カトリーヌ・マラブー『偶発事の存在論』読書メモ集

カトリーヌ・マラブー『偶発事の存在論―—破壊的可塑性についての試論』(鈴木智之訳、法政大学出版局、2020)の読書メモをまとめました。原著は2009年刊行。
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荒木優太 @arishima_takeo

訳者からカトリーヌ・マラブー『偶発事の存在論ーー破壊的可塑性についての試論』(法政大学出版局)をご恵投いただきました。ありがとうございます。Twitterで見かけて、これは!と思っていたので、とても嬉しいです。偶然文学研究者として期待大!! pic.twitter.com/7e8UWAas5R

2020-04-28 16:08:11
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荒木優太 @arishima_takeo

それにしても、鈴木智之さんの翻訳だったんですね。相変わらず守護範囲が広い。鈴木さんが訳したライール『複数的人間』は私の有島論の大きな参照項の一つだったりします。hanmoto.com/bd/isbn/978458…

2020-04-28 16:12:34
荒木優太 @arishima_takeo

ライールとわざわざ絡めていうなら、マラブーの「可塑性」が偶然的なものの変更不可能性を強調するとすれば、ライールの「習慣」はその可変性や複数稼働性を指摘していると考えていいでしょうか。とまれ拝読します。

2020-04-28 16:15:36
荒木優太 @arishima_takeo

ほとんどの場合、人生は川の流れのように進んでいく。しかし時に、その人生は川床を離れてしまうことがある。いかなる地質学的な理由も、地下に潜んでいた伏流も、この増水あるは氾濫を説明することはできない。byマラブー『偶発事の存在論』6p

2020-04-29 20:28:42
荒木優太 @arishima_takeo

マラブー『偶発事の存在論』。ダマシオとドゥルーズのスピノザ論に触発されながらも、身体の(見かけではなく)本性的な変化可能性を先取していたスピノザを「破壊的可塑性」の観点から読む。変身とかいっても本性は変わらないんでしょ? でも、本性を変えてしまう変身があるのだ!

2020-04-30 14:06:08
荒木優太 @arishima_takeo

私たちはたしかに、ちょっと皺が増えたなとか、少し弱ったなとか、体が不自由になったなと思う。しかし、そうだとしても、私たちは「あの人は今老いつつある」と言うのではなく、ある日、「あの人も老いたな」と気づくのである。byマラブー『偶発事の存在論』p81

2020-05-01 15:33:14
荒木優太 @arishima_takeo

思いもよらぬ出来事としての老いという考え方は、確実に、精神分析の実践とは異なる臨床を要求する。爆発事故やテロのあとの救急医療班が行うのと同じように、高齢者の話を聞いたり、ケアしたりすることが必要になるだろう。byマラブー『偶発事の存在論』p93

2020-05-01 15:35:05
荒木優太 @arishima_takeo

連辞省略とは、言語のアルコール依存である。bybyマラブー『偶発事の存在論』p115

2020-05-01 15:35:51
荒木優太 @arishima_takeo

マラブー。老いを持続的・連続的なものではなく、瞬間的・切断的にとらえようとしている。たしかに「老いつつある」とは言わないが、それは老いをある要件を満たして初めて見えるレンズを採用してみているだけであって、実際のところ、我々は「老いつつある」のではないか?

2020-05-01 15:39:02
荒木優太 @arishima_takeo

「患者がノーと言えば、それをイエスと理解する。そうだとすれば、精神分析もまた、その全体において、否定を否定することに躍起になっているのではないだろうか」(マラブー『偶発事の存在論』p144)。これは痛快だな。

2020-05-01 15:44:00
荒木優太 @arishima_takeo

私が精神分析嫌いなのは、精神分析を否定すると「否定するってことは精神分析に説得力を感じているわけですね?」ってことが言える最強の理論だからで、人間の強さはある局面における強さでしかないという経験則を無視しているからですね。

2020-05-01 15:47:23
荒木優太 @arishima_takeo

偶発事―—心的外傷、破局、損傷――は抑圧されるわけではない。byマラブー『偶発事の存在論』p148

2020-05-01 15:50:00
荒木優太 @arishima_takeo

マラブー。やりたいことは分かるし、面白いことも言ってると思うけど、私個人はこの方向には乗れないな。偶然性を切断や非連続の語彙で語る話法から離脱しないと、やはりどこかで袋小路が待っていると思う。

2020-05-01 15:57:54
荒木優太 @arishima_takeo

ただ、「破壊的可塑性はまさに、たとえそれがあとから見た可能性であったとしても、他の可能性を考えることを禁じる」(p164)というのはいい指摘だと思う。偶然性が即座に可能性に結ばれる、その結び目を断つような偶然を考えたい。

2020-05-01 16:00:59
荒木優太 @arishima_takeo

マラブー『偶発事の存在論』読了。プラグマティストも可塑性という概念を使うことはあるが、あれがライト・サイドだとすればこっちはダークサイドの可塑性論。事故によって体が欠損したり顔が歪んで別人になる…成長や改良の概念とまったく無縁の変形こそが寧ろ可塑性の本来の姿なのでは?

2020-05-01 16:08:54
荒木優太 @arishima_takeo

可塑性というと、一方では、【まだ変えられる】(可能性)から読む視線が支配的だが、マラブーは反対に【変えたらもう元に戻らない】(否定的可能態)からこれを読む。形のエントロピーの法則みたいな感じがするね。

2020-05-01 16:12:05