掌小説語り~自作つぃのべる集~52

自作ついのべるのまとめです。 2017年8月分。
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リュカ @ryuka511

「助けてあげる」差し出された幼い手を握り返し走る。神託は偽りだったのか。勇者を騙った罪人として捕らえられた。「国王は魔王と結託し世界を支配するつもりよ。利用されてるだけとも気付かずにね」迷宮のような地下牢を抜け少女は笑った。「よろしくね、勇者様。私は魔法使いよ」 #twnovel

2017-08-01 00:34:36
リュカ @ryuka511

少女は涙を浮かべ、血が通っている筈の白い膚を撫でる。父が遺した日記には彼女を作った記録が綴られていた。合成魔獣生成実験の記録。これは私の事じゃない、私は人間だ。そうだ、この膚を切れば赤い血が、真っ当な生命である証が流れるはずだ、ほら #twnovel 実験室に少女の絶叫が響いた

2017-08-02 02:20:16
リュカ @ryuka511

奥様は私を教会へ寄贈なさいました。私を見ると亡くなられた旦那様を思い出し辛いのだと仰います。奥様の涙を拭って差し上げたかった。やがて奥様も旦那様の下へ旅立たれました。遺された私はお二人の愛の証として大切にして頂いた時間を胸に、ここで愛を説くお手伝いを致しましょう #twnovel

2017-08-03 00:47:03
リュカ @ryuka511

「愛していました」悲しげに微笑んで消えた人魚姫の夢を見た。彼女の事を知らないのに、その笑みは胸を締め付ける。彼女が消えた先は海だ。彼女は本当に人魚なのだろうか。代々漁師をしているが、人魚はお伽話だと言われている。実らなかった彼女の愛は、誰に向けられていたのだろう #twnovel

2017-08-04 01:41:52
リュカ @ryuka511

戦闘中、師匠はいつも杖を使わない。攻撃に回復に支援魔法、杖を使った戦い方を教えてくれた師匠なのに。愛用の杖は師匠の背で揺れている。ある日、その理由を聞くと「切り札は最後までとっておくものだよ」と微笑んだ。その笑みの奥にある悲しみに、私が触れる事はまだ出来ない。 #twnovel

2017-08-05 01:32:13
リュカ @ryuka511

革命が起き、王族はみな断頭台の露に消え、臣下達は街から追放された。街の外に打ち捨てられた幼い少女の亡骸を青年はそっと抱き上げる。姫様、貴女にまで罪があったとは思えません。王族の首は城門前に晒されていた。せめて私の手で弔いを、この首無き胴に飾る花を、探させて下さい #twnovel

2017-08-06 00:05:34
リュカ @ryuka511

「我らの力で、貴方様に勝利を」王に跪き忠誠を誓う。満足気に笑う王の足元で、顔を伏せたまま唇を噛む。これは偽りの誓約だ。今はこうするしかないから。我々が真の力を取り戻せれば、お前達など敵ではない。うたかたの天下をせいぜい楽しむがいい。この世界を、人間などに渡さない #twnovel

2017-08-07 01:13:58
リュカ @ryuka511

寂れたスラムの教会で少年は朽ちた像を見上げる。「神様なんて信じない」何度も吐いた言葉。神様がいるならば、僕らのような子供は存在しない。それでもここに来てしまうのは、姉と慕った少女が眠る場所だから。あの日。神様を否定しながらも、彼女が眠るにはここが相応しいと思った #twnovel

2017-08-08 00:19:16
リュカ @ryuka511

バンパイヤの傷を癒す治癒術は、人間には効かなかった。棺に横たえた恋人の亡骸を、バンパイヤは悲哀に満ちた眼差しで見つめる。事故に遭った恋人の死は真っ当な寿命だったのか。間違った死ならば、正されるべきではないか? 正す方法があるのではないか。応えの無い問いを繰り返す #twnovel

2017-08-09 00:58:28
リュカ @ryuka511

魔王が倒され平和になった世界だが、未だに瘴気に満ちた森がある。魔王討伐の為に様々な魔術が試され、生贄にされた者達が眠る場所。立ち入りが禁じられた森を誰も浄化しようとはせず、森を彷徨う怨念は増幅するばかり。平和を謳歌する人々は自らの罪を忘れ、新たな災いを呼び起こす #twnovel

2017-08-09 23:36:39
リュカ @ryuka511

勇者達が敗れた後も、人々は勇者の復活を信じた。魔王軍の支配下で、服従したふりをして勇者の帰還を待った。荒野と砂地と化す大地にやがて人々は見る。砂地に刻まれた、かすかな轍を。こんな世界を馬車で行くのは勇者一行に違いない。希望の轍を魔王軍から隠し、人々はその日を待つ #twnovel

2017-08-11 00:28:33
リュカ @ryuka511

魔王が討たれ闇に堕ちた俺を救ったのは、今や救世の英雄となった友だ。人々は俺を受け入れてくれる。友への嫉妬から闇に堕ちた俺に、貴方に罪は無い、憎むべきは心の隙につけ込んだ魔王だと。だが再建が進む王国に俺はもう戻らない、と決めた。ここに俺の居場所を作ってはいけない #twnovel

