修正ってところに、テロリスト特有の“正当化するための正義”を感じる。歴史を修正して、もともと存在したはずの大切な人を取り戻す、みたいなのが大元の思想なのでは? それが近い歴史ではうまくいかなくなったから百年単位で遡って変えようとしてるのでは?

2020-02-17 00:53:11
さうす @sa__za_n_

元々は大切な人の命を救う為の“修正”を違法に行っていたのが、どんどん正義が暴走し、総括とかの話になっていき、コントロール不能で今の政府の転覆を目指すようになってしまったのでは?修正したために消えた人を修正して、歴史を守ったら修正された世界でしか存在しない恋人が消えたとか。

2020-02-17 00:55:30
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コメント

さうす @sa__za_n_ 2020年2月17日
自分の小説だと、『山姥切歎異』の審神者は現代生まれかな。
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