お好み焼きの歴史解説 なぜ広島は「重ね焼き」で大阪は「混ぜ焼き」なのか キーワードは「エロ」?!

秘密のケンミンSHOWにおいて拙著『お好み焼きの物語』が映りましたが、番組の内容と本の内容が異なっていたため、間違った知識が広がらないようあらためてお好み焼きの歴史を解説します
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1.2020年3月5日(木)放送の「秘密のケンミンSHOW」 に『お好み焼きの物語』が映っていましたが、その説明内容は原書とは異なるデタラメなものでした

近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

昨晩の秘密のケンミンSHOWに『お好み焼きの物語』が映ったということで、TVerで確認しました。 tver.jp/corner/f0047827 え?話している内容デタラメですよね。そんな事が『お好み焼きの物語』に書いてあると誤解されると困るんですが。 pic.twitter.com/8aQ1tFZU0P

2020-03-06 10:59:18
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まず今日のお好み焼きの始祖にあたるのは、明治時代末に東京で生まれた「お好み焼き」です。 どんどん焼は、大正時代に子どもたちがお好み焼きにつけたあだ名、子供言葉です。 「お好み焼き」を「自動車」とすれば、どんどん焼は「ブーブー」です。 pic.twitter.com/cwsH5m8WCQ

2020-03-06 10:59:19
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「どんどん焼きは豚肉とか牛肉とか様々な具材を小麦粉の上に重ね焼く」 この一つの文章には2つの間違いがあります。 まず1つ目の間違い。どんどん焼(お好み焼き)という特定の料理名は存在しません。 pic.twitter.com/uwHOZa4DbG

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作家の池波正太郎は、子供の頃どんどん焼屋台に憧れ、将来はどんどん焼屋になろうとしていました。 池波正太郎のエッセイには様々などんどん焼が登場します。 pic.twitter.com/fRthVcBtQV

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これはどんどん焼のカツレツとおしるこ。池波正太郎が自分で作ったものを新潮社が撮影したものです。 pic.twitter.com/J9QINYXfyx

2020-03-06 10:59:20
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番組で映った料理は池波正太郎の「牛天」にあたる料理です。「どんどん焼き」という料理名ではありません。 お好み焼き=どんどん焼はカツレツ、おしるこ、牛天などすべてを包括するカテゴリ名であって、料理名ではないのです。 pic.twitter.com/rYb7YKnjGd

2020-03-06 10:59:20
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「どんどん焼きは豚肉とか牛肉とか様々な具材を小麦粉の上に重ね焼く」 の「どんどん焼き」を「牛天」に読み替えたとしても、やはりこの文章は間違っています。 牛天を「重ね焼く」とはかぎらないのです。 pic.twitter.com/HMWrLYZ4bh

2020-03-06 10:59:20
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牛天のような天がつく「天もの」は、重ねて焼くこともあれば、混ぜて焼くこともあります。 池波正太郎の記憶している「牛天」は、混ぜて焼いていました。

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”メリケン粉の中へ材料をまぜこむのは「牛てん」のみで、これは牛挽肉と日本葱を入れ、ざっくりとまぜ合わせて鉄板へながし、焼きあげてウスター・ソースで食べる。”(食卓の情景 『完本池波正太郎大成 第29巻』所収)

2020-03-06 10:59:21
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amazon.co.jp/dp/B0794GC6TX 『お好み焼きの戦前史』およびその物理書籍版『お好み焼きの物語』においては池波のそれを含めて9件の事例をあげていますが、乗せて焼くか、混ぜて焼くかは屋台によってバラバラです。

2020-03-06 10:59:21
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こちらが『お好み焼きの戦前史』に掲載しているお好み焼きの歴史概略図です。 お好み焼き屋台の様々なメニューの中から、天ぷらのパロディである「天もの」(牛天、いか天、ねぎ天)のみが、広島や神戸、大阪、京都など各地に伝播していきます。 pic.twitter.com/V2qSRXlkUT

2020-03-07 05:00:24
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お好み焼きの戦前史

近代食文化研究会

2.大阪、広島いずれにも「重ね焼き=乗せ焼き」の天ものが東京から伝播し、一銭洋食あるいは洋食焼という屋台グルメとなった

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この伝播の課程で、不思議なことが起こります。 前述のように、オリジナルである東京の天ものは、屋台によって生地を焼いてから具を乗っける「乗せ焼き」=「重ね焼き」と、生地に具材を混ぜてから焼く「混ぜ焼き」が混在していました。 pic.twitter.com/J31MbJrW3j

2020-03-07 05:00:24
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ところが、各地に広がった屋台の天もの(一銭洋食、洋食焼)の戦前の事例を見ると、全て「乗せ焼き」=「重ね焼き」なのです。 大阪の屋台も「乗せ焼き」=「重ね焼き」でした。

2020-03-07 05:00:24
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実例を見てみましょう。 amazon.co.jp/dp/B0794GC6TX 『お好み焼きの戦前史』は一昨日、最新版Ver.1.10に更新しました。

2020-03-07 05:00:25
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それと同時に、お好み焼き関連資料一覧も、最新版をスプレッドシートで公開しています。 docs.google.com/spreadsheets/d… このシートで「大阪」と検索すると、大阪の事例がわかります。

2020-03-07 05:00:25
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連番でいうと19331が、焼き方がわかる最古の大阪の事例です。 作家の大谷晃一が書き残した昭和8年の屋台の「一銭洋食」です。

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”いつ汲んできたのかしれないバケツの水で、小麦粉を溶いている。味はつけていない。それを鉄板に丸く薄く流す。干した桜エビ、ねぎ、かつお節、青のりをばらまく。その上に、溶いた小麦粉を少しかける。” 他にも事例はありますが、大阪の屋台は「乗せ焼き」=「重ね焼き」であったことがわかります pic.twitter.com/bc8Y8w4eId

2020-03-07 05:00:25
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秘密のケンミンSHOWは京都のお好み焼きの話でしたので、京都の事例も見てみましょう。 スプレッドシートを「京都」で検索すると19312の事例がヒットします。

2020-03-07 05:00:25
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”厚い鉄板に油を引き、うどん粉を水でといて、ちょっと甘味をつけた汁をドロドロと丸く薄くのばして焼く。上にのっていたのはたしか桜えびと青ねぎやったかしら。一ぺん裏返してキュッキュッと押え、こうばしいにおいがしてきたら、できあがり。” 京都の屋台も「乗せ焼き」=「重ね焼き」です。 pic.twitter.com/YZ45ldBi04

2020-03-07 05:00:26
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戦前のお好み焼きの事例の多くは発祥地である東京に集中しており、他の土地での事例は桁違いに少ないので確実なことは言えませんが、ともかくも東京以外の屋台の事例はすべて「乗せ焼き」=「重ね焼き」なのです。 理由は謎です。

2020-03-07 05:00:26
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もちろん広島における屋台の事例を見ても、「乗せ焼き」=「重ね焼き」です。 広島では昭和10年頃に一銭洋食の店舗が現れますが、屋台方式がそのまま店舗化したので、「乗せ焼き」=「重ね焼き」が伝統として受け継がれ、現在のお好み焼きの主流となっています。

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