【発狂頭巾エレキテル第3話:ぎらつく眼は殺しを見抜く】

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【発狂頭巾エレキテル第3話:ぎらつく眼は殺しを見抜く】 (2話までのあらすじ:目の前で家族を殺されたトラウマ(妄想)が八百八個ある狂った同心の吉貝は、平賀源内に脳内エレキテルを埋め込まれたことで日常を取り戻した。しかし、空が鈍く曇るときは狂気を発揮して悪党を成敗していた。)

2020-04-04 16:46:29
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「てえへんだ!キチの旦那!」岡っ引きのハチが吉貝の長屋へ駆け込んでくる。「どうしたハチ?」「人斬りだ!」「なんだと」天下泰平花の大江戸とはいえど、未だに殺しの話は尽きない。吉貝はおっとり刀で現場へと駆けつけた。

2020-04-04 16:49:04
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現場の河原では、すでに蓙を掛けられた死体があった。周りを何人かの同心が囲んで現場検証を行っている。「いや、すまねえな、遅くなちまって」「お、キチさん、こいつを見てくれ……」先に現場検証を行っていた同心が蓙をめくって死体を見せる。「こいつは……ぐっ!」

2020-04-04 16:51:50
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死体を見た途端、突如頭を抱えてしゃがみ込む吉貝。「うぐああ……!」「ちきしょうめ!こんなときに発作かよ。ハチ!先生のところへ連れて行ってやんな」「がってんでい!さ、肩を貸してくだせえ」ハチはしゃがみ込む吉貝を引きずり起こして肩を貸し、現場を去った。

2020-04-04 16:53:51
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「先生!源内先生!」ハチが長屋の1室のふすまを開けて叫ぶ。「吉貝のやつか」源内先生と呼ばれた老人は驚きもせずに二人を部屋に招き入れる。部屋の中は奇妙なからくりで溢れかえっていた。ここは江戸一番の発明家でありカラクリ狂いでありエレキテルの第一人者でもある、平賀源内のすみかだ。

2020-04-04 16:56:19
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「フウゥー……!!」血走った眼で今にも暴れまわりそうな吉貝。どうにか必死に堪えているが、手早く処理が必要だ。「ハチ、ちょっと離れててくんなよ」両手に電極を持った源内が、吉貝のこめかみを挟み込むように電極を押し当てる。「アギャギャギャギャッ!!!!」

2020-04-04 16:58:37
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凄まじいエレキテルが吉貝の脳を駆け巡り、脳内に産まこまれた電極を活性化させ、吉貝のトラウマ(妄想)を抑え込む。「どれ?どうじゃ?」源内が電極を離すと、ぐったりとうなだれた吉貝は平静を取り戻す。「いつもすまねえな……源内先生」

2020-04-04 17:00:32
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「キチの旦那、また例のアレですかい?」「ああ……あの仏さん、かんざしをつけていなかったか?」吉貝は先程掘り起こされたトラウマ(妄想)を河原の死体と重ね合わせて語り始めた。「かんざし、ですかい……?」

2020-04-04 17:02:22
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

「ああ、変わった形のカンザシでな。まっずぐじゃなくて波のような唸りがついてんだ。……おヨネに買ってきてやった土産だった」「はあ、そうですかい……」当然、今回の死体はおヨネ(吉貝の元妻、帰りが遅いと心配して探しに行ったら辻斬りにあっていたという痛ましい過去(妄想)がある)ではない。

2020-04-04 17:05:38
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

「こうしちゃいられねえ、あのカンザシはおヨネの宝物だった。大切にしてくれててよぉ……見つけてやらなきゃ無念で極楽にもいけやしねえじゃねえか」吉貝はすっくと立ち上がると、源内に頭を下げて町へ飛び出した。「ま、待ってくださいよ!あっしも行きます!」

2020-04-04 17:08:14
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「頼んだぞ、ハチ。吉貝を助けてやれるのは、お前さんだけなんじゃからな……」源内は、慈悲深く、あるいは哀れみに富んだ眼で、二人を見送った。

2020-04-04 17:09:35
戦車 @MoterSensha

ハチ、ただの介護の付添のひとになっとらんかハチ……

2020-04-04 17:10:45
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……吉貝とハチは一日中、波打ったカンザシを探した。だが、見つかるわけがない。そんな物、この江戸には存在しないのだから。日が暮れた町のめし処で吉貝とハチは途方に暮れていた。「探しものってのはよぉ、ハチ。探そうと思ってるときにゃあ見つからねんもんだなぁ……」「まあ、そりゃあ……」

