梅棹忠夫の知識人観から見た現代日本の構造

人類学者 @ponQ さんが梅棹忠夫『生態史観からみた日本』を読んだ感想。梅棹が指摘した「文化を担う知識人が近代化によって技術インテリ/経済インテリによって為政者としての役割を奪われ、それでいて為政者意識だけは維持しつづける」という日本の知識人の意識構造は現代日本にはどのようにあてはまるかという分析。
4
久保明教 @ponQ

本日の人類学会にはいかず、近所の喫茶店で先日民博の梅棹忠夫展で買った「文明の生態史観」を読む。こういうスケールの大きい・今では査読を通らないだろう考え方の影響を、俺らの世代は公的には全く受けていない。団塊世代が絶縁させたように見えるんだが、こういう断絶は社会学とかにもあるんかな?

2011-06-11 18:09:48
久保明教 @ponQ

絶縁というのはつまり、「人類」なるもの全体を共時的・通時的に俯瞰して捉える視点から分析するという(梅棹・川田から青木保くらいまでの世代にあった)スタンスが放棄された、ということで、その絶縁を行った世代はその経緯と背景と動機をそろそろ後続世代に説明して欲しいわい、死ぬ前に。

2011-06-11 18:20:04
久保明教 @ponQ

「文明の生態史観」に「生態史観からみた日本」という講演原稿があって、ここで梅棹は自身の生態史観にたいする知識人の反応が「日本は今後〜すべき」という文脈に集中したこと、講演もまたそういう文脈から依頼されていることを述べた後、それを逆手にとって

2011-06-11 19:38:49
久保明教 @ponQ

なぜ日本の知識人にとって学問が「日本は今後〜すべき」という実践/政治的・為政者的関心と密に結びついているかを生態史観によって説明するという皮肉の効いた議論を展開する、 つまり、

2011-06-11 19:42:55
久保明教 @ponQ

日本の知識人はもともと政治家と同じグループに属する存在であり、具体的には知と為政をともに担う武士階級から派生した意識をもつが、明治以降二つの立場が両立しなくなり、ある種の為政者意識から政治を語りたがるが実際に政権を担当することはない層として現れてきたものだ、

2011-06-11 19:50:44
久保明教 @ponQ

大雑把な類型論はおいといて、興味ひかれたのはこうした事態が生じた要因の一つが、産業化を通じた政治と技術の密接な連関であり、技術に疎い伝統的知識人ないし文化インテリは政治と連携しながら実社会を動かす役を技術インテリ、経済インテリに独占され、 フラストレーションを溜め込んでいく、

2011-06-11 20:08:26
久保明教 @ponQ

というのが梅棹の見解(1957年)で、こういう「あらかじめ為政を担えないことを前提にした為政者意識」をもつ層は、生態史観でいう第一地域(日本と西ヨーロッパ)に主に生息し、第二地域(その中間にあるユーラシア内陸部)では知識人がそのまま為政者であり政治的実践を主導する傾向が強い、と。

2011-06-11 19:58:44
久保明教 @ponQ

こうした「政治意識にもえた、しかも政治的実践から疎外された知識人」層は空虚な政治談義を居酒屋や喫茶店で繰り返す現代社会における一種の不適応グループである一方、暴走の可能性をはらむ現代社会に対して適度にブレーキをかける役割を果たしている、と梅棹が指摘してるとこだ。

2011-06-11 20:15:57
久保明教 @ponQ

梅棹の大雑把な議論をさらに大雑把に通時へ展開すると、少数の「知識人」から為政へのブレーキや警句としての働きかけという図式で把握できる梅棹棹他「知の巨人」世代、膨大な大卒人口増による「知識人」的構えの一般化を背景にしたオルタナティブな「文化=為政」の夢想とその挫折を担った団塊世代、

2011-06-11 21:36:04
久保明教 @ponQ

と続いてきたようにも見える。人文系の議論を文化的創造性に依拠した「(為政への)抵抗」論に傾倒させてきたのは団塊世代と新人類世代(文化=経済:広告インテリ)の「知識人」の結託だとすれば、それがサブカルやカルスタという形で結実し崩壊するのが90年代末から0年代初頭、

