エスケープ・フロム・ホンノウジ#5

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867,ニンジャスレイヤー,
0
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【前提知識】 ・舞台は2050年ぐらい。 ・近代国家はもう無い。 ・北米カナダ地域には明智光秀が作った圧政国家「ネザー京」がある。 ・暗黒メガコーポはこれに対抗し、UCA(United Corps of America)を組織。強行偵察のために「ファイアストーム隊」をネザー京の首都、本能寺に送り込んだ。

2020-03-20 20:50:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【今回の話】 ・クレイグ隊長:UCAの英雄。ファイアストームという名のニンジャ ・カネト:ネザー京の中忍階級だったが、昇進の儀式でしくじり、思わず逃げてしまった。もう、国には居られない。クレイグと共に国外脱出を企図する ・博士:ネザーオヒガンをビデオ撮影するが死亡

2020-03-20 20:55:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

・トム・ダイス:ベンチプレス180kg ・ホルヘ:口の悪いムードメーカー ・ブレイン:その感受性の強さが幾度も部隊の助けになってきたが、精神に強いダメージを受けてしまった ・ジェフ:元犯罪者のハッカー。身体も鍛えている ・アシュリー:博士の護衛役 ・レザ:潜伏アジトで待機中

2020-03-20 20:58:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

マレボルは目を剥いた。フォース・スリケンは超自然タタミの壁が完全に阻んだ。間合いを取ろうとするが、クレイグは彼の背後に壁を出現させ、それも遮った。「き、貴様……!」マレボルは驚愕をもはや隠せなかった。クレイグは踏み込み、脚を、腹を、胸を打撃した。「イヤーッ!」「グワーッ!」 -2

2020-03-20 21:01:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「終わりだ」クレイグは断頭チョップを構えた。マレボルは呻いた。「私は高貴なる種……貴様ごとき野蛮人に……」「この地獄を受け入れるくらいなら、俺は野蛮を選ぶ。イヤーッ!」「アバーッ!」首切断!マレボルは爆発四散!「サヨナラ!」クレイグはポータルを振り返った。そして飛び込んだ。 -1

2020-03-20 21:04:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ネザーオヒガンの門をくぐり、戻ったとき、一人減り、一人加わった事になる。もはやこの恐るべき都に留まる理由は何一つ無い。クレイグはその場から川辺の岩陰へ部隊を素早く移動させると、ブリーフィングを行い、動き出した。帰り道は「ボンズを先導するチューニンの護衛」というスタイルだ。 1

2020-03-20 21:08:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

部隊の混乱は深かったが、ポータルの先でクレイグが経験した出来事を、あえて詮索したいと考える隊員はいなかった。ヒロ博士の死は沈痛に受け容れられた。そもそも隊員たちは黒いポータルから生還してきたクレイグに驚いたのだ。アシュリーは博士の手首を密閉し、懐に収めた。弔いと、証拠の為だ。 2

2020-03-20 21:11:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

法衣を捨ててしまったクレイグはカネトの隣で腕を後ろにやり、チューニンに引っ張られる囚人を装っていた。市民からの投石の危険はあるが、妥当なカムフラージュだ。彼らは黙々と進んだ。あの恐ろしい訓練の山を通り抜け、戦闘階級が暮らす「屈強区」に入り込む。 3

2020-03-20 21:14:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハンニャー……ハンニャー……ウフフ……」ブレインの偽装ボンズ・チャントには引きつった笑いが混じり、ホルヘを苛立たせた。「しっかり唱えろよクソが!お前がイカレたって事はわかってっから!……ああクソッ、ボンズじゃ全力疾走できねえし。一刻も早くトンズラしてえのによ」 4

2020-03-20 21:17:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

屈強区の建築物は強さがあり、柱や壁のつくりも市民区の荒れ果てようとはまるで違った。まさに弱肉強食、アケチの思想を体現した都市がホンノウジであり、このネザーキョウという国土の縮図でもあるのだろう。彼らは警戒を重ねた。屈強区の住人自体が少なくともゲニン以上の者たちであるはずだ。 5

2020-03-20 21:20:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「一度あんた達のアジトに戻らなきゃならんのか?」カネトは確認した。クレイグは頷いた。「仲間が待っている。それに、お前同様にこの国を脱出したがっている協力者の親子がな」「……俺は……」カネトが何か言おうとした、その時だった。曇り空に、破裂音がたて続き、しだれ柳じみた花火が光った。6

2020-03-20 21:23:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ……」叫び声をあげたブレインの口をホルヘが手で押さえた。DOOOM……DOOOOM……バチバチと光る花火は薄黄色い空に紫の色彩を輝かせた。柱にくくりつけられたスピーカーが勇ましいアケチの歌を流し始めた。『キキョウの光、カラテに託し。ネザー、ネザー、ネザーキョウに栄光あれ!』 7

