第3項【62式機関銃の伝説を検証する】 巷に言われる伝説もある程度検証してゆく 検証の材料はこれまで私は十一年式軽機関銃の教範を用いてきた これは先に述べたように、62式機関銃は極端に特異な構造でないために弾送り機関のほかは概して援用できると判断したためである そして事実そうだった
2020-05-12 23:27:29巷の伝説としてピクシブ百科事典から引用する 11kg近くある重量のせいで持ち運びには一苦労 部品点数が多く、整備に手間が掛かる 部品同士のクリアランスが大きく部品脱落が頻発 上述のクリアランスが大きいせいで安全装置を掛けていても衝撃で暴発。
2020-05-12 23:38:43キャリングハンドルを持って運搬中にやけに軽い為に手元を見ればハンドルに繋がった銃身だけを運んでいた 30口径の銃の規模に比べて銃身が細い為、銃身が曲がり易い セミオートでの命中率に比してフルオートでは命中率が悪い 一発、若しくは数発撃っただけで弾詰まりを起こす
2020-05-12 23:38:44上記とは逆に引き鉄から手を離しても射撃が継続する(自然撃発) というものである。非常に面白いものであるので、一つ一つ見てゆこうか まず重量であるが、その重量は10,700gである 十一年式軽機関銃は概ね一〇瓩二〇〇である より強力な弾薬を用いながら、よく軽量化に努めたものである
2020-05-12 23:38:44実際採用当初の西側の同級機関銃も重量は概して同じである しかしそもそも62式機関銃の射手はそれ以前は9kg以下のBARを与えられていたのであるから、負担が拡大したように感ぜられても特段不思議ではない そういう意味では重い機関銃であった (M1919A6の射手であれば意見は変わったかも知らんが)
2020-05-12 23:38:45部品点数が多く整備に手間が掛かる、という話であるが、これは検証が困難である (62式機関銃の部品点数が載ってる民間の本があるのだが、いまだ見つけられていないため。国会図書かとかも閉まってて資料にアクセスできない) が、極端に多くなる要素は全く見受けられない むしろ少ない可能性すらある
2020-05-12 23:43:52部品同士のクリアランスが大きく部品脱落が頻発 これに関しては全く検証不能である 製造図面があれば検証可能だろうが、少なくとも私が手に入れられるものではない またクリアランスの大きさは脱落に関係しない場合も多い この検証は私以外の人物が然るべき資料でやるべきだろう(表に出せるかは別)
2020-05-12 23:47:02上述のクリアランスが大きいせいで安全装置を掛けていても衝撃で暴発 これは完全なる誤りである これは複合的な故障である 62式機関銃の安全装置は逆鉤にのみ作用する すなわち逆鉤を下げられないようにすることで撃てなくするというものである ところで機関銃には突っ込みという故障がある pic.twitter.com/9X3NVKISGc
2020-05-12 23:51:29図は十一年式軽機関銃のものである これは弾丸の位置が不正で薬室にうまく弾丸が入らず遊底が止まってしまう現象である もし射撃中に突っ込みが起こったことに気づかず安全装置をかけたとすれば、遊底は引っかかった弾薬のみで前進が阻害されていることとなる ここで移動しようとして衝撃を与えれば
2020-05-12 23:54:13その衝撃で弾薬が動き引っかかりが取れ、遊底が前進し閉鎖、発砲されてしまう これは実際十一年式軽機関銃で発生した事故であり、死亡者が出たこともある重大な故障である これは移動前に必ず槓桿を引き、揺底を確実に逆鉤に鉤してから安全装置を施すなどで改善し得るだろう
2020-05-12 23:57:21キャリングハンドルを持って運搬中にやけに軽い為に手元を見ればハンドルに繋がった銃身だけを運んでいた という問題 これは62式機関銃の提把が銃身交換のためのレバーを兼ねる構造だからである 普段は提把は少しこの写真より右側にある これは銃身交換のための溝に提把をかみ合わせた状態である pic.twitter.com/qg9yVnp7Z2
2020-05-13 00:00:55しかしこれだけでは銃身交換はできない 尾筒上にあるほそっこい棒みたいなのが銃身を固定する筒の回り止めである 本来は尾筒覆を開けない限りこの周り止めは前進してかみ合うので銃身を固定する筒は回ることができないのである 交換するときには尾筒覆いを開けねばならぬ 勝手に回る状態というのは
