QBのサザエさんに関するちょっと怖いお話をテストもかねてまとめてみた

キュゥべえ @QB0

おや、今日ももうサザエさんのはじまる時間だね。ところで、そのサザエさんに関する奇妙な話を聞いたんだけれど、知りたいかい？　まどか

キュゥべえ @QB0

　ある会社員の男性なんだけれど･･････名前はそうだね、仮に坂本さんとしておくよ。 　その人があるとき、奥さんと娘を連れて世田谷の長谷川町子美術館に出かけたんだ。 　確か、まだ娘さんが小学生になったばかりだった頃じゃないかな。

キュゥべえ @QB0

長谷川町子美術舘には、サザエさんの街に自分の家が建てられる、っていうコーナーがあるらしいんだ。人気のあるコーナーだから知ってる人もいるんじゃないかな。そこに来るとやっぱり娘さんがやりたがって、坂本さんもいいよー、っていった。

キュゥべえ @QB0

屋根を奥さんと娘さんが水色で塗ってね。 壁には花の模様なんか描いたりして。それを町の模型にちょこんと置いて、坂本さんも「あー、こんなに簡単に家が建てられたら楽なんだけどなー」とか、思いながら見ていたんだ。

キュゥべえ @QB0

それから三ヶ月くらいして、坂本さんはもうそんなことはすっかり忘れてた。 　この人の会社っていうのは渋谷にあるんだよ。編集なんかの仕事みたいだけれど、その日は大きな仕事が終わった後で、仕事も昼過ぎに片付いちゃったから、もう帰れることになった。

キュゥべえ @QB0

　久しぶりに早く帰れて嬉しかったんだけれど、そこで「あ、そうだ。ちょっと寄り道していこう」と思いついたんだ。 　渋谷の近くに松蔭神社前って駅があってね。大学なんかもあったりして、住宅街なんだけれど割と賑やかで、昔からの商店街なんかも残ってる。

キュゥべえ @QB0

坂本さんは学生の頃、そのあたりに住んでいたことがあったんだ。 　「ちょうどいいから、久しぶりにいってみようかな」と思った。 三軒茶屋まで出て、世田谷線って電車に乗る。これが路面電車みたいな、緑の小さい電車なんだよ。それに揺られていると「ああ、懐かしいな」っていい気分になってきた。

キュゥべえ @QB0

とりあえず坂本さん、松蔭神社前で降りて、それから豪徳寺までいくことにしたんだ。学生時代に何度も歩いている道だからね。豪徳寺からは小田急線も出ているし、ちょうどいい。 それで商店街から松蔭神社のあたりまで、やっぱりあんまり変わってないなーって感じで、歩いていった。

キュゥべえ @QB0

ところが、そこからしばらく歩いているうちに、なんだかいきなり道がわからなくなってしまったんだ。自分がどこにいるのかわからない。住宅街なんだけれど、番地もなんにもなくてね。 「あれ、おかしいなあ」と思って、何度も歩いてる場所だから、まさか迷うことなんてないはずだし･･････。

キュゥべえ @QB0

でも、世田谷には駅が多いからね。まあいいや、そのうちどっか見覚えのある場所に出るだろうと思ってまた歩き出したんだ。そのうちに公園が見えてきた。あんまり大きくない公園で、近所の子供たちの遊び場になってそうな、そんな感じだった。だけど、それがどうもどこかで見たような覚えがある。

キュゥべえ @QB0

あれ、どこだったかな、ここ。考え込んでいると、今度はいきなり後ろから声をかけられた。「やあ、坂本さんじゃないですか」 振り向くと、そこにはぜんぜん知らない中年の男が立っていた。 右の頬にホクロがあって、愛嬌のある顔なんだけど、どうも見覚えがない。

キュゥべえ @QB0

「あの、すみません、どこでお会いしましたっけ？」って聞くと、男は笑いながら「今度おとなりになったものです」っていうんだ。坂本さん、その頃はマンションに住んでいたから、おとなりに誰が住んでいるかなんてよく知らないけれど、まあでも、相手がそういうんだからそうなんだろうなあと思った。

キュゥべえ @QB0

「ああ、そうなんですか。また、めずらしいところで会いますね」って挨拶のつもりでいうと、男はなぜかちょっと考えてから「坂本さんはまだ越していらっしゃらないんですか？」って、今度はたずねてきた。なんだそれ。変なこというなあ、この人。

キュゥべえ @QB0

「ここはいいところですよ。私も思い切ってやってきてよかったと思います」 　男がまた、いい笑顔でそういうんだ。どうも話が噛み合わない。 　この人は何をいっているんだろう。ひょっとすると、ちょっとどっかおかしいんじゃないかな。

キュゥべえ @QB0

それにしては自分の名前を知ってるし･･････考えてたら、なんだか薄気味が悪くなってきた。「どうですか？　よければそこら辺で一杯」 　男はそういうんだけれど、さすがに冗談じゃないと思ってね。 「すみません、今日はちょっと家で娘が待っていますから」って断ったんだ。

キュゥべえ @QB0

「あー、そうですか。それは残念です。うちの娘も早くお宅のお嬢さんと遊びたいっていっているんですよ。今度ぜひいらしてください」 　まだ何か男はいってる。でも坂本さんはもう怖いもんだから「失礼します」って、早足でそこから逃げ出したんだ。

キュゥべえ @QB0

それからどうにか大通りに出てタクシーをつかまえて、近くの駅までいって家に帰った。 　で、気になったもんだからね。奥さんに「今日、うちのおとなりさんだっていう人にあったんだけれど、となりどんな人だっけ」って聞いてみた。

キュゥべえ @QB0

だけど、これがおかしいんだよ。 　となりに住んでいるのは一部屋が年配の夫婦で、もう一部屋も女の子なんかいないっていうんだ。 「近所の人かな」って聞いても、奥さんはやっぱり心当たりがないっていう。どうも気味が悪いから、しばらく娘にもいって気をつけようってことになった。

キュゥべえ @QB0

――でも、それから一ヶ月くらいして、何にもない。 　坂本さんもまた仕事が忙しくなって、さすがにもうそんな男のことなんか忘れかけていたんだ。

キュゥべえ @QB0

その日はちょうど日曜日だったから、夕方娘さんと一緒にテレビを見てた。「ちびまる子ちゃん」が終わって、今度は「サザエさん」がはじまる。そこで坂本さんは、思わず「あっ」って叫んだ。

キュゥべえ @QB0

それはタラちゃんが公園で遊んでいる場面だったんだけれど、その後ろのベンチにぽつんと座っている男。それが、あのときに声をかけてきた男にそっくりだった。顔の雰囲気から、ホクロの位置までみんな同じなんだね。その男が、テレビの向こうからじーっとこっちを見て微笑んでる。

キュゥべえ @QB0

そのとき、もう一つ坂本さんは気づいた。公園の奥に描かれている家。その屋根がまた綺麗な水色だったんだよ。まるで、ちょうどあの美術館で、奥さんと娘が塗っていた家の屋根みたいに――。

キュゥべえ @QB0

キミも、あの街にいきたくなったら、いつでも声をかけてね。ボクがタマさんにいってあげるよ。