虚構本格ミステリと後期クイーン的問題

第一回メフィスト評論賞受賞作「ガウス平面の殺人」にまつわるあれこれ
3
@quantumspin

「『塗仏の宴』と後期クイーン的問題」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1339689

2019-04-20 07:21:38
@quantumspin

そういえば、ロベルト・ベルガンティが「意味のイノベーション」という話をしていますね。テクノロジー・プッシュやマーケットプルといった従来のイノベーションの在り方と対置して、技術や人の置かれた文脈を解釈し直すタイプのイノベーションを指し言っています。

2019-08-06 17:22:56
@quantumspin

事例としては何よりiphoneが有名でしょうが、この他にもuberのカーシェアリングとかnintendoのwiiとか、いずれも既存の技術に別の角度から光を当てて、それまでのモノの用いられていた文脈を再解釈しているというわけです。

2019-08-06 17:29:20
@quantumspin

ユーザーニーズというか困り事というか、従来の問題解決型のイノベーションが必要としてきた「課題」がなくなってきて、代わりに人々は『社会や時代の感受性と思考法を改め、自分のよしとする感じ方、考え方』を求めているというわけです。これは評論家である丸谷才一の言葉そのものです。

2019-08-06 17:38:08
@quantumspin

「意味のイノベーション」として効果的に引用されているのが、ヤンキーキャンドルの事例ですかね。ロウソク産業が電球の発明によって斜陽業界となるなか、暖かい雰囲気や香りを楽しむロウソクの新しい解釈を提案し売上を伸ばしたというもの。ロウソクの価値を「批評的」に換骨奪胎したわけです。

2019-08-06 21:35:32
@quantumspin

こういう事例を見ると、出版業界やミステリジャンルなどに想いを馳せてしまうのは私だけでしょうか。『時代の感受性と思考法を改め、自分のよしとする感じ方、考え方を広めて、文明に貢献する』評論活動を盛り上げようとする機運が最近高まっているのも、こうした背景や期待があるものかもしれません。

2019-08-06 22:03:56
@quantumspin

「意味のイノベーション」とは要するに、既成ジャンルを再解釈する話のように感じられます。従来のイノベーションは矛盾を駆動源にしていました。既成ジャンルに照らして矛盾する作品を排除するのではなく、弁証法的に止揚し既成ジャンルに組み入れていたわけです。

2019-08-07 17:33:54
@quantumspin

この例でわかりやすいのはロンドンのタワーブリッジでしょうか。橋を架けると船が通れないので、この矛盾を跳開橋という橋を作って止揚するわけです。しかし、これは単に、橋というジャンルのメンバーを増やしただけのものに過ぎません。

2019-08-07 17:39:34
@quantumspin

一方ヤンキーキャンドルの例は、ロウソクとはこのように使うものという、既成ジャンル意識そのものを読み換えてしまっています。本格ミステリに例えると、本格ミステリとは斯くあるべし、という定義論争を横目に、本格ジャンルそれ自体を再解釈し拡張してしまうようなものでしょうか。

2019-08-07 17:45:20
@quantumspin

既に出遅れているようですが、拙論『ガウス平面の殺人ーー虚構本格ミステリと後期クイーン的問題』がメフィスト評論賞に選ばれました。飽きもせずまたこのネタです。 kodansha-novels.jp/mephisto/criti…

2019-08-08 19:16:16
@quantumspin

そんなわけで、最近少しはましな文章を書けるようになってきたので、せっかくならできるだけ本格ミステリの可能性を押し拡げられる「意味のイノベーション」を目指したいですかね。いまはまだその片鱗すら見えていませんが。

2019-08-08 21:55:56
@quantumspin

後期クイーンライクな問題系のバリエーションは、問題と感じているのは誰で、誰が誰に対してそれを解決しようとしているのか、をあいまいにすると増えていってしまうものかもしれませんね。

2019-11-27 17:35:25
@quantumspin

例えば、『オランダ靴の謎』を後期クイーン的だと言う方と、後期クイーン的ではないと言う人とでは、問題の当事者を誰ととらえているかが違っていると思います。

2019-11-27 17:37:45
@quantumspin

以前『虚構推理』を後期クイーン的問題の解法のように論じておられた方を見かけた事もありますが、私はその意味を未だ理解できずにいたりします。

2019-11-27 18:08:19
@quantumspin

まあ識者によると『名探偵は「現実にいない」からリアリティがないのではなく、「現実には存在できない」からリアリティがない、ということが明らかになってしまったのが現代』らしいので、そもそも無粋な私などが理解しようと考えてはいけないのかもしれませんが。

2019-11-27 18:16:54
@quantumspin

後期クイーン的問題が下火になって久しいわけですが、と言うより、私がこの問題を考え始めた頃には既に「オワコン」と言われていたのですが、この問題、「正面突破なくしてミステリに未来なし」とまで言われた大問題とされていたわけです。

2019-11-28 08:08:37
@quantumspin

この温度差はどこから来るのか?かつて大問題だったものがなぜそうでなくなってしまったのか?私が後期クイーン的問題を考えるとき、常にこの問いも同時に突きつけられていました

2019-11-28 08:11:51
@quantumspin

そのうえ最近では本格ミステリブームが再燃していると言うから驚きます。かつて「ミステリコードの安易な反復は形式体系を自壊に誘」うとされ、後期クイーン的問題を正面突破することでしかそれを解決する術はないと言言われていたにもかかわらずです。かつての命題はどこにいったのか?

2019-11-28 17:29:06
@quantumspin

私が後期クイーン的問題を考えるときはそうした、先人の批評的積み上げとの整合性の再検討とセットでかんがえてしまうようなところがあるのですが、こうした考え方をされる方はどのくらいいらっしゃるのでしょうね。

2019-11-28 17:33:31
@quantumspin

そう考えていくと、後期クイーン的問題ってもう正面突破されたのかもしれない。しかも『虚構推理』は実質後期クイーン!みたいな軽いノリではなく、論理小説として本当に正面から突破してしまったのではないか。そんなふうに思えてきたわけです。

2019-11-28 17:40:57
@quantumspin

後期クイーン的問題が過去のものと衰退する時期は、ちょうどライトノベルミステリが台頭する時期と重なるわけですが、このライトノベルミステリなるジャンルも釈然としないところがあったわけです。

2019-11-30 08:36:35
@quantumspin

例えばミステリにおけるライトノベル的要素の取り扱いについて、先の『虚構推理』論では、鋼人七瀬のキャラクター性を作者の世代の問題として扱っています。ようするに『虚構推理』のまんが・アニメ的性格は刺身のツマと見做されているわけです。本当にそうですかね?

2019-12-01 08:39:30
@quantumspin

そもそも清涼院流水さんの作品がライトノベルと見做されている時点でついていけていなかったわけです。『コズミック』てそんなに“ライト”ですかね。

2019-12-02 20:44:20
@quantumspin

後期クイーン的問題とライトノベルミステリにまつわる言論のあれこれおかしなところを整合させながら、時勢や過去の批評的蓄積との接続も図っていくと言うのは、なかなかに大変な作業と感じられますが、そんなこと本当にできるものでしょうかね。

2019-12-03 18:02:15
@quantumspin

といった感じの話題が気になった(狭い範囲の)方には、本日発売の『メフィスト 2019 VOL.3』に掲載された拙論『ガウス平面の殺人』をおすすめします。 amazon.co.jp/dp/B081YW1LD4/…

2019-12-04 11:53:42