【発狂頭巾エレキテル第8話:火消しカラクリ大炎上!】

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雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

【発狂頭巾エレキテル第8話:火消しカラクリ大炎上!】

2020-04-25 15:49:32
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(これまでのあらすじ:目の前で家族を殺されたトラウマ(妄想)が八百八個ある狂った同心の吉貝は、平賀源内に脳内エレキテルを埋め込まれたことでトラウマを抑制し、日常を取り戻した。しかし、空が鈍く曇るとき、天候によって脳内エレキテルの効果が薄まると、持ち前の狂気を発揮して悪党を成敗す)

2020-04-25 15:50:17
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「キチの旦那、起きてやすかい?」吉貝の長屋の扉を叩くハチ。「なんだぁどうしたハチ?今日は非番だぞ」同心の吉貝はあくびの一つでもして寝ぼけ眼で出てきた。「源内先生からコレをもらいやして、一緒にどうですかね?」ハチは懐から紙切れを2枚取り出した。

2020-04-25 15:53:07
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「なになに、カラクリ村招待状?」「最近街のハズレの方にできた見世物小屋ですぜ。なんでも源内先生が協力して大カラクリ屋敷をつくったんですわ」源内先生とは言わずと知れた江戸のカラクリマッドサイエンティスト平賀源内であり、吉貝の脳にエレキテルを埋め込むほどの知識を持っている。

2020-04-25 15:55:52
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「しかし、見世物小屋なあ……」「ま、そんな事言わずに、どうせタダなんですから」吉貝はあまり乗り気ではなさそうだったが、タダという言葉とハチの押されて、しぶしぶ出かけることにした。

2020-04-25 15:58:00
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……街のハズレの見世物小屋郡の、さらにハズレの方に、そのカラクリ屋敷は立っていた。それは、屋敷というよりは、もはや現代の移動遊園地のような規模だった。「さあさ!摩訶不思議なからくり屋敷によってらっしゃい見てらっしゃい!」背中にノボリを背負った呼び込みが元気に叫ぶ。

2020-04-25 16:00:23
しょ418 @sy040418

たぶんロケ地が移動遊園地そのまんまなやつ

2020-04-25 17:08:38
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「ずいぶんとでけえ屋敷だな……」吉貝が眼を丸くして屋敷を見上げる。「へえ、中にはもっと驚くようなカラクリがあるって話ですぜ。源内先生全面協力ってんですからね」ハチは入り口で招待状を見せると、吉貝と一緒に門をくぐり抜けた。「これは……」

2020-04-25 16:02:17
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門をくぐり抜けたとき、吉貝の眼が変わった。「……懐かしいな。子供の頃にきたときと、なんも変わってねえじゃねえか」無論、カラクリ屋敷は数日前に出来たばかりで、吉貝が子供の頃にあったわけがない。「へえ、そうですかい」ハチはサラッと流す。

2020-04-25 16:03:49
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「おお!見ろ!ハチ!茶釜回しだ!懐かしいな……」吉貝は複数の巨大な茶釜をもした乗り物がくるくると回るカラクリを指差す。「父と一緒に乗ったことがあったのだ……」吉貝の脳内には、子供の頃の鮮明な思い出(妄想)が、まるで在りし日のように蘇っている。

2020-04-25 16:06:41
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いつからだっただろうか、吉貝は家族を失い、そのトラウマを克服するためか、偽りの思い出を作り出し、家族がいない現実と混濁し、記憶の中で何度も家族を失っている。そうこうしているうちに、真偽はあいまいになり、はたから見れば狂っているようにも見えた。

2020-04-25 16:08:37
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しかし、吉貝の同心としての腕前は確かなものであり、源内先生とハチの力添えによって日々の生活をおくっている状況だ。「旦那、せっかく来たんですし、いろいろ見てみましょうや」「ああ、そうするか!」いつの間にか吉貝の顔には笑みが浮かんでいた(瞳はどこか遠くを見ていた)。

2020-04-25 16:10:53
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現代のティーカップのようなカラクリに乗る吉貝とハチ。「わははは!」「旦那ぁ!回しすぎですよぉ!」現代のジェットコースターのようなカラクリに乗る吉貝とハチ。「うぉおおおお!!」「うひゃああああ!!」

