悪堕ち作品に堕ち後の物語を求めること

悪堕ち作品には対象者が堕ちて終わる作品も多いのですが、堕ちた後の話まできちんと欲しい、という意見はよく見られます。この理由を、悪堕ちジャンルがどのように変遷していったのかを軸としてまとめます。
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小川 小@共同製作ゲーム発売中 @ogawa_syou

世の堕ちもの作品には短めでいいから数ヶ月~数年経って堕ち後がすっかり定着した日常描写いれほしい、お金払うから

2020-04-09 13:30:30
あづ @ADU_64

【アンケート】悪堕ち作品で堕ち後のシーンは必要だと思いますか。

2020-04-09 14:59:41
悪堕研究機構 @utakuochi

悪堕ち作品には、堕ちた後に悪堕ちがすっかり定着した日常描写を入れて欲しい、という意見はよく見られるもので、「悪堕ち作品は悪堕ち後もきちんと描写して欲しい」という派閥のひとつです。これが先鋭化したものが「二次元エンド」に対する嫌悪なのですが、そんな感じで本当に昔からよく言われます。

2020-04-09 14:32:26
悪堕研究機構 @utakuochi

「二次元エンド」という言葉が登場するのは2005年頃です。その頃、快楽や調教によって堕ちるヒロインの作品を数々出版していた「二次元ドリームノベルズ」というレーベルがあり、今では多種多様に別れているので「二次元シリーズ」とも言うべきなのですが、そういう作品によく見られた傾向です。

2020-04-09 14:35:48
悪堕研究機構 @utakuochi

当時は「快楽や調教によって堕ちた(つまり今で言う悪堕ち)ヒロインが最後に復活して正義が勝つ展開」のことを「二次元エンド」と呼んでいましたが、時代が進むにつれて「作品の最後で悪堕ちとして楽しめない展開になること」をざっくりと「二次元エンド」と呼ぶようになりました。

2020-04-09 14:37:35
悪堕研究機構 @utakuochi

これは当時から、というよりは有史以来という感じで人間のサガというものでしょうか、(主にアダルト向け作品で)主人公が外的な力によって堕落していくときに、堕落の瞬間にオーガニズムに達するのでそこまででいいという人と、それはそれとして最後に正義が勝たないと安心できないという人がいます。

2020-04-09 14:41:52
悪堕研究機構 @utakuochi

いったんこの事実だけを見ると、一連の議論に関しては次のような要素が隠れていると考えられます。 ①作品に求める悪堕ちの肝 悪堕ちする瞬間に全てを捧げるのか(シチュエーション重視)、悪堕ちする物語としての完結を望むのか(物語重視) ②安心できる結末 正義は勝つ VS 悪堕ち至上主義

2020-04-09 14:50:17
悪堕研究機構 @utakuochi

まず、①がシチュエーション重視だった場合、物語は重要視されませんので、結末がどうなろうと対象者が悪堕ちする(していく)というシチュエーションが楽しめれば問題ないでしょう。二次元エンドに代表される当時の二次元ドリームノベルズの作品群がアダルト向け作品だったことからもこれは強固です。

2020-04-09 14:52:00
悪堕研究機構 @utakuochi

二次元の作品群が悪堕ちの代名詞になったのは様々な理由があります。 ・90年代後半から洗脳や調教などの鬼畜系の作品がアダルト向けで人気になってきた ・二次元系列が「戦うヒロイン」を題材にするレーベルだった  → 「戦う=敵が存在する」という構図は「敵になる」という悪堕ちと相性が良い

2020-04-09 15:00:07
悪堕研究機構 @utakuochi

・2000年代の萌えブームによって「戦うヒロイン」自体が受容されていった ・2000年代前半に悪堕ちジャンルが成立 などが大きな要因でしょうか。 これらによって、二次元系列は「戦うヒロインが堕ちる性的消費作品」の代名詞となったわけです。

2020-04-09 15:05:38
悪堕研究機構 @utakuochi

ただ、あくまで悪堕ちジャンルの成立と二次元系列の台頭が同じタイミングであったため「戦うヒロインが堕ちる」ことを「悪堕ち」と考える人が増えていったのですが、一方でその弊害として「快楽堕ち」も「悪堕ち」と考える人が出てきました。これはジャンル内で「違うんだよなぁ」と禍根を残します。