2011-06-11 21:44:28
久保明教 @ponQ

その前後で、技術インテリと「知識人」の境界が次第に壊れ、「文化=技術インテリ」が0年代の「知識人」の主流になる。文化とテクノロジーが同時に語れちゃう局面、つまりネットやアニメを基盤にした「知識人」層、その裾野を形成するのがオタク、その代表例が東浩紀だということになるかもしれない。

2011-06-11 21:52:04
久保明教 @ponQ

@24reverse いやなんか超大雑把な話なんだけどさ、要するにSTSとか人文社会科学系で科学研究に流れてきた連中というのは、俺も含めて文化と為政の関連づけをテクノロジー無視してやろうとする上の世代が馬鹿にしかみえないっていうのがあったと思うんだよね。

2011-06-11 21:57:04
久保明教 @ponQ

@24reverse ただ実際STSは日本とか特に技術=為政インテリばっかだし、東浩紀関係も文化を媒介にして技術=為政インテリ的思考を拡散させてるだけに見える、と。だからむしろハードな科哲的発想を捨象せず、文化_技術_為政の関係を問い直すっていう方向を俺や俺のまわりはとって来た、

2011-06-11 22:06:27
久保明教 @ponQ

ように思える。それがこないだのゼミでの俺と福島さんの対立ポイントだったんじゃねーかな あの人は科哲的思考を分かった上で全否定するハードな技術=為政インテリに見えるから @24reverse

2011-06-11 22:10:26
久保明教 @ponQ

多自然主義(一なる文化、多なる自然)の限界は「一なる文化」の内実が空虚なこと、そうである限り多文化主義の言い換えにしか見えないことなので、 RT “@24reverse: どういった側面から、「ポスト」論を仕掛けるのか気になる。ぶっ飛んだ話なら楽しみ(笑)

2011-06-11 22:21:55
久保明教 @ponQ

「一なる文化」に内実を与える概念をぶち上げ、具体的な事例分析に導入してしまう、という方向を考えてるが、それが適切かはまだわからんという段階だ RT“@24reverse: RT @ponQ

2011-06-11 22:24:40
久保明教 @ponQ

人類学における梅棹的伝統がいつどのように絶縁されたのか、については明日人類学会いったときに関係しそうな世代の人に訊いてみよーっと。

2011-06-12 00:06:43
久保明教 @ponQ

梅棹「日本知識人」論拡張版だが、ちょっと圧縮して話しすぎたぽいので、具体的な話に切り替えてみる。

2011-06-12 00:08:41
久保明教 @ponQ

発端は昨日大学時代の友人と話していたときの違和感。社会学を見限って今はベネッセで働くF村らと飲んでると、あいつらは政治の話をしたがる。一見、梅棹の言う「為政者意識をもつが為政から疎外された知識人の政治談義」に見えるんだけど面白いのは、

2011-06-12 00:16:33
久保明教 @ponQ

あいつらは「政策」に落ちない思想性をもった政治談義(9条廃棄論とか)は全く無意味だと考えてる一方、具体的な政策論を語る知識や評価基準を全くもたず、それを研究続けてる俺に期待するが、ただの政策にもただの思想にも興味をもたず、両者をつなげる方策にも関心なく、そうした一切合切を

2011-06-12 00:22:33
久保明教 @ponQ

今の日本はどうしようもない、というシニカルな視点でまとめて酔いつぶれていく。で、こういう態度は同世代のインドの友人たちと飲んでるときとほんと対極的だ。あいつらは知識人であるが自分らが常に為政を担う可能性を前提に話をする。梅棹の言う第二地域の知識人類型にきっちりおさまってる。

2011-06-12 00:27:27
久保明教 @ponQ

つまり今の「知識人」特に20.30代は政治から疎外されてるだけじゃなく、思想的成分を伴った左翼的な政治性からも疎外されてる(というより説得力を感じない)ということじゃないか。だから経済=為政インテリの振りで自らの思想性を隠蔽しつづける@hkubota1016みたいな戦略もでてくる

2011-06-12 00:37:02