ウジコ様は告げる 一気読みver

ウジコ様は告げるという作品を連載しています。 ※現在、1章を更新中です。
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【ウジコ様は告げる】序章★0 序章

2020-02-12 00:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★1  広場に設置されている大時計が午前五時を告げようとする十五分前に、広場の中心に作られた噴水は計算されつくされた方向に向かって、水流を天に向かって打ち上げた。宙できらめく水の透明感が織りなす光景は、初めて見たものは心を奪われる事だろう。

2020-02-12 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★2    しかし、これはあくまでこの場所の早朝の一風景でしかないし、そもそもこの噴水は三十分ごとに同じように水を吹きあげている。これだけならば取り立ててあげるほどの光景ではない。

2020-02-12 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★3  いつもと違っているところは、こんな朝早い時間帯だというのに、この場所で噴水が織りなす光景を眺めていた人数はかなりの数に上っていたということだ。現にこれを眺めている人物は例外なく息を吐いてこの空間に浸っていた。

2020-02-12 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★4  昨日からこの広場では夜通し祭りが行われていた。一年に一度だけの特別な日だ。数時間前までは多くの出店やお客、出し物によって大いに盛り上がり、現在、祭りは撤去作業が進められていた。

2020-02-13 00:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★5  しかしそれでも、佳境をとっくの昔に迎えたというのに、中にはまだ楽しそうに騒ぎ通している大人たちもいるのは、まだまだ余韻には浸りたくはないといったところか。

2020-02-13 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★6  そんな熱気冷めやらぬといった広場の噴水付近に設置されたベンチに、二人の男女が腰を掛けていた。男の方は年はまだ二十歳前後に見える、穏やかな表情をした青年だった。

2020-02-13 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★7  青年の服装に関しては、平安時代の貴族が着ていたような白い狩衣を身に纏っており、あたかも祭事を行っていた神主のように映るだろう。しかし、烏帽子は被っておらず、茶髪のおかっぱを露わにしていた。

2020-02-13 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★8  一方、女の方は男よりも一回り背が低い事から少し年下に見える。薄墨色の生地にスズランの柄をあしらった着物を上品に着こなし、流れるような金髪と日本人離れした美貌が印象的だった。

2020-02-14 00:00:01
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【ウジコ様は告げる】序章★9  両者とも、普通に街を出歩けば明らかに浮いてしまい、周囲の人からは興味の目で見られることだろう。しかし、繰り返すが今日は特別な日。国境も何も関係ない、来るものを拒まない祭りの時間だ。

2020-02-14 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★10  年に一度だけ実施される、この街だけの特別な祭り――その後片付けの様子を、二人は緩い雰囲気の中で見守っていたのだった。金髪の少女は狩衣姿の青年の顔を横から覗き見た。

2020-02-14 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★11 「お疲れ様でした"---様"。舌を巻く鮮やかなお手並みでした」 「そうかな……?」  そうですとも。と少女は恭しく一礼した。"---様"には仕事がある。それは祭りのメインイベントともいえる大役だ。そんな大役を担っていた青年は朗らかな笑みを浮かべた。

2020-02-14 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★12 「ありがとう。でも、僕一人のチカラじゃどうにもならなかった。"-----"のサポートのおかげだよ。というか、ほとんど"-----"のチカラだったじゃないか」 「私は大したことはしていませんよ。全ては"---様"の機転が、道を切り開いたのです」

2020-02-15 00:00:01
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【ウジコ様は告げる】序章★13  傍から見ればおべっかのような言葉を、少女は真摯に紡ぐ。言葉には確かな重みが宿っていた。 「こんなことが出来るのは、貴方様だけなのです。どうか自信をお持ちください。貴方様は何かと謙遜しがちですからね」

2020-02-15 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★14  そう言って少女はベンチから立ち上がり、穏やかな笑みのまま深々と"---様"に対して頭を下げた。青年はやや照れたように視線を少女から外し、髪を軽くかき乱しながら返答した。

2020-02-15 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★15 「そりゃ謙遜したくなるよ。突然僕がこんな大仕事をする事になったり、キミの手腕は凄いしさ。……ところで、昨年はどんな感じだったの?」  青年は昨年の"---様"を知らなかった。青年のほんの出来心の質問に、少女はやや苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

2020-02-15 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★16 「去年……ですか? そうですね……去年は昼ドラの様なバイオレンスな展開や、少年漫画のような熱い展開もありましたとだけ伝えておきます」 「それは……大変だね」  少女は首を縦に振った。

2020-02-16 00:00:01
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【ウジコ様は告げる】序章★17 「寧ろ今年は穏やか過ぎました。ここまで心落ち着いて仕事をするのは、久方ぶりです。……来年はまたとんでもないことがおきそうですね。今から構えさせていただきます」 「そっか……頑張ってね」

2020-02-16 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★18  明らかに誤魔化そうとしているのが分かる少女の声音に、青年の表情は猜疑的なものとなっていた。昨年の祭りではそんなに大きなトラブルが勃発していたのだろうか。それにしても、今から構えるだなんて気が早い子だなぁと、青年は思った。

2020-02-16 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★19 「ところで"-----"。君は何かを悩みとかないのかい? あったら見せてほしいけれど……」  ここで青年は話を変えようとして、別の話を振ってみた。ところが、少女はゆったりとした動きを崩さずにベンチに腰を下ろすと、青年の提案を落ち着いた態度で断った。

2020-02-16 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★20 「残念ですが、見せる事は出来ません。女の子の秘密は特別ですから」 「自分から言いますか。まぁでも、"-----"は人に悩みを打ち明けるタイプじゃなさそうだしなぁ」 「それも理由にありますけども……強いて言いますならば、私は貴方様の一番になりたいのです」

2020-02-17 00:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★21 「えっ……それってつまり、どういう事なのさ?」  ドキリとする様な事を少女は言ってきた。青年は分かり易く動揺する事しかできなかった。

2020-02-17 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★22 「ですから、私の悩みを、誰よりも一番難しい挑戦状に仕立てあげてみせましょうというお話ですよ。それに悩みは私から話すのはルール違反ですしね。」 「ああそういう事……ははは、そうだね。……まぁ、楽しみにはしておくよ」 「ご期待くださいね」

2020-02-17 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★23  見事なまでの肩透かしを食らい、青年は落胆した表情をしながら乾いた笑いを上げる事しかできなかった。『楽しみにしておく』とは言ったけれど、本心はさほど望んではいなかった。

2020-02-17 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】序章★24  横に座る少女は青年よりも遥かに冷静で頭の回転が早い。仕事中は終始助けられっぱなしだった。彼女の手にかかれば、きっと逆立ちしても解けない恐ろしい挑戦状になるだろう。今は解かないからいいものの、いつ挑戦を受けるのかと思うと、青年の表情は優れなかった。

2020-02-18 00:00:00
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