掌小説語り~自作つぃのべる集~46

自作つぃのべるまとめです。 2017年2月分。
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リュカ @ryuka511

高価なグラスに満たした赤い液体を月明かりにかざす。首筋から直に啜るなどと野蛮な方法は今時流行らない。夜の闇と月光がその鮮烈な赤を際立たせた。鮮度が良い方が美味なのは言うまでも無いが、その熟成具合には好みがある。今宵のは少々若すぎた。もう少し育ててからまだ頂こう #twnovel

2017-02-28 00:31:03
リュカ @ryuka511

瀕死の重傷を負った戦士を背負う。死なないで、繰り返し呼びかけながら勇者は教会へ向かう。神託だなんて歪な運命を友にも背負わせてしまった事を嘆いた。自分と一緒にいなければこんな目に遭わずに済んだのに。友が目を覚ます前に、一人で行こうと決めた。勇者には一人旅が相応しい #twnovel

2017-02-27 00:41:39
リュカ @ryuka511

輿に美しい女を乗せた行列が行く。魅入っていると連れに袖を引かれた。「どうかしました?」「あの行列は何だろうか」「行列?」連れは訝しげに眉を寄せる。「誰もいやしませんよ」行列は今も静かに進んでいる。だが道行く者は誰一人目もくれない。輿から顔を覗かせた女が、笑った #twnovel

2017-02-26 00:02:42
リュカ @ryuka511

「そこまでだ、魔王」佇む魔王に剣を向けた。「俺が魔界も地上も支配する」「血迷ったか、勇者」魔王の怪訝な顔に笑う。帰る場所も生きる意味も失った。けどそれらを奪ったのは魔王じゃない。俺に世界を背負わせ高みの見物を決め込んだ人間達だ。「俺と手を組むか戦うか選べ、魔王」 #twnovel

2017-02-25 00:48:47
リュカ @ryuka511

幼い日の約束は果たされないまま、君は消えてしまった。あの日、幼いながらも真剣な約束を交わしたのは、こんな結末を予感していたからかもしれない。僕らを引き裂いたのは大人の都合ってやつで、子供の僕らには抗えなかった。おもちゃの錆びれたエンゲージリングは、もう輝かない #twnovel

2017-02-24 02:05:20
リュカ @ryuka511

お気に入りの場所を見つけた。程よく狭くほんのり暖かい。今日もくつろいでいたら突然、頭上で轟音が響いた。何事だ!?慌てて飛び出すと人間が「やっぱり居たんだ」「危なかったね」などと話しながら、お気に入りの場所ごとどこかへ行ってしまった。よくわからんが俺は危なかったのか? #222散歩

2017-02-22 23:07:38
リュカ @ryuka511

間違いようがないと思った。君と僕は出会うべくして出会ったのだ。そこに理由や必然性などいらなかった。しいて言うなら、前世からの約束と言えるだろうか。 #twnovel それなのに、この結末は何なのだ。引き裂かれる所まで決められていたのか。事切れる僕を君が見下ろす。その表情は見えない

2017-02-22 02:02:26
リュカ @ryuka511

霧の漂う水面を滑るように一艘のゴンドラが行く。ゴンドラが運ぶ死は、祝福された死だと言われる。ゴンドラを漕ぐ死神が歌うレクイエムは厳かで美しく、送る者の心を慰めた。川を下るゴンドラは、海へ出る前に霧と共に消える。新たな命となるために。 #twnovel

2017-02-21 00:16:47
リュカ @ryuka511

「私も連れてって」縋る少女に死神は首を振る。「貴方はリストに載ってません」「あなたの姿が見えるからもうすぐなんでしょ?」「死に焦がれて見えるようになっただけでしょう。さぁ、もうおやすみなさい」病院を見下ろし死神は月夜に微笑む「貴方は無事にここを出られるんですよ」 #twnovel

2017-02-20 01:53:07
リュカ @ryuka511

革命軍により王は討たれた。捕えられた王女は静かに告げる。「どうか私を殺してください」民衆を苦しめた責任は自分にもあると。民衆は王族を皆殺しにと願った。革命軍隊長は王女の豪奢なドレスを切り裂くと一糸纏わぬ姿の王女に告げた。「貴女には民衆として生き償う事を命じます」 #twnovel

2017-02-19 01:06:11
リュカ @ryuka511

立ち寄ったカフェで赤ずきんは言う。「狼さん、ワインを頂戴」たじろぐ店主に赤ずきんは続けた。「知ってるのよ。おばあ様はもういない。私があの家に行ったら、貴方に殺されるんでしょう?」赤ワインを傾け赤ずきんは微笑む。「命じたのはお母様ね?ねぇ狼さん、私に寝返らない?」 #twnovel

2017-02-17 23:43:48
リュカ @ryuka511

革命軍への参加を決めたあの日、木漏れ日の中で寂しく笑うあの人は、何を想っていたのだろう。革命の成就に街中が沸くのを、遠のく意識で感じている。暴君を討ち僕らは英雄になった。これから街は良い方へ変わっていくだろう。あの人にとって、僕は英雄になれただろうか。 #twnovel

