GiGi氏による映画『FUKUSHIMA50』評「FUKUSHIMA50が世評に反してアンチヒロイズム映画だったということは、声を大にして伝えていきたい」

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50、美談でないものを美談として仕立てようとした矛盾が後半怒涛の勢いで噴出してきてある意味見ごたえがあった。感動もカタルシスもないがこのどうしようもなさはある種の真実を描いているようには思う。

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50、これまじでどうしようもなくないか？という状況が人為に一切関係のない軌跡で解決されて、吉田所長の葬式で、「いまだに理由はわかりません」って宣う上に、ダメ押しで「この夏に復興オリンピックが開催されます」ってテロップ芸が出るの、本当にこの国のだめなとこが全部出ててよかった

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50、前半は本当に見づらくて、全員が全員ずっとがなっている演技も、たとえ現実がそうだったとしてもそういう描き方はやめてくれーって不快感が強いのだが、後半本当に手詰まりになった後に一気に空気が弛緩して、あ、これはもしかしてそういう映画なのか、という謎の納得感があったのだよな

GiGi @gigir

指揮命令系統が喪失して、現場が勢いと思い込みだけで行動して、それも手詰まりになると一気に空気が弛緩してあきらめムードになる。いたずらに時を浪費した上で、外力によって問題が解決されれば、何事かをなした気分に浸る。ありのままの現実なのでは。

GiGi @gigir

そういう現実のアイロニーを仕込んでいると考えると、最終盤で唐突に米軍のトモダチ作戦の様子が挿入されるのもすっと腑に落ちるのだよな。

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50、菅直人が必要以上に無能に描かれていると言うが、その点で言うと登場人物全員無能に描かれているので公平ではあるとは思う。

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50、海外メディアのbreakingNEWS映像が、全部架空のメディアで、CNNじゃなくてWNNとかなのもかなり脱力感があって良い。

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50、政府と東電本店が徹底して無能に描かれていて、現場は上からの命令はまるで聞かないのに、自分たちの部下には「命令」を下すのとか、あーそういうなるほどーってなるんだよな

GiGi @gigir

デジモン絆とFUKUSHIMA50、どっちも世評だけで満足せずに見てよかったとは思っています（普通に面白い映画見たい人にはどちらもオススメしません）

糸井 重里 @itoi_shigesato

戦争映画や、時代劇だと「いのちを捧げて」やらねばならないことがでてくる。いまの時代は「いのち」は無条件に守られるべきものとされるから、「いのちを捧げる覚悟」は描きにくい。映画『Fukushima50』は、事実としてそういう場面があったので、それを描いている。約2時間ぼくは泣きっぱなしだった。

GiGi @gigir

実際には、命を捧げる覚悟があったとしても、それを実行するための指揮命令系統がなければ命を賭けることすらできないのだよね。FULUSHIMA50という映画は、ひたすら愁嘆場を繰り返すことで、その事実から当事者も観客も目をそらしているという事実を克明に描いている。

GiGi @gigir

糸井重里さんが2時間ずっと泣きっぱなしだったように、映画の登場人物もずっと怒鳴り合い、べそべそと泣き腫らして抱き合った末に、刻々と迫るタイムリミットを前に全てを諦めて天を仰ぎ談笑するという境地に達する。奇跡がなぜ起きたのか検証も反省もないまま、時間だけが過ぎていく。

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50という映画の中で明確に死を描かれた人物は少ない。一人は事故2年後に食道がんで死んだ吉田所長。しかし実は他にも死は描かれていて、それは建屋内にいて津波に巻き込まれた2人ですね。映画でもそれはシーンとして描かれているが、その後に振り返ることはない。ないが、描かれてはいる。

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50、描かれていないものを観客が幻視する映画としてはよく出来ているし、やはりそういった手練手管があるのやもしれない。

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50、「死んでくれ」とは言わなくて「一緒に死のう」って言い回しをするんだよね。菅直人首相の激も、実際に言われたものと違い「俺も行く」といった風に変更されている。そこに誰も違和感を抱かない。

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50、AO弁を開けるための決死隊が1分1秒を争う現場で愁嘆場を演じていたり、吉田所長の発案でコンプレッサーによる外部操作を行っていたことが現場に伝わってなくてあわや無駄死にするところだったこととかを描いているの、アンチヒロイズムでとても良いと思います。

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50が世評に反してアンチヒロイズム映画だったということは、声を大にして伝えていきたい。

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50、ベント作業の遅れが住民の避難を待ってのことだというのが現場には全く伝わってなくて、焦れていた現場が「ようやく許可が降りたぞ！」って快哉を上げるだけという表現も、アンチヒロイズム表現としてとても良いよね。

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50、改めて思い返すと東電本店と現場だけじゃなくて、現場司令部と中層とのディスコミュニケーションもちゃんとそのまま描かれていて、本当にまったくヒロイズムがないのだよな

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50、菅直人はこんなこと言ってないとか官邸はこんなことやってないとかマイナス方向の事実改変の指摘はあるのだけれども、事実を美化したプラス方向の改変の報告が見当たらなくて、本当にこの映画は事実を美化しているのかというのはもっと疑ったほうが良い。

GiGi @gigir

映画が事実を美化しているというのと、観客が美談でないものを観客が美談として受け止めているというのとでは話がぜんぜん違って、批判の方法も変わってくるので、そこは切り分けてほしい。

GiGi @gigir

例えばイーストウッドのハドソン川の奇跡や15時17分、パリ行きのような、事実を元にしたまっとうな英雄譚とは、FUKUSHIMA50は全く違う面構えで、じゃあ事実を捻じ曲げてでもエンタメとして楽しめる真っ当な英雄譚にしたほうが正しかったのかってのは冷静に考えたほうが良い。

西森路代 @mijiyooon

今「尊い犠牲」というと、やっぱり『Fukushima 50』についての糸井重里のツイートと『ミッドサマー』が思い浮かぶわけだけど、『ミッドサマー』は、あんだけ酷い犠牲だと描かれているから「ああ、これはおかしなことなんだな」って一発でわかるようになってて、あのグロさは誠実さなんだなって思った。

GiGi @gigir

FUKUSHIMA50において、犠牲はどう描かれるかというと、まるでなかったかのように描かれる。美談どころか悲劇としても描かれない。押し寄せる津波に巻き込まれ行方知れずになったシーンを映しながら、そのことについて物語内で一切の言及がない。

GiGi @gigir

本当に、これは意図的にやらなければこのような物語にはなりませんよ。冒頭で2人死んでるんですよ。その死が悼まれることも、思い返されることもない。当然この2名はFUKUSHIMA50には含まれていない。この映画はその「事実」をありのままに描いている。