2017-08-12 01:09:01
リュカ @ryuka511

錆びた剣で封じた魔物が、封印を解こうと暴れている。やはり封印は完全ではなかった。魔物を封じる聖剣の錆びつきを目にし一同は唖然とした。聖剣が錆びるなんてあり得ない。封印が長くもたないのは明白だった。暴れる魔物を封じる術者に焦りが浮かぶ。世界の終焉が、始まってしまう #twnovel

2017-08-13 01:08:55
リュカ @ryuka511

微笑み返してグラスを煽る。袖口に仕込んだ毒をそっとグラスに落として。喉から胸へ焼けるような痛み。喉を掻きむしって倒れる私を、あなたは驚愕の表情で見つめている。あなた一人が幸せになるシナリオはない。今でもあなたを愛しているから、私はあなたの人生を手に入れる。 #twriddle

2017-08-14 01:15:42
リュカ @ryuka511

地上を支配した魔王は、人々の最後の希望だと言われる「希望の種」を探していた。人間の希望など潰しておかなくては。だが、魔王にはそれがどんなものか皆目検討が付かなかった。実際に植物の種なのか、何かの比喩なのか。希望が、侮れない大きな力にとなる事を、魔王は知っている #twnvday

2017-08-15 01:07:43
リュカ @ryuka511

私の役目は生まれた時に決まっていた。魔王軍から勇者を守るため、勇者の力を私の生命で封じている。勇者と共に育ち、世界が魔王の手に落ちる時、勇者の力を解放するのだ。私は勇者の目覚めと同時に生命を落とす。だが私は散るために生まれたのではない。私は友である勇者と共に在る #twnovel

2017-08-16 00:04:08
リュカ @ryuka511

「結婚しようか」なんて唐突に言ったのは、満月の魔力かもしれない。味気ない鉄筋コンクリートのカフェで、冗談めいた口調で言ってみたけれど、かなり勇気を振り絞ったんだ。でも君は本気だと受け取ってはくれなかった。笑って流されてしまった想いの行き場を、今も見つけられない #twnovel

2017-08-16 23:53:44
リュカ @ryuka511

事件を解決したがどうにもやりきれない。街を染める夕暮れは慟哭にも似た悲痛な色に見える。悲劇の連鎖は終わったが、他に道は無かったのか。止められなかった最後の悲劇が、悲しい笑みが、脳裏に焼き付いて離れない。事件に巻き込まれた人々が未来へ歩き出したのが、せめてもの救い #twnovel

2017-08-18 01:41:30
リュカ @ryuka511

商店街を始めこの街は寂れていく。骨組みしかなくなったアーケードは空がよく見渡せた。渡り鳥が悠々と空を飛んでいくのが見える。寂れていく街には見向きもしない。海の向こうの島へ向かうのだろう。島はここより賑わっているのだろうか。羨望を込めて見送る。僕はどこにも行けない #twnovel

2017-08-19 01:17:37
リュカ @ryuka511

魔王討伐の旅の途中、君はこの村に残ると言った。魔王軍の猛攻で親を亡くした子供達が暮らす村だった。自分と同じ境遇の子供達を、どうしても見捨てられないのだと。君の手を握り頷いた。道を別つ友へ。君の決意も同じく尊いものだ。魔王は僕らに任せて、彼らを守ってあげて。 #twnovel

2017-08-20 01:17:08
リュカ @ryuka511

革命軍を率いて戦った。寄せ集めに過ぎなかった集団だが、王政を終わらせるべく一丸となって戦った。後は王の首を取るだけと油断した。伏兵に気づかず、背後から撃たれた。私が倒れても作戦を続行せよ。「後は、頼んだよ」火が放たれる。革命が成った空は、青く平和であるように #twnovel

2017-08-20 23:53:23
リュカ @ryuka511

教会の前でその子はずっと待っていた。「絶対迎えに来るからねって言った」と言うが、絶対と添えられた約束ほど軽いものはない。私はあの日聞いたのだ。この子を置き去りにした女が「せいせいした」と呟いたのを。真実は君を救わない。だが、一途に待つ君にとって何が救いなのだろう #twnovel

2017-08-21 23:25:22
リュカ @ryuka511

平日の午前中、制服で学生鞄を提げた彼はおどおどと店を見回す。詮索しない私に安堵したようで、珈琲を注文し本を手に取った。学校は彼の居場所ではないのだろう。この寂れた店に生きる道を見出した私には、正しい生き方とは独りで生きる事だった。勝手な願いだが、彼に幸あらん事を #twnovel

2017-08-23 01:12:58
リュカ @ryuka511

彼の愛は決して私には向かない。彼には愛する人がいたから。眠りの呪いをかけられた少女に寄り添い、悲愴な顔で私に助けを求めてきた。私とは質の違う魔法だが、彼の為に死力を尽くした。だが呪いを解く前に少女の生命は尽き、彼は後を追った。無用の長物と化した解呪の術を持て余す #twnovel

2017-08-24 01:36:51
リュカ @ryuka511

桜の下、悲哀に満ちた様子で佇む鬼がいた。鬼の足元には小さな塚。近しい者の墓だろうか、鬼は塚を見下ろし、大柄な体躯を丸め嘆きの声を上げる。その姿は人間を恐怖させた鬼とは似ても似つかなかった。拳を握る鬼が誓ったのは復讐か、それとも。以後、鬼の姿は見られなくなった #twnovel

2017-08-25 01:27:33