紀野一義著『『法華経』を読む』再読

新型コロナウィルスの感染拡大に、日本が、世界が揺れています。国の内外に社会不安が広がる中だから、そんな今こそ読み返してほしい。紀野一義著『『法華経』を読む』とビクトール・フランクル。
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斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

紀野一義師の『「法華経」を読む』(講談社現代新書)に、今こそ読んでいただきたい一節があるのでご紹介します。それは、オーストリアの精神科医ビクトール・フランクルの思想を引用紹介した部分です。ああ、またか、などと思わずお付き合い下さい。大切な点が簡潔にまとめられています。(続く)

2020-03-08 18:30:15
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「フロイトによって、精神の真相に無意識の世界が横たわっていることが注目された。その無意識の特性は無道徳的であり、原始的であり、自己中心的であり、快楽原理に支配され(中略)子供らしい性質と性的な性質のものがすべてあると考えられている」(紀野112頁)続く・・・

2020-03-08 18:47:09
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「しかし、フロイト一派の深層心理の探求はそこまでであった。仏教の「末那識」で止まってしまったのである。」(紀野112頁)続く

2020-03-08 18:49:19
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

末那識(まなしき)を含む、無意識の底に奥底に真実の事故が子孫でいると考える仏教の考え方については、今ご紹介した紀野一義の同書の前段、「無意識の奥底」の部分に紹介されています。それでは先に進みます。

2020-03-08 18:53:58
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「こういうフロイト一派の行き方に対して、そういう自己中心的な、無道徳な、性的な無意識のもう一つ下、もっと深いところに、もうひとつの無意識「超越的無意識」とでもいうべきものを考えた人がいる。(中略)フロイトの弟子のフランクルである。」(紀野112頁)続く

2020-03-08 18:58:32
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

ここから、フランクルが自らも逮捕収容されたナチスドイツのユダヤ人強制収容所での体験に基づいた思想について、紀野一義師は紹介します。続く・・・

2020-03-08 19:03:10
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

ちなみに、紀野一義師は、ビクトール・フランクルより若干歳下ですが、やはり第二次世界大戦で、過酷な兵役と戦争体験、原子爆弾による故郷広島と、ご両親や兄弟の喪失という経験をお持ちでした。そしてフランクル同様、それから半世紀、91歳まで生きた方でした。続く・・・

2020-03-08 19:07:38
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

彼(フランクル)はこの地獄そのものの収容所の中で、時として人間が実に崇高な行動をするのを目撃した。(中略)それは、もっと高貴ななにかから来るように思われた。」(紀野112頁)続く・・・

2020-03-08 19:10:40
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「彼(フランクル)はそこで、従来考えられていた無意識のもう一つ下に、超越的無意識とでもいうべき世界があることに気づいたのであった。そこは仏教でいう「阿頼耶識(あらやしき)」にあたるものである。」(紀野113頁)続く・・・

2020-03-08 19:12:45
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「(フランクルは)その超越的無意識の中に神の意志のようなものが植えつけられており、そこにこそ「真実の自己」があると考えたのである。」(紀野113頁)続く・・・

2020-03-08 19:15:25
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「真実の自己は、その人間に、人間らしく高貴にふるまうよう、大ぜいの人間の幸せを優先するように生きるべきことを迫るのであるが、人間は、自己中心的な、快楽追及的な無意識の方がはるかに強大であるために、自己の精神の深層にそんな高貴なものがあることを忘れてしまう。」(紀野113~114頁)続く

2020-03-08 19:20:38
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「いくら忘れてしまっても、確かにそういう高貴な深層意識があるのだから、人は快楽を追及し、自己中心的な生き方をしているさなかにふと、名伏しがたい空虚感に襲われることがある。これを「実存的空虚」というのであるが、この空虚感が深くなると人はノイローゼの状態に陥る。」(紀野114頁)続く

2020-03-08 19:25:20
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

(承前)どうでしょうか?紀野一義師がコンパクトにまとめて紹介されたフランクルと、仏教の無意識に関する分析。ナチスの強制収容所に囚われた多数のユダヤ人たち、新型コロナウィルスに伴う社会的不安が拡大する現在のただなかに置かれた私たち。そこには共通する心の問題があると思いませんか?

2020-03-08 19:31:04
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

さらに続きますが、続きはまたちょっと後で…

2020-03-08 19:32:50
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

紀野一義師の『「法華経」を読む』(講談社現代新書)によるフランクルの思想の紹介、続きです。高貴な深層意識と実存的空虚まできました。それではナチの強制収容所の中で、ビクトール・フランクルは実際に何を観察していたのでしょうか?続く・・・

2020-03-08 20:25:53
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「収容所のユダヤ人たちは、最初、世界中の人間の良識に期待した。きっと誰かがわれわれに何かをしてくれると期待した。その期待は絶対的に叶えられなかった。世界中の人間は知らなかったのだ」(紀野114頁)続く・・・

2020-03-08 20:27:52
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「ユダヤ人たちは次第に世間を呪い、世間が一体われわれに何位をしてくれたというんだと怨嗟(えんさ)するようになった。これが精神の崩壊の始まりである。」(紀野114頁)続く・・・

2020-03-08 20:29:39
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「(精神の崩壊という)この形は今日の社会でも至る所でみられる。「政府はいったい国民に何をしてくれたというんだ」「親がいったいおれたちに何をしてくれたっていうんだ、何もしてくれてなかったじゃないか」「先生が…」「夫が…」…」(紀野114頁)続く・・・

2020-03-08 20:32:39
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

そして、紀野一義師は語ります。「どこを見てもこういうパターンばかりではないか。このパターンはすぐに精神の崩壊を引き起こしてゆく。政府や国家に対する不信、親への暴行、尊属殺人、校内暴力、家庭不和と解体、離婚という風に進行してゆくのである。」(紀野115頁)続く・・・

2020-03-08 20:36:24
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「フランクルは、どんどん崩壊してゆく(強制収容所内の)ユダヤ人の精神を立て直すために一人ずつ説得して歩いた。(中略)世間に何を期待できるか、世間からは何も期待できない、という型の人間は、絶望のあまり精神の崩壊を起こし、死んでいったのである」(紀野115頁)続く・・・

2020-03-08 20:39:10
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「その反対に、世間は自分に何を期待しているか、娘が私に生きることを期待している(中略)世間は自分に何を期待しているか。自分の書いた地理叢書の未完の部分を、多くの読者が期待して待っている」(紀野116頁)続く・・・

2020-03-08 20:43:58
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

「精神の高貴が真実の自己の特質である。精神の高貴は、世間、つまり、大ぜいの人々の幸せを願い、大ぜいの人々の期待に応えようとする時、いよいよ高貴になり、信じられないほど強い力を人間に与えるのである。」紀野一義師の『「法華経」を読む』(講談社現代新書)116頁。

2020-03-08 20:47:21
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

新型コロナウィルスの蔓延が、怖れ、不安となり、差別や八つ当たりなどの事件を日本や、諸外国で引き起こしています。真実の自己、精神の高貴、自分は世間から何を期待されているだろうか?これは繰り返し自分に問いかけねばならない問題であると紀野一義師も指摘されています。私もそう思います。

2020-03-08 20:51:34
斉藤大法 Daiho Saito(Buddhist Priest・Psychiatrist) @whidaiho

2017年に新装増補版が大法輪閣から出版されました。私の手許にあるのは講談社現代新書の初版。この装丁デザインが好きです。もうボロボロですが、巌巌(がんがん)たる内容は、朽ちることを知りません。合掌 pic.twitter.com/MH0iG0RKpH

2020-03-09 09:07:43
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