
ストレイトロード:ルート140(47周目)
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Rista_Bakeya
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文学フリマ広島で初頒布となった「ルート140 (5)」をboothに追加しました。雨傘の表紙が目印。 内容はいつもの旅日記です。 ストレイトロード ルート140 | 化屋月華堂ストア bakeya-gekkado.booth.pm/items/764325 #booth_pm
2020-02-27 20:09:32
荒廃した世界の魔女は箒に乗らない。お供が運転する車で各地を渡り歩く。 そんな「旅の話」としての「ストレイトロード」に感想をいただきました。ありがとうございます。 そう、これは道中の話。車に乗って大地を飛ぶ話なのです。 twitter.com/new29socks/sta…
2020-02-13 18:52:57
@simca_ac @H_tousokujin @ai_suna529 @Lang_est @HanaOniTiriyuku @jing_boe_quing @shibaigoya @SoragotoShinsha ストレイトロード -the first junction-/Rista Falter 通販はこちら 化屋月華堂ストア bakeya-gekkado.booth.pm #又旅本 @Rista_Bakeya pic.twitter.com/U6hurInVkB
2020-02-13 15:42:11今回の本編
2344までは、「ポケモンの技」の五十音順リストから1音1つ選び、その単語を使って書く、というルールで進めました。
一部例外あり。

この街に滞在するならと学校から届いた宿題が放置されていた。藍は最終日にやっと着手したが簡単には進まない。「お疲れでしたら休まれては」「まだ大丈夫」藍は大袈裟な仕草で欠伸をごまかし、教科書を広げ直した。余程次の旅に宿題を持ち込みたくないらしい。「あなたも眠そうよ」「貴女を待ちます」
2020-01-08 18:52:37
密猟の現場は藍が風に聞いた通りの場所だった。しかし一度は押さえた犯人を僅かな隙に取り逃がし、彼らの特徴を警察に伝えても証拠がないと門前払いになった。「絶対裏に誰かいる」痛み分けの決着に本人は納得いかない様子だが、追撃は思いとどまってくれた。人の身勝手から命を一つ救えた点は事実だ。
2020-01-09 18:53:24
自在に空を飛び回る怪物を地上の砲台が狙う。それを扱う空軍と、金網の外に集う民衆が、全く違う緊張感を胸に青空を見上げる。「撃て!」人類の敵は一度の号令で撃ち落とされた。広がる拍手の中、藍は一人固まっていた。「鳴き声を聞いたの」彼女は日没後にようやく口を開いた。「一瞬助けたくなった」
2020-01-10 19:04:26
突然湧いた煙が視界を覆った。悲鳴と慌ただしい足音の中、私は藍に強く手を引かれ、訳も解らず走らされた。「今のは火じゃない。あっちが逃げるために撒いたのよ」時間稼ぎの煙幕なら足を止めた者に勝ち目はない。下り階段の途中で藍が避難者の列を外れ、窓越しに地表を指した。「あの車、よく覚えて」
2020-01-11 19:17:20
追い風を受けて加速したソリが草の斜面を疾走する。段差から飛び出した時の僅かな浮遊感は一瞬で着地の衝撃に上書きされた。「なんか違う。もう一回やって」藍は目も合わせず指示してきた。私が重い足で急坂を登る間も、下り方向に強い風が続く。飛距離を伸ばす風の当て方を感覚だけで探っているのか。
2020-01-12 18:50:06
「この人たち本当に先遣隊?」藍が会合場所と資料を何度も確認している。テントの色は正しいが、集まった兵士達の表情がおかしい。頼りないのではなく別の意味で。「本隊無視して勝手にやりそうな顔ばかり」小声の懸念を情報が裏打ちする。怪物と因縁のある者が敵討ちの為に集まったような状況だった。
2020-01-13 19:04:02
血気盛んな若者達は噂を信じて山奥の岩場へ向かったらしい。不穏な物音と悲鳴を聞きつけ急行したが、保護した数名は会話もできなかった。「まだ近くにいる」彼らを宥める私の背後で藍が声を潜めた。樹上の巣が切り裂かれ、散った羽毛が肩に乗る。人間が情報を集め移動する間に状況は書き換わっていた。
2020-01-14 19:18:24
広い倉庫の中には箱や廃材が積まれていた。「新しい遊び場ってこれ?」藍の一言ではっとした。一見ただ放置されたようで、よく見ると全てが崩れないよう固定されている。その配置には子供心をくすぐる仕掛けが詰まっていた。荒縄で編んだ網を登り始めた藍を見守っていたら、心地好い風が首筋を撫でた。
2020-01-15 18:48:02
手掛かりの家族写真と背景が一致する場所に、肝心の建物がなかった。ある日一晩で家ごと消えたと近所の老人は言う。「偉いさんの逆鱗にでも触れたのかねえ」温厚な一家の話を私が聞き出す間、藍は土台が掘り起こされた痕跡を眺めていた。「怒って壊すならわかる。丸ごと引っ越しなんて疲れるじゃない」
2020-01-16 19:28:10
ドアを開けた途端、凍える風が車内に吹き込んだ。助手席で眠っていた藍の呻きを聞いて急ぎ外へ出た。閉めたドアに異常はないが、タイヤは氷の破片に覆われ、空気が抜けているらしい。助けを求めようにも街へ続く道は朝靄に隠され、携帯端末に電波は届かない。止まらない身震いは寒さのせいだけなのか。
2020-01-17 21:57:01技名としては「こごえるかぜ」。

宿題を採点する度に疑問が強くなる。藍は勉強が嫌いと言いつつ、落第は格好つかないからと一応は取り組む。だが本当に理解できているのか。「今日の課題ですが」不正解と察した目が潤んだように見えた。「難し過ぎたようなのでもう一度基礎から」「イヤです」いつまでも苦手克服を先送りにはできない。
2020-01-18 18:48:30