「思枠」の挿入

子どもに「早くしないと遅刻するよ!」という言葉が通じないのは、そんな「遠大な事業」に取り組むのは気が重いから。
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shinshinohara @ShinShinohara

「幼稚園始まっちゃうよ!早く着替えて!」と言っても、目の前のおもちゃに心奪われて一向に着替えようとしない娘。 そこで私がよくやる手。 「このズボン、もう着ない?お父さんが着てもいい?」 すると娘「だめー!おとうさんおおきいからやぶけちゃう」

2020-03-10 21:00:31
shinshinohara @ShinShinohara

「でも着ないんでしょ。だったら試しにお父さんがはいてもいいでしょ」 「だめー!きる」と言ってズボンをはきだす。 けれどここで安心すると、ズボンをはきかけたまま遊びに熱中しかねない娘。たたみかける。 「いやいや無理やろー。ズボン、一人じゃ着られへんやろ」

2020-03-10 21:01:17
shinshinohara @ShinShinohara

「きられるよ、ほら」片足をはいた。「おお!」ここでことさらに驚く私。 しかしここで安心はしない。さらにたたみかける。 「右足はできたかもしれんけど、左足は無理やろ。ほら、お父さんが手伝ったろ」

2020-03-10 21:01:52
shinshinohara @ShinShinohara

「だめー!できる。ほら!」ここでまた目をむいて驚く私。しかしここで安心しない。さらにたたみかける。 「ズボンはしゃーない。でもこのシャツは着いひんのやろ。お父さんが着てもいい?」 「だめー!わたしの!」シャツの袖に腕を通そうとする。

2020-03-10 21:02:50
shinshinohara @ShinShinohara

「いやいや、無理やろ。あれ?できた!」得意そうな娘。 「でもボタンは無理やんね。お父さんが留めたろか」 「いや。できる」ボタンを一つ留めた。驚く私。けれどそこで安心しない。「一つ目はできたかもしれんけど、二つ目は無理やろ。どれ、お父さんが手伝ったろ」

2020-03-10 21:03:30
shinshinohara @ShinShinohara

「いやー!ひとりでできる」この調子で全部着替えた。 「しかたない、園服はお父さんが着せたろ」と言うと「いやー!」と言って、出口の方に走る。「くつは一人ではけんやろ」「できる」この調子で、一つ一つ、私が替わろうとするたび、娘はそうはさせじと頑張り、幼稚園に行く準備が終わる。

2020-03-10 21:05:32
shinshinohara @ShinShinohara

大人になると、幼稚園に○時までに行かなければならない→それには家を△時に出なければならない→ということは、×時までに着替えを終えなければならない、と、逆算思考でやるべきことを列挙し、子どもに時間までに食事や時間を終わらせようとする。

2020-03-10 21:06:06
shinshinohara @ShinShinohara

しかし、幼児にとって幼稚園に行くということは、遠い未来のこと。実は、「着替える」ということさえも、いつ終わるともしれない遠大な事業。だから早く済ませて!と言われても、そんな大事業に取り掛かるのは気が重い。だから目前の楽しみについ没頭してしまう。

2020-03-10 21:06:35
shinshinohara @ShinShinohara

子どもからしたら、「幼稚園に行くよ!着替えなきゃ間に合わないでしょ!」という言葉は、「いま目の前の楽しみを続けるか、やめるか」という選択肢の中で、「やめる」を選べ、と迫られている感覚。だから気が進まない。

2020-03-10 21:06:58
shinshinohara @ShinShinohara

「遊びをせんとや生まれけむ、戯れせんとや生まれけむ」の子どもたちにすれば、「遊びか、遊びをやめるか」という選択を迫られたら、当然「遊び」を選んでしまう。 そこで私は、思考のフレームワーク(思枠)を挟むことにしている。「あっちの遊びか、こっちの遊びか」という思枠を提示するわけだ。

2020-03-10 21:07:39
shinshinohara @ShinShinohara

私が、子どもの服を着てよいか?と声をかけると、「目の前のおもちゃで遊ぶ楽しみか、お父さんの目論見を阻止する楽しみか」という、どちらも遊びの選択肢に変わる。

2020-03-10 21:08:21
shinshinohara @ShinShinohara

すると、「おもちゃは後でも遊べるが、お父さんの目論見を破壊するのは今しか楽しめない」ということを察知し、私の手から服を奪い返すことを優先する。おもちゃで遊ぶのをやめて、私との攻防戦という遊びを選択する。

