コロナ対策を制約理論で考える
(随分前の話になりますが)20代の後半、ニューヨーク大学のビジネススクールの夜学に4年間通いました。大量の書籍を読みながら、大半の内容は忘れてしまったのですが、例外的に、心の中に強く残っている数少ない理論の一つが、制約理論(TOC: Theory of Constraints)という、生産管理の原則です。
2020-04-23 01:25:52この理論がものすごくわかりやすく書かれている『ザ・ゴール』は、世界的なベストセラーで、著者のエリヤフ・ゴールドラットは、「日本人にこの理論を教えたら、日米貿易摩擦が大変な問題に発展してしまう」ことを懸念して(この本が発刊されたのは1984年です)、
2020-04-23 01:26:37制約理論を一言で表現すれば、「システム全体の生産性は、ボトルネックの生産性に制約される」というものです。たとえば、どれだけ最新鋭の機械を導入しても、出荷にもたついていたら、その機械の能力は全く無駄になる、というもの。
2020-04-23 01:26:55どこかで何か(誰か)がもたついていたら、その他の持ち場で本当に頑張っているすべて(の人)の努力が無駄になるということです。あまりにシンプルな概念ですが、とんでもなく重要な原理なので、私は、あらゆるリーダーはこの概念を理解せずに責任ある立場に立つべきではない、と思っているほどです。
2020-04-23 01:27:33ロックダウン、PCR検査、ホテル確保などなど、個別の問題はありますが、結局、それらの全ては、何を実現するためのものか、それはなぜか、をどう理解するかで、関わる全ての人たちの仕事が、活かされるか無駄になってしまうかが決まると思うのです。
2020-04-23 01:28:18仮にコロナの最終的な「解決」が、一説の通り、集団免疫の獲得(人口の60%が抗体を持つまで、この問題は収束しないという考え方です)だとするならば、感染者を出さないことが本質的な解決にはならないことになります。
2020-04-23 01:28:50ちょっと乱暴な言い方ですが、「医療崩壊しない範囲で、できるだけ死者を出さず、しかし最もスピーディーに多くの人たちの免疫の獲得が進むこと」がゴールでしょう。
2020-04-23 01:29:01そのスピードが早ければ早いほど、経済的なダメージが低く、失業などによって苦しむ人たち(多分、病気で苦しむ人たちよりもはるかに大きい数)を救うことができます。
2020-04-23 01:29:07そのとき、社会全体が、あらゆる手段と資源を使って、医療従事者と医療システムを支えることが、社会全体のコストを最小化します。つまり、徹底的に(依怙贔屓なくらいに)、医療従事者を助けることが、とてもとても価値のあることなのだ、ということです。
2020-04-23 01:29:20それは、単に医療器具やマスクの問題だけでなく、医療従事者の食事や、休息や、出勤のサポートや、保育所の手助けなどなど、彼らの生活全般が含まれなければなりません。
2020-04-23 01:29:40医療従事者の仕事だけでなく、彼らの家族を含む、人間としての生活のすべてを助けることが、ひいては、社会全体のために、ものすごく大切なことだ、ということです。
2020-04-23 01:29:43なぜならば、医療のボトルネックが、経済全体のボトルネックになるからです。医療従事者が欠けて、例えば重症患者の対応ができなければ、人命を救うためにロックダウンや非常事態宣言をせざるを得なくなり、経済に大ブレーキがかかって県民所得4兆円(沖縄)がダメージを受けます。
2020-04-23 01:30:12ですから、医療従事者の仕事と生活ために、どれだけお金をと時間と意識を使っても、無駄になるどころか、それは社会コストを最小化することにつながるのだと思います。その前提で、医療者を助けるのが、正しい認識だと思います。
2020-04-23 01:30:28