映画『許されざる者』傑作西部劇のストーリー構造と複数のテーマを分析&解説(ネタバレ有り)
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そして妻クローディアとの決別である 亡き妻への愛着と忠誠心は、劇中では第二幕後半の開始直後、隠れ家で目覚めた場面で描かれている 顔にいくつもの傷跡をもつ娼婦デライラは、天然痘に冒され、やはり顔に無数のあばたをつくったであろうクローディアをマニーに思い出させたはずだ
2020-04-09 20:43:48報酬の「先払い」をデライラは申し出ている つまりマニーは妻の鏡像に貞節と忠誠を試されていたということになる デライラはマニーの誠実さを称揚するが、マニー自身は複雑な内心だ 彼が行おうとしている殺人という「暴力」に酔うことこそ、クローディアが最も厳しく禁じたはずのものだったからだ
2020-04-09 20:50:55元相棒を殺され、そして新しく得た若い相棒がすぐに離脱するに至り、マニーは自分が特別な存在であることを自覚する 妻に永遠の愛情を誓いつつも、マニーは容赦なく殺人を犯し、その精神的な支配から解き放たれる マニーの内部にあるのは、もはや自分は許されるべき存在でない、という確信だ
2020-04-09 20:56:06「俺はこんな死に方をするはずじゃなかったのに…」と呟くリトル・ビルへライフルを突きつけながら、マニーは「『はず』(deserve)かどうかなんて関係ねえんだよ」と吐き捨てる 「deserve」という単語は作中で幾度も、様々な登場人物の口から発せられている
2020-04-09 20:59:43『許されざる者』の世界では、誰もが正当な対価や処遇を得ることができない かつての西部劇で描かれていたような、勧善懲悪で筋の通った結末を迎えることはない 極悪人マニーは愛する妻クローディアによって真人間に生まれ変わった「はず」だったが、それが事実ではなかったことが明らかになる
2020-04-09 21:05:13家族への愛情はまぎれもない真実でありながら、マニーは自分が永遠の犯罪者であることを自覚する 作品の始まりと結末は、いずれもマニーとクローディアの別れの場面だ 哀感に満ちたこの物語に込められたイーストウッドの詩情に、多くの観客が思いを馳せることだろう
2020-04-09 21:15:36