エスケープ・フロム・ホンノウジ#6

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【前提知識】 ・世界はニンジャ。 ・近代国家はもう無い。暗黒メガコーポの諸都市が世界中に存在。 ・蘇った明智光秀がカナダ地域に築いた圧政国家「ネザー京」に対抗するべく、暗黒メガコーポは「UCA」（United Corps of America）を組織。 ・UCAの強行偵察隊はネザー京の首都、本能寺に潜入。

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【今回の話は】 ・クレイグ隊長率いるファイアストーム隊は本能寺で北米カラテ汚染の原理を観測する事に成功した。汚染源は地獄じみた異次元につながる黒いポータルだった。この過程で博士は死んだ。 ・クレイグ達は託された観測データを持ち、本能寺を脱出せねばならない。

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・クレイグ：「ファイアストーム隊」の隊長。超自然障壁を召喚する「タタミ・ジツ」の使い手 ・カネト：ネザーキョウのチューニンであったが、明智光秀直々の試練に耐えかねて逃走。亡命を希望する ・ドーンブレイド：明智光秀の試練を経て名を与えられた強力なニンジャ。亡命者狩りの任務を受ける

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【ファイアストーム隊】 ・トム・ダイス：実直な男 ・アシュリー：博士の護衛役。博士は死亡した ・レザ：合流した留守番役。瀕死 ・ブレイン：感受性が強い。発狂しつつある ・ジェフ：元犯罪者、筋肉質のハッカー ・ホルヘ：ムードメーカー。死亡

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カァン！カァン！カァン！カァン！外では警報鐘が鳴らされ続けていた。ファイアストーム隊は表口・裏口に銃を向けて、スシ・バーに籠もっていた。床にはレザが横たえられ、トムがメディ・キットによる処置を試みていた。カウンターの裏では拘束された従業員が震えている。　1

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レザの傷は絞首台だけではない。スリケンの傷も重かった。「しっかりしろ。後は、逃げるだけだ」トムは処置を終え、レザを助け起こした。レザは小刻みに震えていた。トムはレザに乞われ、両手にサブマシンガンを持たせた。（連れて行くのか）カネトがクレイグに囁いた。（アイツはもう無理だぜ）　2

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クレイグはカネトを睨んだ。カネトは気圧された。「クソッ……まあいい。最善の選択をするのはあんただ。くれぐれもな」カネトは店から奪った街頭地図を逃走経路を書いていく。「門は閉じられちまっている筈。そうなると、壁外に逃げるには運河を使うしかない」「そうだな」　 3

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「あの忌々しいカラテ山の下をまた通るのか？」ジェフが戸口を警戒しながら言った。「あの何千人のニンジャどもの中に突っ込んで行けと？」「いや、当然それはしねえ」カネトがマーカーを引く。「屈強区を通る必要はあるが、山には向かわない。瞑想区だ。瞑想区も運河に接してるんだ」「瞑想区？」　4

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「ボンズみてえな神聖職や医者、鍛冶職人、技師、そういう連中が暮らす。ザゼンをしてキンカク・テンプルを感じ、技能に注ぎ込むんだ。タイクーンは連中にシンピテキを感じる為の場所を与えた。偉いやつらと、技術職が住む」「警備は厳重だな」「今更どこも一緒さ。時間の問題だ……」　5

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「隊長。行ける。もう行ける。十分休んだ」レザがかすれ声で言った。トムが肩を貸そうとしたが、クレイグがかわった。ニンジャのほうが強い。「生きろ。生きる事だけ考えろ。レザ＝サン」「勿論だ。こんなクソッタレ帝国で死ぬのは嫌だからな……」その時だ。「アイエエエ！」ブレインが叫んだ！　6

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部隊に緊張が走った。その瞬間！KRAAASH！スシ・バー全体が鳴動した！「これは！」KRAAAASH！さらに震動！「スモトリだ！」カネトが叫んだ。ジェフは狼狽えた。「クソッ！人質もいるんだぞ！」「解放しろ！」クレイグが命じた。トムがすぐに従った。「アイエエエ！」従業員は出口に走った。　7

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KRAAASH！KRAAASH！KRAAASH！激しい震動！「裏だ！行け！」部隊は裏口を蹴破り、飛び出す！「ウオオオーッ！」BRRRRTTTTT！BRATATATATATA！待ち構えていたゲニンに、ジェフとトムがアサルトライフルを撃ちまくった！「グワーッ！」「グワーッ！」「グワーッ！」　8