2020-04-09 15:08:21
悪堕研究機構 @utakuochi

アダルト向け作品の意義は、性的に消費されることです。「戦うヒロインが洗脳や調教によって悪に堕ちていく」ことが性的に興奮できるのであって、「堕ちる前と堕ちた後のギャップに萌えるんだよね」という主張はその後に出てきたものです。「悪堕ち」という名前が与えられることで遡及が行われた、と。

2020-04-09 15:12:47
悪堕研究機構 @utakuochi

そういう意味では昔から現在まで、悪堕ちはシチュエーション重視だからエンドが軽視される、と言えます。 この観点からは、「②安心できる結末」は「悪堕ちが興奮できることは分かったのでもっと興奮したい」という消費者の声によって提起されたと言っても過言ではないでしょう。

2020-04-09 15:14:33
悪堕研究機構 @utakuochi

二次元エンドでは、なぜ堕ちたはずのヒロインが正気を取り戻して悪を打ち倒すのか。それは、当時の認識だと、その方が安心できるから、というもので、これは今もそう考える人は多いでしょう。基本的に勧善懲悪が道徳として求められますし、そういう結末が大半の人にとっては安心できます。

2020-04-09 15:16:32
悪堕研究機構 @utakuochi

戦うヒロインを洗脳や調教によって堕とすことに反道徳的な享楽を感じることは性的消費として全く問題ない姿ですが、一方で後味はスッキリ終わりたい、という願いがヒロインを勝たせてしまうと解釈できます。 が、悪堕ちジャンルの認識が深まるにつれてそれでは満足できないという人が出現します。

2020-04-09 15:18:22
悪堕研究機構 @utakuochi

元々「悪」とは、確かに「敵役」という意味はありますが、そのほとんどにおいて「禁忌」「撲滅すべき対象」とされてきました。これが90年代前半からの個人主義の台頭と、絶対的悪の陳腐化によって、2000年代中盤に「悪」は「主人公側が備えていない魅力を備えている組織」という認識になっていきます。

2020-04-09 15:27:21
悪堕研究機構 @utakuochi

「悪」が魅力的だと思う風潮は昔からありましたが、「悪の組織」を「主人公の隣人」のように「悪の組織にも主人公と同じ日常がある」というのを描く作品が増えたのが2000年代中盤だと考えています。 この流れによって、相対的に「悪」の禁忌度が下がり、正義が勝って終わる必要がなくなりました。

2020-04-09 15:29:46
悪堕研究機構 @utakuochi

こういう時代の流れと悪堕ちジャンルへの理解が深まることで「悪堕ちは堕ちた後の話を寄越せ、二次元エンド反対」という声が上がってきました。 さて、そういう主張が妥当なものとして受け入れられるようになったのはいいのですが、なぜ「正義が勝つ」ではなく「悪が勝つ」と安心できるのでしょうか。

2020-04-09 15:32:21
悪堕研究機構 @utakuochi

理由は様々に考えられますが、1つ大きいのは、「ヒロインを堕とす悪は理想的なものであって欲しい」という願いがあると思います。「悪が勝つ(正義のヒロインが堕ちて負ける)結末」を支持する読者は、その悪を理想的なものだと思っているからその結末を肯定するのだ、という考え方です。

2020-04-09 15:37:54
悪堕研究機構 @utakuochi

堕ちた先の悪が理想的なものだ、完全なものであって欲しいという願いが悪を勝たせますし、悪が勝ったことの証明として「堕ちた後の後日談」を肯定します。つまり、後日談があるということは読者にとっても、堕ちた先の悪が魅力的なものであり、勝利者でもある(正史となる)ことが証明されるわけです。

2020-04-09 15:43:28
悪堕研究機構 @utakuochi

これが「悪堕ちが好きな人が求める安心の結末」、もう少し詳しく言えば、自分が理想的に思っている「悪」が勝利して終わったことに対する満足感です。 今回長めに語りましたが、これが「堕ちた後に悪堕ちがすっかり定着した日常描写を入れて欲しい」理由の中で占めるウェイトが大きいと考えています。

2020-04-09 15:47:16
月夜 のかに @Tsukiyono_KANI

落ちるのがオチだと、結局「悪堕ち」したっていう事実にしか興奮できないけど、 堕ちてからの日常描写あると、あー完全に染まりきったんだなぁって実感出来ていい

2020-04-09 14:38:25
悪堕研究機構 @utakuochi

これも、「悪」が勝利した正史に安心感を覚える例ですね。 悪堕ちした後に後日談があるということは、「悪」が完全なもので、堕ちたヒロインがそれを肯定している、っていう感じで、ああ、悪に染まりきったんだなぁ、ということが証明されます。

2020-04-09 16:15:57