2017-02-17 01:45:13
リュカ @ryuka511

「シャンデリアの落下には気をつけて」「えっ?」舞踏会ですれ違いざまに囁かれた不穏な忠告は、現実のものとなった。散乱した破片が場違いに煌めく。主催の侯爵は使用人に片付けを命じ、取り繕った笑みで賓客を気遣う。狙いは私だったのだろうか。そして密かに忠告をくれたのは誰? #twnovel

2017-02-16 00:12:00
リュカ @ryuka511

「バレンタインなんて製菓会社の陰謀だろ」「そんな事言ってるからモテないんだよ」むくれた幼馴染に包みを押し付ける。「恵んであげる」「お情けはいらないぞ」「お情けじゃないから」からかうのを止め真顔で告げると奴は固まって真っ赤になった。「じゃ、貰ってやる」 #チョコラ #twnovel

2017-02-14 23:32:40
リュカ @ryuka511

「もうここへは来るな」言葉と裏腹に涙を落とす彼女に困惑する。「どうして」「お前も私と同類だと思われるぞ」魔女が人間に忌避されているのは知っている。だけど自分達には関係ないと思っていた。「お前の為だ」そして彼女は扉を閉じた。魔女達が人間に戦線布告したのは翌朝の事 #twnovel

2017-02-13 23:26:40
リュカ @ryuka511

スラムの片隅で雨をしのぎ身を寄せる。盗みに詐欺、生きる為なら何でもやった。二人なら生きていけると思っていた。だが、肩寄せ合ったところで私達は何になるというのだ。見捨てられた子供、それ以外の何者にもなれなかった。何の前触れも無く冷たくなった君の身体を掻き抱いて眠る #twnovel

2017-02-13 01:20:53
リュカ @ryuka511

魔王を討ち、攫われた姫を救出した。城へ帰還する二人きりの旅路に、ロマンスの一つもあっただろうと人々は噂する。城へ辿り着いた頃には、僕らは勝手に婚約者にされていた。だけど僕と君の間には、本当は何もなかった。君の瞳に僕は映らない。君の憂い顔を晴らせるのは、魔王のみ #twnovel

2017-02-12 00:18:01
リュカ @ryuka511

深夜ラジオを聞きながら手紙を綴る。そちらはそろそろ夜が明ける頃でしょうか愛しい人。穏やかなDJの声は貴方と似ていて淋しさを少しだけまぎらわせる事が出来る。貴方の好きな曲が流れて、届くはずのない愛の歌を貴方へ口ずさむ。帰ってきてとは言えなくて、滲んだ手紙を書き直す #twnovel

2017-02-10 23:58:51
リュカ @ryuka511

愚王とその王妃が討たれ、王国は滅びようとしていた。家臣達は我先にと逃げ出し、幼い王子と王女を誰も顧みなかった。ふたりぼっちの王国で、幼い兄妹は生まれて初めての自由を謳歌する。広い城を歓声上げて駆け回り、食料庫の高級食材を食べ明かす。2人を縛るものはもう何も無い。 #twnovel

2017-02-10 01:10:15
リュカ @ryuka511

「今も旦那様を愛していらっしゃるのですね」旦那様が亡くなられてから何年も経つが奥様は淋しげに旦那様の肖像を見ておられる。「貴方は何でもお見通しね」涙を拭う奥様に精一杯微笑む。「何年側にいたとお思いですか?」きっと旦那様以上に奥様を理解していた、それだけが私の矜持 #twnovel

2017-02-08 23:51:39
リュカ @ryuka511

私は一国の女王であり、私の婚姻は王国の繁栄と幸福の為でなくてはならない。大臣達が各国と協議し縁談を進める中、密かに溜息を吐いた。恋い慕う人がいるのだ。だが立場上、想いを告げることは許されない。女王の座を継いだ時、私は私の為には生きられないと、覚悟したはずなのに #twnovel

2017-02-08 00:36:17
リュカ @ryuka511

@ran_stella 私もそこまでは知らなかったんで驚きでしたΣ(・ω・ノ)ノ 渡辺綱に所縁のある地域ではメジャーな話なんでしょうかね。興味深い話題をありがとうございます(^^)

2017-02-08 00:01:17
リュカ @ryuka511

みんなにバレンタインチョコ🍫を配ってるよ! 📮で受け取ってね! 😊🍫📮  😁👇 #バレンタインポスト #バーチャルチョコ valentine-post.com/share/present/…

2017-02-07 20:01:44
リュカ @ryuka511

君を送ったのは小雨が降る日だった。天へ立ち上る細い煙が、細かく降る雨に阻まれてしまいそうで、それなのに見ているしか出来ないのが悔しい。冷たい雨が、ささやかな雨音が痛かった。それでも傘をさす気にはなれない。悲しく冷たいこの雨が、君と共有できる最後のものだから。 #twnovel

2017-02-07 01:01:32
リュカ @ryuka511

その街は時を止めていた。子供らの駆ける公園も活気に満ちた商店も絵画の如く静止し、風はそよがず太陽は西へ傾きかけたまま斜陽を街に落とし続ける。それは罰か呪いか。沈黙する時計塔は応えぬまま静かに佇む。古い時計塔を動かす術を誰も知らず、街は忘れ去られていく。 #twnovel

2017-02-06 01:15:07