そして発見された模様
おにぎりは洗濯機の中にあった。それは大量の衣服とともに洗われた。米や海苔、少量のからあげは水流の中でほぐれ、服たちと寄り添うことを願った。服たちも快くそれを受け入れた。妻から知らせを受けたおれは土下座のウォーミングアップに入った。 twitter.com/darekautaeyo/s…
2020-03-12 14:22:36「まずなによりも、海苔」妻は静かに言葉を紡ぎだした。海苔は水流の中で「枚」という単位から解き放たれ、本来の姿を取り戻した。海苔は服たちと深い部分で抱擁しあった。それは分かちがたく愛し合うものたちの姿のようだった。「まるでぼくらのようだね」おれの言葉に返事はなかった。
2020-03-13 18:42:12「そして米」妻が指さした洗濯槽には無数の穴が開いていた。その穴の一つ一つ、米たちはそこを棲み処と決めたらしかった。妻がねじ回しを持ってきて洗濯槽の底を外し、持ち上げた。そこには空洞があり、穴を抜け出た米たちは空洞を愛した。おれは変な声が出て、気が狂ったのかと思った。
2020-03-13 18:45:05「からあげ、なかった?」おれが聞くと「ああ、あれからあげだったの?」と妻が笑いながら答えた。妻にとってそれがからあげであるかどうかは重要ではなかった。ただ、一番被害をもたらさなかった茶色い存在だった。その笑顔は笑顔ではなかった。からあげにされる前の鶏のようにおれは震えた。
2020-03-13 18:46:04高級チョコレート店「DEMEL」のザッハトルテとトリュフ9粒入り、ハーゲンダッツを三つ、捧げものとして妻へ差し出した。三つのハーゲンダッツにはそれぞれ「日常での感謝」「変わらぬ愛情」「陳謝」という名があったが、それが告げられることはなかった。おれは土下座した。
2020-03-13 18:46:48短歌。第62回角川短歌賞。『月を食う』(KADOKAWA)で第64回現代歌人協会賞。心の花。2022年度NHK短歌選者。神奈川新聞歌壇選者。DM見てないことあるのでメールください。utyuunohousokugamidareru@yahoo.co.jp
名文だ…この方こそ作家と呼ばれるに相応しい((((*゜▽゜*)))) twitter.com/darekautaeyo/s…
2020-03-13 12:09:32