2020-03-20 21:25:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ま……まずい」カネトが震えた。「タイクーンが帰ってきた。間違いない。カイデンが終わったんだ」「足を止めるな」クレイグは一同を促した。『惰弱に生きれば50年、コクダカ帯びて5000年。カラテ永遠、美味し国、ネザー、ネザー、高まりぬ!』「ネザー!ネザー!アハー!」ブレインが涎を垂らす。 8

2020-03-20 21:29:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

パパラパパパラー!ファンファーレ音の後、街頭のデジタルサイネージに、甲冑姿のタイクーンが映し出された。『国民よ!ハゲミナサイヨ!此度は勇敢極まるチューニンの者らの中から新たなセンシがカイデンされた!』カメラがややパンすると、そこには……ナムサン……ジェイソンらしき姿あり。 9

2020-03-20 21:32:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

俯いていた姿はゆっくりと顔をあげ、カメラを睨んだ。暗い光が双眸に灯っていた。「ジェイソン=サン」カネトが呻いた。クレイグは前進を促した。「歩け。街中のモニタ全て同じ映像だ。この後どこでも見られる。……知った相手か?」「ああそうだ。一緒に昇進の儀式に臨んだ。アイツは耐えたんだな」10

2020-03-20 21:37:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

大門を通過。門番達が会釈する。市民区に入ると、途端に街並みは凄まじい有様だ。街頭には貧しい身なりの者らが溢れ、辻サイネージのタイクーン映像に、説法師に群がるように群がっていた。「メデタイ!」「オモチが配られるぜ、きっと」「ヘッ、どうせ見掛け倒しだ」「不平等だ!」「態度が悪い」 11

2020-03-20 21:40:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺はいずれ次のセンシに成り上がってやる」「お前じゃ無理だよ」「クソッ、俺だって……骨折しなければ」「絶対こいつは次のイクサで死ぬだろうな。そういう顔してるわ」「素敵ドスエ、凄みがアリンス」ざわつく民衆たちの後ろを、クレイグ達はしめやかに通り過ぎる。何人かはボンズを拝んだ。 12

2020-03-20 21:44:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『この者には私自らがセンシの名を与えた。国民よ、胸に刻め!』タイクーンは右側の2本の手で、マキモノを下に開いた。マキモノには雄々しき直筆カタカナで「ドーンブレイド」と書かれていた。『讃えよ!ドーンブレイド=サンを!』パパラパパパラー!「ドーンブレイド!バンザイ!」「バンザイ!」13

2020-03-20 21:48:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タイクーンはマキモノを丸め、ドーンブレイドに授与した。ドーンブレイドはオジギして受け取った。タイクーンは咳払いし、演説を続けた。『彼は精強なるセンシとして、最初の任務に臨む。即ち、惰弱なる逃走者の討伐である!』「エエッ!?」「惰弱?」「逃走?」市民がざわめいた。「最悪だな!」 14

2020-03-20 21:51:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

『名は、カネト・ヒバ。チューニンとして栄光の地へ招かれながら、惰弱にも試練を前に逃走せし者也。我が儀式はさようなまがい物を炙り出す場でもあるゆえ、心配にはあたらぬ。だが、見過ごすわけにはゆかぬ。これはドーンブレイド=サンの試練也。協力せよ!奴はいまだこの都に居る筈だ!』 15

2020-03-20 21:55:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

画面が切り替わり、映し出されたのは、寂しくなった前髪を短髪のモヒカン状にしてごまかした男の姿だった。クレイグの隣で、カネトが落ち着かなげにメンポを手で押さえた。顔写真の隣に、「チューニン装束装着想像図」と注釈された、今のカネトの装いのモンタージュすらも映し出された。 16

2020-03-20 21:59:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「キョロキョロするな」クレイグは囁いた。「チューニンの見た目は同じだ。すぐにはわかりはせん。ボンズと一緒に居るという可能性も考えられていない。単独で居ると考えている筈だ。気にせず先を急ぐぞ」「ア、アア」カネトが答えた。彼は呟いた。「かたやセンシ……かたや惰弱な逃走者だ。畜生」 17

2020-03-20 22:02:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「お前は俺達と出国する道を選んだ。そこから先はお前自身が決める事。たまたまそれまで一緒に居た奴の事など考えるな」クレイグは言い切った。カネトは弱々しく笑った。「あんた優しいよな」「……今は優しいとか厳しいとか、そういう状況ではないことを、まず考えろ」「ああ。わかったよ」 18

2020-03-20 22:04:34