日本労働研究雑誌 2020年1月号~特集1:行動経済学と労働研究 / 特集2:AIは働き方をどのように変えるのか
日本労働研究雑誌 2020年1月号~特集1:行動経済学と労働研究 / 特集2:AIは働き方をどのように変えるのか / jil.go.jp/institute/zass…
2020-03-31 00:34:08[PDF] 行動経済学と労働研究 提言:労働研究における行動経済学の有効性 大竹 文雄(大阪大学大学院教授) / jil.go.jp/institute/zass…
2020-03-31 00:34:5720年以上前,「罰則規定がない努力義務規定だけの法律が効果をもつのは,経済学ではどのように説明するのですか?法律学ではうまく説明できない」とある労働法学者から質問を受けたことがある。当時,私はまだ行動経済学を研究していなかったため,その質問にうまく答えられなかった。
2020-03-31 00:34:57しかし,現在では,行動経済学から答えることができる。人々の行動は,狭い意味の金銭的なインセンティブだけではなく,社会規範や心理的インセンティブにも影響されていると行動経済学では考える。
2020-03-31 00:34:58(・д・)ホォー 努力義務規定は,社会規範を形成するのに有効であり,努力義務規定に基づいて行動することがデフォルトであると人々に認識させることに成功すれば,その規範から外れることが,金銭的罰則を受けることと同様に人々に感じさせるのである。
2020-03-31 00:34:59[PDF] 行動経済学と労働研究 行動科学の視点から見た行動経済学 亀田 達也(東京大学大学院教授) / jil.go.jp/institute/zass…
2020-03-31 00:36:03政策応用の道具となる“認知バイアス”については,それが働く境界条件についての科学的な理解や慎重さが十分ではないように思われる。“政策・工学”プログラムに留まらず,行動経済学の“研究・開発”プログラムとしての進歩を考えるなら,「あるある感」に基づく素朴理解を超えて,
2020-03-31 00:36:04バイアスが生起する認知・神経機序(パラメーター)を理解し,バイアスの境界条件に留意することが必須ではないだろうか。そのためには,バイアスを単に「認知的ケチ」の現れとしてではなく,それが生存に対して持つ生態学的機能に注目することが有効な研究戦略だろう。
2020-03-31 00:36:05Journal of Personality and Social Psychology (JPSP) 掲載の論文が経済学のジャーナルで2018年に引用された頻度 pic.twitter.com/sX9Pff5fKy
2020-03-31 00:36:06心理学の実験で明らかにされた“非標準的”(non-standard)な選好(時間的非整合性,社会的選好,参照点依存),信念(自信過剰,投影バイアス,少数の法則,経験効果),決定(注意限界,フレーミング,情動の影響)がこのモデルとずれることを指摘し,
2020-03-31 00:36:07これらのバイアスを経済学の諸問題に,ナッジ(Thalerand Sunstein 2008)的に応用することの重要性を説いている。そして,そのための具体的なストラテジーとして,
2020-03-31 00:36:07心理学の主要ジャーナル(Journal of Personality and Social Psychology, Psychological Science, Psychological Bulletin, Psychological Review)を読むことが推奨されている。
2020-03-31 00:36:08(・д・)ホォー カリフォルニア大学バークレー校経済学部 Stefano DellaVigna 教授による,大学院科目 “Applications of Psychology and Economics” のシラバスと講義ノート
2020-03-31 00:36:32「心理学の最新の知見を追うな。異なる研究者によって再現されている知見を探せ。そのために Google Scholar を使え。心理学論文では通常 3~6個の実験が報告されているが,そのなかでもっとも強い実験だけに注目せよ。“理論”パートは飛ばし,デザインと結果に直行せよ。
2020-03-31 00:36:33心理学者は“新しい効果を見つけた”と主張しがちだが,むしろ統一的なテーマを探せ。メタ分析を読め。しかし,ダメな実験がいくらあっても 1 つの良い実験にはならないことに留意せよ。再現可能性に関する心理学のスキャンダルをチェックせよ。」
2020-03-31 00:36:34(。 ・ω・)フム 現在の研究状況を見る限り,現状維持バイアスの原因や発生機序については,損失回避,授かり効果,リグレット,機会費用,心理的コミットメントなどの“多様な要因”が「関与する」とされるのみである。現状維持バイアスが「さまざまな場面」で見られることは
2020-03-31 00:37:21経験的に確かめられている一方(Samuelson and Zeckhauser 1988),バイアスがどの範囲で働くのか,その境界条件(boundary conditions)は未だに明らかにされていないし,境界条件を検討する研究もほとんど存在しない。
2020-03-31 00:37:21言い方を変えると,現状維持バイアスは,研究者コミュニティにおける“確証バイアス”(confirm ationbias)によって維持されているという皮肉な見方も成立するかもしれない。
2020-03-31 00:37:22周知のように,確証バイアスとは,仮説や信念を検証する際に支持する情報ばかり集め,反証する情報を無視または集めようとしない傾向を指す(e.g.,Klayman and Ha 1987;Trope and Bassok 1982)。
2020-03-31 00:37:24(´ω`;) (社会心理学について)あえて非常に厳しい言い方をするならば基本的に「ごみ箱型経験主義」だというふうに思います。どういう意味の「ごみ箱(bin)」かというと,社会心理学の基本的なアプローチというのが,「常識に反するとみんなが思う面白い現象」を
2020-03-31 00:38:37雑多に追求しているようにしか見えないということです。基本的にそういう現象をたくさんコレクションして箱に突っ込み,心的に何かピタッとくるような,そういうのってあるよねという「あるある感」に基づく心理的な現象記述をして,それをミニ理論として主張する。
2020-03-31 00:38:38社会心理学のことを詳しくご存じの,とくに外部の方は同意されると思うんですけれども,基本的にモデル的な思考が欠けている
2020-03-31 00:38:38(・д・)ホォー 現状維持バイアスを,心理学者は実験という手法を用いて 1970年代に「発見」した。統制された実験および統計的検証という手法は確かに厳密だが,「発見」されたバイアス自体は,まったくの素人を含む誰にとっても自明な知見であり,
2020-03-31 00:38:39そこには何の驚きもない(=あるある!)。とすれば,1970年代に始まったバイアス探しの“素朴心理学的アプローチ”は,21世紀に入ったあたりで鉱脈をほぼ掘り尽くし,エルドラドはもはや存在しないのではないか。
2020-03-31 00:38:39「心理学者は“新しい効果を見つけた”と主張しがちだが,むしろ統一的なテーマを探せ」という DellaVigna 教授のレッスンの(言外の)意味は深甚であり,素朴心理学者が見つけることのできる,真の“新しい効果”はもはや掘り尽くされ,存在しないのかもしれない。
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