
本日は62式機関銃を概説する 特に目新しい情報はないが、この銃については広報が必要であると思うからである 本銃は毀誉褒貶が激しく、その実像がわかりにくいからこそ、その嵐を衝いて現れる一陣の真実の灯を持て考察する必要があるのだ 前置きはここまでにして62式機関銃の話を始めてゆこう pic.twitter.com/FbfR5EqmZ9
2020-05-12 21:39:38

第1項【62式前夜】 自衛隊は基本的に最初はアメリカ軍のおさがりの火器を用いていた 分隊の火器にはBAR、中隊にM1919が配置されているというアメリカ式の歩兵部隊であった 自衛隊は表向きはともかく存外帝国陸軍の戦訓を引いているところがあり、やりたいことと編成や火器が合致していない状態だった
2020-05-12 21:45:29
M1919はまだやりたいことには近い方で、帝国陸軍も確かに大隊配置の重機関銃を中隊に付したりしたいという夢があって、いろいろ開発を進めたこともある しかし、少なくともBARだけはどうしてもいろいろやりたいことにあっていなかった そもそも十一年式と比しても火力が高いとは言えるものでないのだ
2020-05-12 21:50:11
そもそもアメリカ軍もBARに満足していない M1919A6なんかはそういう需要なんだとか (たしかM1919A6を装備した自衛隊部隊の写真がどこかにあったはず) そういうこともあって中隊機関銃と分隊の火器を統合した新型機関銃が求められた 1954(昭和29)年頃から計画が走ってたとされる
2020-05-12 21:55:59
最初の試作品は1956(昭和31)年に出たものだった この銃は本当に日特が作ったものかわからない これは見た目からしばしば九九式軽機関銃の構造を利用したといわれるが、九六式や九九式にある独特な閂子室の凸が尾筒にないため恐らく相当に異なったものであったと推定される 銃身交換は独特で pic.twitter.com/TuO08e15rY
2020-05-12 22:05:40


恐らく銃身根元に薄っぺらい大型のレンチをかけて回すものであろう 閉めこみ具合で(おそらくワッシャのようなものを噛ませて)ヘッドスペースが調整できそうな構造となっている 銃尾機関がどのようになっているか非常に興味がある 試製三式軽機関銃と似ているが、関連性は不明である(画像試製三式) pic.twitter.com/BHM3fBuuvT
2020-05-12 22:05:40

そして計画は続いた ところでいつの段階までかわからないのだが、この計画は使用弾薬は30‐06という当時の主力小銃弾であったそうだ 次の試作品は1958(昭和33)年に作られたもので、別名を「日特14型」という 尾筒などは制式になったものに似てきた。大きな違いは銃身の上にガス筒がつくことだろう pic.twitter.com/PfyBQyygZG
2020-05-12 22:11:56

この試作品について、いろいろ試した後に出た意見などを以下に列挙する 昭和35年6月富士学校で質疑応答に関する予想問答 『弱装にしたとき負傷者の回復率について』は問題でないとした 九九式をベルト給弾にしたらどうかという意見について 12kgを超過することと性能の低下は免れない
2020-05-12 22:20:18
発射速度を分間350発から400発に減じ得るか 否 そもそも機関銃でそのようにする利益はない 試作銃から車載の用件を外し得るならば如何 蹴出方向を右方として全体的に短縮すれば10kg程度まで軽量化できる 試作銃の軽量化は可なるや 尾筒幅を3分の2に詰める 左右給弾にしない 二脚を九九式同様とする
2020-05-12 22:20:18
この三点を為せば可能である 三脚を九二式重機関銃と同様に為せないか 重量の過大である。構造的に軽量化は不可能である 九九式軽機関銃そのままでよいのでは 量産に適するように改正すれば可なり 弾倉容量は30発を適当と認む で、これらの結果として試作品の改良の要点は以下の通り
2020-05-12 22:20:18
銃身長をM60と同等に為し肉厚を若干増す(重量0.3kg増) 銃口制退器を廃止し消炎器とす(重量変化無) 二脚をアルミから鋼製とする(重量若干増) 尾筒肉厚を1.5mmから2.5mmに増す(重量0.5kg以上増) ピストンを銃身下方に移動する(重量変化無) 伴って揺底の変更 弾送りをNATOリンクとする 遊底他の強化
2020-05-12 22:20:19
(重量若干増) 銃身交換にあたって現状ピストン付きで交換するものである ピストンをそのまま下方へ移動すると分解困難となるが部品耐久性を増し得、故障時に遊底を開き得る これを九九式軽機関銃同様銃身のみの交換に置き換えればピストン部は拡大するため1kg以上重くなる BAR代用として弾倉式を
2020-05-12 22:20:19
追加すると複雑となり、弾倉式としてはメリットは全くない 車載の用件を外したならば、撃ち殻の蹴出方向を右方とし全体を短縮する1kg以上軽くなる 前記をすると潜望鏡式照準器は取り付け困難となる 弾薬を減装にしたときガスポートの位置を後退させるなどが必要である ガスポート径などに研究を要す
2020-05-12 22:20:19
この時M60の国産化という話もあった 利点は機能に関してはブローニング明らかにに勝ると推定される事 問題点は特殊金属の多用しあるが、国内の産業ではこれに追随できない 特に覆筒に然り さらには図面の入手困難 そして昭和35年度の試作には到底間に合わないことなどから断念している
2020-05-12 22:20:20
それらの要件をもとにして作られたのが1960(昭和35)年の試作品である 概ね制式の62式機関銃の姿となった 一番の異なる点は二脚とガス筒である 何しろガス筒が尾筒につながっていない 銃身交換の時ガス筒や二脚もろとも外れるように見えるので、これは改善の提案が出たものと思う pic.twitter.com/JXn5rIIdzp
2020-05-12 22:27:24