2020-04-25 16:13:06
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……ひとしきり楽しみ、そして日も落ちそうかというとき、現代の観覧車のようなカラクリに乗った吉貝とハチは、江戸の町を見下ろしていた。「なあ、ハチ、今日は久しぶりに亡き父を思い出すようだった。ありがとうな……」沈みゆく夕日を見つめる吉貝の眼はどこか遠くを見ていたが、同時に澄んでいた。

2020-04-25 16:15:31
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ハチは、そんな吉貝を久しぶりに見た。いつもの苦しい思い出(妄想)ではなく、楽しかった思い出(妄想)に浸る吉貝は、まったく狂っているようには見えない。「旦那……また機会があったら来ましょうや。今度は源内先生も一緒に」「ああ、それがよいな……」

2020-04-25 16:17:27
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……その夜。「大変だぁ!火事だぁ!火事だぁ!」飲み屋で一杯やっていた吉貝とハチはその声に反応して店を飛び出す。「なんだって?いくぞハチ!」「へ、へい!あ、お勘定置いとくよ!」江戸の火事は長屋を伝わり延焼する。もたもたしていれば巻き込まれてしまうかも知れない。

2020-04-25 16:20:40
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しかし、今回は巻き込まれる心配はなさそうだ。火の手はかなり遠く、すでに火消したちが集まって消火活動を行っている。「ソイヤァ!ソイヤァ!」江戸の消火活動といえば、基本的には延焼を防ぐための破壊活動だ。力自慢の火消したちが大木槌などの道具で家を粉砕していく。

2020-04-25 16:23:11
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「この分ならあっしらが出ていく心配はなさそうでさぁ」「バカヤロめぇ。そもそも酔っぱらいが出ていったところで何になるってんだ」「ハハ、ちげえねえ」2人は酒が回っており笑い合うが、明日のことを考えると笑みが失せた。「ハチ、明日は忙しくなりそうだ」「さようで」

2020-04-25 16:25:26
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……翌日、吉貝とハチは昨夜の火事の調査を行っていた。もちろん、他の同心たちも集まり、物騒な話し合いをしている。「昨日の1件、ありゃあ火付けの仕業じゃねえかと思う」「だろうな。火元が空き家だってんだ。そんなところから日が出るわけがねえ」

2020-04-25 16:27:16
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

江戸の町は火災に弱い。木と紙を主な素材とした長屋はあっという間に火の手が広がり、消化不可能な大火災へと発展する可能性もある。ゆえに、火付けは大罪であり、下手人はなんとしても捉えなければならないのだ。

2020-04-25 16:28:56
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

「しかし、そうは言っても証拠も何もあったもんじゃねえ」「それよりも、材木が足りねえって話も出てる」「材木が無ぇ?」「なんでも少し前に材木を大量に買い占めたやつがいるって話で……」ぼんやりとしていた吉貝は、その言葉に急に目を光らせた。「その話、どっから出てきたんだ!?」

2020-04-25 16:32:00
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「うぉお!キチ!どうした血相変えて?」「いいから教えろ!俺はそいつを当たる!」「当たるったってお前ぇ、そんなことより火付けのだな……」「ええい!ごちゃごちゃ言うな!!」吉貝の眼がにごる。こうなってはもう、吉貝を止めることはできない。

2020-04-25 16:34:08
雀bot@スケブ募集中 @suzumeninja

……噂の出どころを聞き出した吉貝とハチは、材木問屋にやってきていた。「材木の買い占めがあったと聞くが」「へえ、一月ほど前ですかな。あの何やら巨大な見世物小屋を作るとかで大量の材木を買っていただきましてな。今回の火事で長屋を立て直す材木が用意できませんでして」

2020-04-25 16:36:56
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「なるほど……」吉貝はすでに真相にたどり着いたような口ぶりだが、ハチはそれを咎める。「だ、旦那、まだ証拠も何も見つかってないんですぜ」「しかしな、ハチ……ぐあああ!」吉貝が突然頭を抱えて苦しみだした!「旦那!しっかりしてくだせえ!」

2020-04-25 16:39:10
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