「2019-nCoV (新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」 を用いたウイルスRNA採取方法のコツ
新型コロナウイルスがいよいよ本格的な流行の兆しを見せ始めていますが、RT-PCRくらいなら自院の検査部でもできるからこの際自分達でやってみたいと考えているのではないでしょうか。難しいイメージを持たれているかもしれませんがコツさえ掴めばそれほど難しくはありません。
2020-04-05 19:56:34医療系のアカウントがやたらに技術力が要るから難しい検査だと言っていたために、とても難しく誰にでも出来るような検査ではないと思い込まれてしまっていますが、毎日ウイルスのRNAを取っていた経験からすればピペット操作さえ確実ならば誰でもできる検査です
2020-04-05 19:57:11なので失敗しないコツをツイートします。医師アカウントがさんざんPCRの感度が悪いと言っているせいですっかりPCR感度の悪い検査だと思われてしまっていますが医師が言うPCRの感度は「PCR検査」の感度であり「検査で判明する」感度のことであって、PCRそのものは一分子のDNA/RNAがあれば検出が可能です
2020-04-05 19:57:55医療系アカウントが言っている感度とはレントゲン検査で肺炎が見つかる感度であったりCT検査で動脈瘤を見つける感度と言いう意味の感度であり、PCRそのものの感度を言っているわけではないことに留意して欲しいです。つまりきちんとRNAが採取出来ればほぼ確実にRT-PCRで検出することができます
2020-04-05 19:59:03「PCR検査」の感度を下げる要因は色々ありますが一番大きいのは検体から効率よくRNAを採取できていないというのが一番大きな理由かと思います。RNAが取れない理由はいくつか考えられます
2020-04-05 19:59:39①採取された検体量が少ない②ウイルス排出量が少ない感染者の検体で含まれているウイルス量が少ない③RNaseによりウイルスのRNAが破壊されてしまう、この3つの大きな要因が考えられます
2020-04-05 20:00:16いずれもRNA抽出以前の問題でありRNA抽出までにポイントを抑えておけば感度良くRT-PCRできます。そのポイントを国立感染症研究所のマニュアルを使って解説します。 >「2019-nCoV (新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」 niid.go.jp/niid/images/pa…
2020-04-05 20:01:22どの生体試料でも同じですがなるべく生きたままの状態からすぐに処理をし分解を防止することが重要です。RNA抽出の際に注意しなければいけないことはRNaseのコンタミネーションです
2020-04-05 20:02:18RNaseのコンタミネーションと聞くと空中を漂っているRNaseがコンタミしてRNAを壊してしまうというイメージを持っているかもしれませんが、実際にその程度の少量のRNaseでは全てのRNAを分解することができないのであまり問題ではありません
2020-04-05 20:02:43ではどこからRNaseが入ってくるかというと、検体に含まれているヒト細胞に由来のRNaseがコンタミネーションしてきます。これは必ず入ってきます。そこで重要なのが細胞を生きたままの状態にしておくことです。この状態に保っておくことによってウイルス自体も破壊されず中のゲノムも守られます
2020-04-05 20:03:18国立感染症研究所の「2019-nCoV (新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」では市販のウイルス輸送液(VTM/UTM)などを使って採取した粘膜に含まれる細胞及びウイルスが破壊されない状態にします pic.twitter.com/aBTXA5R8kr
2020-04-05 20:04:51これらの溶液が無い場合はPBSでpHと浸透圧を保つかそれも無い場合はせめて浸透圧だけでも保つため生理食塩水を使うこととしています
2020-04-05 20:05:21主な市販のViral transport mediaはこういった物です。余裕があるようでしたら事前に準備しておきましょう bdj.co.jp/micro/products… japanproducts.copangroup.com/index.php/prod…
2020-04-05 20:05:47保存温度ですがマニュアルには4℃と書いてありますが、すぐにRNAを抽出する場合は室温のままで構いません。RNA抽出が48時間以内であるようなら冷凍する必要はありません。気を利かせて検体を冷凍している場合があるのですが、冷凍によって細胞及びウイルスが破壊されるのであまりお勧めは出来ません
2020-04-05 20:06:46なるべく4℃で保存し検体採取から48時間以内にRNAを抽出しましょう。以上のように試料を安定した状態にしておけば少量のウイルスからでもRNAを効率よく抽出することができます
2020-04-05 20:07:15次に国立感染症研究所の「病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.9.1」が推奨しているRNA抽出キットQIAamp Viral RNA Mini Kitを使用する際のコツをツイートします。感染研のマニュアルに加えてQIAGEN社のwebページにあるQIAamp Viral RNA Mini Kitのプロトコールをよく読んでおくことをお勧めします
2020-04-05 20:08:02「病原体検出マニュアル 2019-nCoV Ver.2.9.1」 niid.go.jp/niid/images/la… pic.twitter.com/jb7rTbi8sD
2020-04-05 20:09:46QIAamp Viral RNA Mini Kitなどのスピンカラムはブーム法という原理に基づき核酸をシリカカラムに吸着させる方法です。カオトロピック塩にグアニジンイソチオシアネートを使うことによってRNaseの不活化も同時に行います : ブーム法 - Wikipedia: ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96…
2020-04-05 20:10:31QIAamp Viral RNA Mini Kitの説明書に従ってcareer RNAとBuffer AW1、AW2を準備します。Career RNAは一回分ずつ分注してaliquotにして冷凍しておきます。凍結融解は3回までとなっていますがRNAの収量に影響しますので一回分ずつ分注することをお勧めします
2020-04-05 20:11:13それらが準備できたら説明書に書いてあるとおりにBufferAVLへcareer RNAを加えます。このBufferAVLにグアニジンイソチオシアネートが含まれますのでこのbufferを試料に加えた時点でRNaseは失活します。このbufferを加えるまでの間にウイルスを破壊しないように気をつければ効率よくRNAが抽出できます
2020-04-05 20:12:45BufferAVLを加えた時点でRNAは安定化します。後は洗浄ステップで夾雑物を取り除き、水やElution BufferでRNAを溶出するだけです。外部からのRNaseのコンタミネーションだけ気をつけましょう。RNAの抽出が終われば以後ダウンストリームは普通の実験室で取り扱えます
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