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「オオーッ！」折り重なって倒れる死体を越え迫るゲニンに、カネトがスリケンを投げて殺す！チューニンはゲニンよりも強い！だが！「イヤーッ！」狭い路地、壁から壁へ跳ね、茶色い装束のチューニン２人が飛びかかってきたのだ！「イヤーッ！」クレイグは超自然タタミを空中に生じる！「グワーッ！」 9

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一人は空中に生じたタタミ壁に顔面から衝突して落下し、トムのナイフでトドメを刺された。もう一人はスリケン数枚で撃ち抜かれ、死体となってタタミに衝突した。カネトだ。「進め！」クレイグはレザを抱え、曲がりくねった道を指差した。バチバチとネオン看板が光った。「不如帰」と書かれていた。　10

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KRAAASH！「ドッソーイ！」KRAAAASH！彼らが後にしたスシ・バーが土煙に包まれ、崩壊した。ナムサン！「スモトリが来ればああなる！」カネトが言った。「奴らはハンマーで家屋をブッ潰す。インターネットしてる家やら、火事の家やら、なんでも潰し慣れてるんだ」「ファック」部隊は速度を上げた。11

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」後方の脇道から次々にゲニンが回転ジャンプで現れ、部隊を追ってくる。しんがりをゆくアシュリーがガトリングガンを向けた。BRRRRRRRRTTTT！「グワーッ！」「グワーッ！」「グワーッ！」次々に倒れてゆくゲニン！だが潰れたスシ・バーを踏み越え、スモトリの影が迫る！ 12

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DOOOM！DOOOOM！「ドッソイ！」「ドッソーイ！」巨大木槌を持ったスモトリゲニン２人が、邪魔な柱や家の壁を叩き潰しながら迫る。BRRRRTTTT……「アバーッ！」１人が弾の嵐を浴びて転倒、死！迫るもう１人！アシュリーは舌打ちした。マガジン交換が必要だ。だがスモトリは頭突き突進！「ドッソイ！」13

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「……！」「イヤーッ！」クレイグはアシュリーの眼前にタタミを生じた。KRAAASH！スモトリが頭からタタミにぶつかった。亀裂を生じたタタミの上に、意を決して飛び乗ったのはカネト。彼は再跳躍、ストンピングでスモトリの脳天を砕いて殺した！「アバーッ！」「く……来るなら来やがれ」「前へ！」 14

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BLAM！BLAM！BLAM！BRATATATATA！BRATATATATATA！撃ち、走り、撃ち、走り、路地から現れるゲニンを殺しながら、ファイアストーム隊は陰鬱なネオン街を通り抜けた。デジタルサイネージに映るのは、タイクーンが画面に向かって指を突きつける映像、カネトとドーンブレイドのアップの写真だ。　15

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「忌々しいぜ」ジェフが呟く。「だがこのホンノウジも、一皮むけばLANが生きてる。こうやって街中にデジタルデータを送ってやがる事が、実際その証拠なんだ」アケチ・ニンジャはインターネットを禁じ、文明社会に宣戦布告する……だが、実際その判断にはグラデーションがあるようだった。　16

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「奴は何故インターネットを禁じるんだ」ジェフに尋ねられたカネトは少し考え、答えた。「弱い連中が複雑で面倒な事をしてるのがムカつくって話だ。だけど……俺に訊くなよ。俺だって、殿の判断は実際間違ってないと思うぜ。裁量がほしければカラテで強くなればいい。まあ、俺は落伍したがよ……」　17

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「アイエエエ！ヤアアーッ！」ブレインが頭を抱え、頭上を見て白目を剥いた。そこは屈強区に繋がるゲートであったが……このゲートの支柱には五重塔が繋がっていた。塔の中で燃える超自然的な火は、ゲート前の広場からでも感じ取る事ができた。空気は異様な濃密さで、ブレインでなくとも苦しかった。18

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（ハンニャー……ハンニャー……）「ヌウウッ……！」クレイグは呻いた。彼のニューロンに正体不明の波が立った。去来したのは、黒いポータルで経験した壮絶な世界の光景、輝く黄金立方体、そして……ナムサン……のたうつ肉塊、空を駆ける龍、焼けた大地を進軍するオニ達のビジョンだった。　19