『綴葉』No.385の書評に対する反論

京大生協の書評誌『綴葉』No.385に掲載された、『在野研究ビギナーズ』に対する批判的書評、とうこ「野に在るは賢者か フリーライダーか」に反論しました。『綴葉』はウェブ上で無料でダウンロードできます。https://www.s-coop.net/about_seikyo/public_relations/
7
書評誌『綴葉』 @kyodaiteiyo

『綴葉』2020年3月号(No.385)が発行されています。京都大学生協各店舗にて配布されているほか、京大生協のサイトにてPDFで閲覧できます。ぜひご笑覧ください。 <s-coop.net/about_seikyo/p…>

2020-03-03 17:31:26
書評誌『綴葉』 @kyodaiteiyo

『綴葉』3月号の話題の本棚欄では以下の書籍をとりあげました。 ・平林克己、宮西建礼、岡田裕子著『京大吉田寮』草思社 ・荒木優太編『在野研究ビギナーズ 勝手に始める研究生活』明石書店

2020-03-03 17:35:17
荒木優太 @arishima_takeo

京大の書評誌『綴葉』最新号にて『在野研究ビギナーズ』を取り上げていただきました。特に荒木に対して批判的な評で、当然私は説得されないのですが、取り上げていただいたことは嬉しく思います。ありがとうございます。s-coop.net/about_seikyo/p… pic.twitter.com/tnCuPBg5nP

2020-03-03 17:51:01
拡大
荒木優太 @arishima_takeo

評者を説得できるとは思いませんが、少し反論してみましょうか。既存の学問にどう貢献するかの問題意識が希薄と批判されてます。学者の本を買ったり、本を読んでネットにレビューを投稿するのは、「貢献」ではないのでしょうか? この方の書き振りからするとどうやら違うようです。

2020-03-03 18:10:48
荒木優太 @arishima_takeo

では、なにをしたら「貢献」になるのでしょう? お金をくれれば、私だって人々のために働いてもいいですよ。でも、くれないんじゃないでしょうか? なにを期待されているのかよく分かりません。

2020-03-03 18:13:15
荒木優太 @arishima_takeo

もう一つ。在野研究者を評価する人は「国費」を通じて育成されているそうです。さて、私が自費出版した『小林多喜二と埴谷雄高』は官学者の誰かが褒めて推してくれたりしたのでしょうか? または同人誌から出発した朝里樹さんの怪異辞典は?

2020-03-03 18:14:41
荒木優太 @arishima_takeo

この世界には大学教授が積極的に取り上げないけどもちゃんと続いている小規模サークルや査読なしの調べもの文章があります。そしてこれは文系不要論の歴史などよりもずっと古いものです。自分たちが慣れ親しんだ「学問」とかけ離れているという理由で、それらを無視することは傲慢だと私は思います。

2020-03-03 18:16:55
荒木優太 @arishima_takeo

学問知は決してアカデミズムの作法にだけ従って生まれてきたのではありません。拙稿の中でアカデミズムとは異なる制度、ジャーナリズムとサークルイズム(鶴見俊輔)に言及しているのは、それに自覚的になって欲しかったからです。

2020-03-03 18:21:06
荒木優太 @arishima_takeo

私は所謂批評の世界に比較的近い方だと思いますが、現在の近代文学研究は、曖昧模糊な批評からの脱却、その洗練によって価値づけられることがあります。けれども、柄谷行人の『日本近代文学の起源』がなければ、反発も含めて現在のいくつかの重要な研究成果はなかったでしょう。

2020-03-03 18:32:41
荒木優太 @arishima_takeo

そして柄谷のそれは大学紀要に発表されていたのではありません。

2020-03-03 18:32:55
荒木優太 @arishima_takeo

学問も制度である。然り。しかし、それは一つの制度ではなく、複数の制度で成り立っているのです。一つの制度を手当てすればことが解決すると考えるのは私からみると短見に見えるわけです。

2020-03-03 18:37:43
荒木優太 @arishima_takeo

「貢献」問題に戻ると、大学の中の人は在野研究者にやってほしいことを言葉にした方がいいんじゃないだろうか。従うかどうかは分からんけど、在野研究者って一口にいっても色々いるわけだからリクエストに応えてくれる人もいるかもよ。

2020-03-03 19:10:03
荒木優太 @arishima_takeo

在野は弟子が育てられないからダメ論もたまに頂戴するけど、「じゃあ勝手に荒木学校を開設して青少年を勝手に教育します」っていうふうになって欲しいんですかね。私の感覚だと非常に危険な感じがするんですが。

2020-03-03 19:13:18
荒木優太 @arishima_takeo

まあ、要するに批判者が欲しているのは、「文系大事」とか「国立大の予算を減らすな」みたいな紋切型なんでしょうし、別に大学潰せとか思ってるわけでもないんでそれ言ってもいいんですけど、文科省って私の言葉に従うんですかね?

2020-03-03 19:15:58
荒木優太 @arishima_takeo

私は従わないと思うんですよね。で、人々もそれを分かってる、と思っている。にも拘らず、擁護論を求められるのは、やりたいことに対する実際的な手当てではなく、感情的補填が目指されてるからなのかな、と邪推しちゃうわけですね。

2020-03-03 19:19:14
荒木優太 @arishima_takeo

でも、多くの研究者が真に求めるべきは、一時的な感情的安心ではなく、中長期的な制度的サポートやそれを支える文化状況なんじゃないですかね。

2020-03-03 19:21:23
荒木優太 @arishima_takeo

不安なのは分かるけど、不安の解消自体を目標に設定するのは悪手なのでは。不安はシグナルでしかないわけだから。

2020-03-03 19:23:21
荒木優太 @arishima_takeo

「国費」とか「フリーライダー」という言葉に私は大きな拒否感があって、というのもそれって生活保護不正受給(でもない)問題とか科研費バッシングとかあいちトリエンナーレ炎上と通底しているからなんですね。

2020-03-03 19:28:42
荒木優太 @arishima_takeo

というわけで、長々反応しているわけだが、でも繰り返しておくと、書評書いてくれたことはとても嬉しいぜ。

2020-03-03 19:30:21
荒木優太 @arishima_takeo

反論書いてて思ったけど、私は社会主義国における国立大学の実際ってほとんど知らないな。勉強してみたい。

2020-03-03 19:43:06
荒木優太 @arishima_takeo

さっきの反論で忘れてていた論点を思い出したのだが(まだやってるのか!)、既成の学問にどう貢献するかというとき、在野在朝関らず、研究者が新しい学問・新しい対象を切り拓こうとするとき、評者からすると彼らもまた「フリーライダー」なんだろうか。やはり不思議なロジックだなと思った。

2020-03-03 20:05:00