茂木健一郎さんの「和仁陽(わに・あきら)」

脳科学者・茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの6月15日の連続ツイート。 東京大学・大学院の和仁陽准教授の高校時代を思い出しながら、日本の教育システムに疑問を呈しています。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

わに(1)時々、高校の同窓生に会う。私の母校は、東京学芸大学附属高校。大学よりも、高校の方が好きだった。旧制の学校に通じる、自由闊達に本質を極める校風が性に合ったのだろう。

2011-06-15 07:13:25
茂木健一郎 @kenichiromogi

わに(2)高校の同級生に、和仁陽がいた。和仁は、私たちの学年の共通一次試験(センター試験)の全国1位で、1000点満点中981点だった。2年、3年と二年間にわたっていろいろ話して、非常に大切な友人だった。

2011-06-15 07:14:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

わに(3)高校3年の時、和仁陽が学芸大学の駅に一人立っていた。本を持っていたから、何を読んでいるの、と聞くと、「ぼくは受験で忙しいから、こういう時くらいこんな本を読まないと精神の安定が保てない」と和仁。英語で書かれた、分厚い、イギリスのエリザベス一世の伝記だった。

2011-06-15 07:16:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

わに(4)高校の卒業文集は、みんなが「高校生活の思い出」などといったテーマで書く中、和仁陽のテーマは「ラテン民族における栄光の概念について」だった。

2011-06-15 07:17:53
茂木健一郎 @kenichiromogi

わに(5)当時、音楽の村上先生の指導の下、学芸大学附属高校の音楽部は毎年オペラを上演していた。高2の時、私たちはウェーバーの「魔弾の射手」を上演。和仁陽が、ドイツ語の歌詞を日本語に訳した。歌えるようにリズムを考え、脚韻の代わりに頭韻を踏んだ訳詞だった。

2011-06-15 07:20:03
茂木健一郎 @kenichiromogi

わに(6)和仁陽は、私が生涯で出会った中で最も頭のいい、天才である。その和仁は、東京大学文化I類から法学部に行き、その後同学部の教員となった。いわゆる文系のエリートコースだが、和仁を思うと、日本の大学をめぐる全てがいかに陳腐で幼稚なものかということがわかる。

2011-06-15 07:21:39
茂木健一郎 @kenichiromogi

わに(7)高校時代の和仁は、東大とか文一とか、そういうレベルを超えていた。その和仁でさえ、受験勉強は真剣にやっていた。昼休みに、一人でチャート式生物を黙々とやっていたのを覚えている。余裕があっても、受験は軍拡競争と同じで、まだやろう、もっとやろうという真理が働く。

2011-06-15 07:23:26
茂木健一郎 @kenichiromogi

わに(8)高校時代の和仁陽の口癖は、「早く大学に行って、ドイツ語の文献がたっぷり読みたい」というものだった。和仁にとって、受験勉強などどんな意味があったろう。本物の知の感触が、矮小化された日本の大学入試。その陳腐さに天才が付き合った結果が、1000点満点中981点だった。

2011-06-15 07:25:43
茂木健一郎 @kenichiromogi

わに(9)和仁陽ほどの本物の知があれば、東大くらい当たり前に受かる。しかし、逆は真ではない。陳腐な入試など、どうでもいい。なぜ中高から、本物の知へのあこがれを育まないのか。相変わらず幼稚なペーパーテストを続ける日本の大学は、盆栽作りの達人に思えてくる。

2011-06-15 07:27:23
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、高校時代の畏友、和仁陽についての連続ツイートでした。

2011-06-15 07:27:41