2020-03-10 21:08:41
shinshinohara @ShinShinohara

さて、ここで注意。大人は「着替える」という一連の作業を「一連」として捉えがち。途中で何をしているのか細かく意識していない。

2020-03-10 21:09:19
shinshinohara @ShinShinohara

しかし幼児にとっては、「転ばないように座り、ズボンの前後を確認し、足を入れやすい距離にズボンを置き、つま先を差し入れ、片足をすそまで通した後、もう片方の足もすそまで通し、そのあと転ばないように慎重に立ち上がり、パンツが見えない位置までズボンを持ち上げる」という、大事業。

2020-03-10 21:10:27
shinshinohara @ShinShinohara

大人は、この大事業を、子どもができるようになった時点で「一連」の作業とみなし、途中経過を軽視するようになるが、なかなかどうして、幼児はまだまだ意識して行わないとうまくいかない難事業。

2020-03-10 21:10:46
shinshinohara @ShinShinohara

だから、その難事業を当たり前のように「早く着替えて」と言われると、そんな簡単に言わないでよ、と、気が重くなる。たとえ着替えても、親はできるのが当然だと考えていて、驚いてくれない。つまらない。

2020-03-10 21:11:05
shinshinohara @ShinShinohara

だから私は、「着替える」という作業をいくつもの工程に分解し、その工程一つ一つを見守りながら、「できるかな?」と挑発する。工程をひとつクリアしたら「おお!やった!」と、やり遂げたことに驚いてみせる。しかし次の工程をやり遂げられるかはまだ分からない、という姿勢で見守る。

2020-03-10 21:11:29
shinshinohara @ShinShinohara

こうした、細かい工程一つ一つに「できるかな?」と問いかけ、やり遂げたら驚く」という見守りをすることで、子どもは誇らしく、楽しく着替えという大事業をやり遂げる。

2020-03-10 21:11:55
shinshinohara @ShinShinohara

「幼稚園に行く」までには、園服を着たり、帽子をかぶったり、ハンカチやティッシュを持ったり、カバンを背負ったり、靴を履いたり、さまざまな工程が目白押し。

2020-03-10 21:12:20
shinshinohara @ShinShinohara

大人は、そうした一連の工程を無意識でやれるようになっているので、ついつい、「時間通りに幼稚園に到着する」という目標に前のめりになり、工程一つ一つを丁寧に見るゆとりを失いがち。

2020-03-10 21:12:44
shinshinohara @ShinShinohara

けれど、急がば回れ。目前の工程に意識が向くよう、「おもちゃの遊びか、服を着て大人の想定を超えるパフォーマンスを見せて驚かせる遊びか」という思枠に誘導し、一つやり遂げては驚く、という丁寧な接し方をした方が、結局速くできたりする。

2020-03-10 21:13:01
shinshinohara @ShinShinohara

幼児にとって、幼稚園に行くまでに必要な作業は「自動車の運転」と同じだと思えばよい。免許取りたての1年くらいはまだまだ操作がぎこちなくて当然。ミラーの調整忘れた!シートを調整しなきゃ。シートベルト忘れた!バックで出るのはハンドルをどっちに切ればいいのかな。戸惑いながら運転するはず。

2020-03-10 21:13:44
shinshinohara @ShinShinohara

幼児にとって、着替えること、登園準備をすることは、自動車の運転と変わらない難しさ。工程一つ一つ、作業一つ一つを確認しながら進めるしかない。免許取りたての初心者に、「○時までに目的地に着かなきゃ!」と急かしたら事故のもと、というのはよく分かるだろう。

2020-03-10 21:14:06
shinshinohara @ShinShinohara

そんな場合、初心者が一つ一つの操作を確認しながらモタモタしていても、我慢して黙って見守るはず。変に「早く!」と急かしたら、踏むべき工程をすっ飛ばして事故になりかねない。

2020-03-10 21:14:30
shinshinohara @ShinShinohara

子どもが着替えを「一連」とみなしてあっという間にこなせるようになるのは、6歳くらいのようだ。5歳までは、着替えるというのはまだまだ大事業。「着替え免許初心者」だと思って、じっくり見守る必要がある。

2020-03-10 21:14:51