2020-05-13 00:07:38尾筒覆いが完全にしまっていないか、前方不注意で何かと激突しその衝撃にて開いたものである あるいは回り止めが激しく摩耗・変形しているかであるとも考えられる どれにせよ全く健全な状態とはいいがたく、取り扱いの是正、あるいは部品の交換などを行うことで改善し得るものであると信ずる
2020-05-13 00:07:3830口径の銃の規模に比べて銃身が細い為、銃身が曲がり易い これに関しては全く評価しがたい 普通に扱ううえで曲がるとは考え難く、ありうるとすれば先ほどのように前方不注意で何かに激突するとか、あるいは一挙に数百でも撃ち続けるという水冷機関銃でもやらないことでもやったかである
2020-05-13 00:10:51セミオートでの命中率に比してフルオートでは命中率が悪い そんなものは概してどんな銃でも同じなのだ 次
2020-05-13 00:15:25一発、若しくは数発撃っただけで弾詰まりを起こす 上記とは逆に引き鉄から手を離しても射撃が継続する この二つは実は原因が同一である。突っ込みも同一であるのだが 画像は十一年式軽機関銃の教範の抜粋であるが、名前こそ違えど同じことが書いてある すなわちどれも銃尾機関の後退不良である pic.twitter.com/03pqIEQI6v
2020-05-13 00:24:09要は揺底が完全に後退すれば逆鉤に鉤されて止まるわけであるが、後退不良が生じ逆鉤に鉤される位置に来る前に力尽きて前進してしまうことがある この時どこまで下がったかによって 「次の弾が送られる前に前進したので不発(薬室内に実包なし)」 pic.twitter.com/DWqZyUgLOn
2020-05-13 00:32:10「次の弾が中途半端に送られた状態で前進(弾送り不良・突っ込み)」 「次の弾が完全に送られた状態で前進(自然撃発)」 62式機関銃の故障の多くは慢性的な銃尾機関の後退不足によるものが多い これにはいくつかの要素があるように思えるそれをまとめてみよう 見えてくるものがあるかもしれない
2020-05-13 00:32:11第1にガス筒の構造 もともと昭和35年の試作品でガス筒が尾筒につながっていなかったせいなのか何かはわからないが、その結合部は非常に貧弱に見える ここに力が加わるともしかしたらガス筒と中のピストン桿が擦ってしまうなどして後退不良を生じやすくする可能性があるのではないか pic.twitter.com/6JSScg2a7H
2020-05-13 00:39:39第2に『減装弾の仕様が決まるのが遅すぎた』こと 7.62mmの減装の仕様が定まったのは、公開されている本などでわかる範囲で言えば1961(昭和36)年の7月である ところで62式機関銃の最後の試作品は1960(昭和35)年度中に作られて、審査がされている 試作品の段階では全く弾薬の仕様は明確でない
2020-05-13 00:49:09候補には95%、90%、85%、80%、45%などがあったそうだ つまりどれが本命になるかわからないうちに設計がほぼ完成してしまったのだろう そして審査もいつから減装を用いたのか定かでない もしかしたら減装では審査をしていないかもしれない。審査がいつまでに終わったのかによるが、資料がない
2020-05-13 00:53:21そして制式になったわけである しかし調達の決まりが減装弾となってしまったので、当然だが減装に対応させねばならない ガス筒に導かれるガスの圧力は相当に弱いので、ピストンを動かす力も弱い さらにこの銃はショートストロークガスピストン式であった つまりある程度ピストンが揺底を押したら
2020-05-13 00:57:35後は質量のある揺底と遊底の合成体がその慣性のみで後退する その質量が減装弾には過大であったのでないかと私は疑っている ところでこの時代の自衛隊の火器は米国製の減装でない弾薬も概してそのまま扱えることが要求されている つまり強度を落とすような軽量化はできないということになる
2020-05-13 01:01:01こうなればどうしたって何をするにもドツボだ にっちもさっちもいかない 根本的な解決はできないままに、銃身のガス漏孔と規整子の孔の拡大にのみに留まってしまったのでなかろうか 減装でない弾薬を装填するときには規整子を交換する必要があるかもしれないが、概ねそのままでも問題なく撃てるはずだ
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