2020-04-04 17:11:45
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「ま、今日はもう飯食って酒のんで寝て、明日にでも出直しましょうや。おーい!酒2本と飯をくんな!」「はーい!」落ち込んだ二人とは裏腹に、飯屋は活気に溢れている。すでに景気よく酒を飲んで酔っ払っている客も多い。

2020-04-04 17:13:55
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こうしている間にも、吉貝は客にですら目を凝らす。なにか、なにか手がかりはないか?「はい、どうぞ!」「お、来た来た。ささ、旦那、まずは飲みましょうや」「……ああ」どうにか元気づけようとするハチの気概に答え、吉貝はおちょこを手に持ち、酒を受ける。

2020-04-04 17:16:04
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

吉貝は注がれた酒をぐいっと呷り、一つ大きくため息をつく。「し、しかし、あっちの客は随分気前よく飲んでますぜ。ほら」ハチが話題を変えようと奥に座って酒を飲む2人を指差す。吉貝が見ると、たしかにやけに陽気だ。それに、あまりここらへんでは見たことがない顔のようだ。「……おい、ハチ」

2020-04-04 17:18:54
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「なんです?旦那?」手酌で酒を飲みほろ酔いのハチが笑顔で答える。吉貝はハチに顔を近づけ、静かにつぶやいた。「あの二人、店を出たら後をつけるぞ」「え?」「俺の感が正しけりゃ、あの2人、なにかある」その眼はどこか遠くを見ていた。

2020-04-04 17:21:42
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

こういうときの吉貝は何かをやらかす前兆だ。このままでは死体が2つ増えることになる。「……旦那、今夜はアッシにまかせて休んでくだせえ。なあに、後をつけるくらい一人でできまさぁ」「しかし……」「まあまあ、いいですから」

2020-04-04 17:24:42
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

「だが……」「あ!そうそう!」急に何かを思い出したようにわざとらしくハチが声を上げる。「今夜は源内先生にもう一度様子を見てもらうんでしたよ!いやあ、すっかり忘れてました!」「そうだったか?」「そうですよ!ほら!」再びハチは顔を近づける。「だからココはアッシにまかせてくだせえ」

2020-04-04 17:27:34
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

「わかった。頼むぞ……」「へい!」二人の話は決着が付き、酒を飲みつつ飯を食いながら、件の2人が店を出るのを待った。しばらくすると2人が店を出たので、後を追うように店を出る。吉貝は源内先生の元へ向かい、ハチは尾行を開始した。

2020-04-04 17:30:05
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

ハチの尾行は決して完璧とは程遠かった。桶をひっくり返したときなど肝を冷やしたほどだ。しかし、今回は生んだ良かった。追う2人組はしたたかに飲んでおり、多少の騒ぎなど気にしていなかったからだ。そのまま2人組は街の中心から離れ、どんどん裏道へと進んでいく。そして、ついに足が止まった。

2020-04-04 17:32:30
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

「約束の金をいただきやしょうか」二人組が、誰かと話をしているようだ。「まず先に物を見せろ」「へいへい。おい!見せてやんな!」「へへ、これでさあ」二人組の子分肌のほうが、懐から何かを取り出す。「ありゃあ……もしかして……」ハチは目を疑った。それは、いびつに歪んだカンザシだった。

2020-04-04 17:35:07
ホソカ @5hosokawa

不気味なほど当たるときもあれば、てんで外れることもあるのが発狂頭巾のカンなんだよな…

2020-04-04 17:38:52
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

「フム、たしかに……」取引相手の男はそれを奪うと、懐へとしまった。「ところで、女の方はどうした?」「このカンザシをつけてた女ですかい?ちょいとばかり抵抗してきやがりましてね、あの世に送ってやりましたよ」「なるほど、つまり、このことを知っているのはお前たちだけということだな?」

2020-04-04 17:37:23
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

「もちろんでさあ。誰も見てねえところでバッサリ……」「そうか、ならば安心だ」上機嫌で話す二人組の兄貴分の言葉を聞き、取引相手の男は抜刀して大上段に構える。「ま、まさか……!」二人組は逃げようとしたが、良い出足がもつれて尻餅をつく。

2020-04-04 17:40:32