最終的に出来上がったのが皆の知る62式機関銃だ 7.62mmのNATO弾、特に米国の弾薬を用いることが要求され、作られた機関銃である 二脚を用いれば軽機関銃として、三脚に据えれば中隊MGとしてもちいることができる そして、望遠鏡式の照準具や潜望鏡式照準具なども付属した、汎用性の高い銃だ pic.twitter.com/MOU48JOMLR
2020-05-12 22:35:07

第2項【62式機関銃の機能構造】 62式機関銃はショートストロークガスピストン式の機関銃である ショートストロークガスピストン式というのは発射ガスの一部をガス筒に導き、ピストンが後退するのだが、この後退量が揺底の行程より短いものをいう 64式銃もショートストロークガスピストン式だ
2020-05-12 22:40:55
そして、銃尾機関は前端揺動式といわれる、極めてまれなものだ 揺動式というのはほかのいい方でいうならば「チィルティングボルト」といやつで、要は64式銃もこの一種である 前端揺動式の特許は以下のアドレスを叩けば見ることができる 興味深いものなので、ぜひ読むといい j-platpat.inpit.go.jp/c1800/PU/JP-S3…
2020-05-12 22:50:49
普通のチルトボルトは第1図のように閉鎖にあたって後端が動くのだが、これは遊底自体を見た時、力のかかり方が斜めに走るので非常に強度が必要になることなどから遊底は重くなる なので最初は遊底の軸線に沿った棒状の反動受けをつけるなどしたそうだ(第3図。これは別個に実用新案になってる) pic.twitter.com/rXnCgMm1l2
2020-05-12 22:50:49

そしてより効率化を図ったものが前端揺動式であるこの利点 第6図に示すように反動受けが銃身軸線と一致し反動を受けるときの負担が軽減されるとともに、遊底で頑丈であるべき個所が短縮できるため軽量化できる さらに第9図のように尾筒の構造を単純化できるためプレスだけで尾筒を作れることである pic.twitter.com/yqzz79PCnG
2020-05-12 22:56:17


この銃尾機関は特許に述べられていない利点がもう一つあって、遊底の上に弾送り機関のレバーを置きやすくなるので設計上の負担が少ないことである 実際のところ、M60やMINIMIのような回転する遊底のほうがいいことが多いのだが、62式機関銃はより制作のしやすい揺動式を選択している 技術力の差である
2020-05-12 23:01:54
当時の日特は自分のところでどこまで作れるのか理解したうえで自分のところで作れるものだけを選別している 先の特許を見たうえで本銃の銃尾機関の断面図を見れば、遊底の挙動は想像できるだろう 揺底の後退に伴い揺底に刻まれた溝に導かれて遊底の前端は下降する この動きは極めて緩徐であり、 pic.twitter.com/Mnj7ecytku
2020-05-12 23:06:08

結果として薬莢内部に残った圧力がある程度以上に抜けてから、遊底が後退し薬莢は薬室から抜き出されることになる この作用を『緩徐抽筒』という 緩徐抽筒は62式機関銃特有のものでないのだが、教範に書かれる例が少ないため誤解されたものだ 特に64式は緩徐抽筒を省いたから余計に誤解されたのだろう
2020-05-12 23:11:44
抽筒された薬莢は蹴子によって前下方に排出される そして遊底上方の弾送りレバーによって弾送り機関が動き次の弾が受弾座に導き出される もしここで引金を放しているならば、揺底は逆鉤に鉤されて止まる もしも引金が引きっぱなしならば逆鉤は揺底を鉤しないため揺底は複座バネの弾発力によって前進
2020-05-12 23:16:41
受弾座の弾を遊底上部の出っ張りがリンクから押し出しながら進み、薬室に弾薬が装填され、遊底が揺底の溝に沿って押し上げられて閉鎖し発砲される というサイクルを繰り返すこととなる 基本的な構造は概してこのとおりである 基本的にはよくあるオープンボルト式の機関銃であって、極端に特異でない
2020-05-12 23:20:40