編集部イチオシ

「Tant que vivray」考

ルネサンスのシャンソンの定番「Tant que vivray」のリュート伴奏動画をSAにアップするにあたり、演奏者の坂本龍右がこの曲について調べて得たことを、意外な事実も含めてみなさんにお知らせします。
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Smart Accompanist @smrtaccompanist
#SA新曲予告 すばらしいプロモーションビデオで堂々参画いただきました坂本龍右 @contra2nd さん、2日連続となる明日もマイナスワン動画を公開させていただきます!曲はもうお分かりですよね?この動画の中でも演奏しているセルミジの「Tant qe vivray」です!→ pic.twitter.com/0us6nemBAl
坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
この曲に関しても、私からの「耳よりな情報」を後ほど、ご紹介させていただきます。調べていくと本当に面白いことがたくさん...! twitter.com/smrtaccompanis…
Smart Accompanistにお送りする「Tant que Vivray」を動画撮影するにあたり、曲の成立などを改めて調べてみたところ、新たな発見が色々ありました!

Smart Accompanist 「Tant que Vivray」with 坂本龍右(リュート)はこちらから↓↓
https://filmuy.com/smartaccompanist/video/416795655


1. セルミジ作曲??
坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
本日公開となったC.セルミジTant que vivrayは、パリのアテニャンによっておそらく1528年に初版が出ました。ですが、この時点ではまだセルミジの名は曲に添えられていません。同者が1535年に出版した、現在では断片が残る楽譜の一点のみ、セルミジの名前があります。一体どうしたことでしょうか!? twitter.com/smrtaccompanis… pic.twitter.com/6shgnClxvJ
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坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
初版では最後に置かれたこの曲。当時の代表的詩人、C.マロの詩に乗せて歌われる親しみやすい旋律は、またたく間に当時のパリの人々に広まりました。これは3年後に再版された際の譜面。スペースの余裕から、歌いだしの歌詞の略字も減らされたのが確認できます。逆にaが2つ重なるのが面白いですね。 pic.twitter.com/B1i9v6oBdB
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坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
4声部のシャンソンとして再版されるよりも前に、Tant que vivrayはアテニャン自身によってリュートのソロ版、及びリュート伴奏付きの歌曲として一続きの形で出版されました。そしてこの資料こそが、フランス語圏で出版されたものの中では、現存する最古のリュート用タブ譜なのです! pic.twitter.com/QHPpLDZ0Gb
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坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
マロの詩集は世紀を超えてベストセラーで、フランス文学の古典的扱いを受けてきました。今でもアンティーク本が高価で取り引きされるほど。そしてTant que vivrayの歌詞は第1節で、アテニャンの出版譜では第2節が記されていません。2節も歌われたい方は、こちらをどうぞwww1.cpdl.org/wiki/index.php…
坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
当時はシャンソンのパート譜と、詩集を別々に持っている人も多かったでしょうから、楽譜に記されてなくても続きで2節を歌うことは、当たり前に行われていたはず。このクレマン・ジャヌカン・アンサンブルの演奏を聞いてみると、2節に入ってからは絶妙な装飾が加わります!youtube.com/watch?v=I7Mria…
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坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
今回の #SA の動画で、私が2節分演奏したのは、2節とも歌っていただく目的のほかに、リュートによる伴奏形態の違いを体験していただきたいということもあります。1度目は初版のシャンソンのパート譜の下3声を、音価も含めて忠実に弾き、2度目は当時のリュート用伴奏の編曲譜をベースに演奏しています!
坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
ではなぜ、2回目も当時のリュート用伴奏の編曲譜を「そのまま」弾かなかったのですか?というご質問があるかもしれません。これにはこれで、ちゃんとした理由があるのですが、説明しようとすると少々マニアックなネタになるので(...)また後日。

2. 編曲、津々浦々

まずは、今回演奏したリュート伴奏のコンセプトから。

坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
Tant que vivrayのリュート用伴奏譜とソロ版では、シャンソンの後半のバスの音型が異なります。これらは何回も繰り返して現れるため、片方が誤植と片付けるわけにはいかないようです。一見些細なことのようですが、実際に比べて弾いてみると、大変印象が異なります! pic.twitter.com/TX0qh8tnEF
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坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
初版のバスのパート譜に戻って確認。面白いことにソロ版の方が原曲のシャンソンに忠実なことが分かります。あくまで私の推測ですが、リュート伴奏譜の方ではここは2声しか弾かないため、そこだけ取り出すと完全5度→オクターブの空虚な進行が発生するのを避けるべく、前者を長3度に置き換えたのでは? pic.twitter.com/kF4TWC83aq
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坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
もう一つの仮説として「リュートソロ版と伴奏版では、アレンジャーが異なっていた」という線もなくはないです。アテニャンの職業は何よりも出版者であり、リュートもある程度弾けたとは思いますが、急いて出版する際に曲のアレンジを誰かに投げることだってあったはず...さて、真実はどこに?
坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
今回の #SA 用の動画撮影では熟考の末、この箇所に関してはアテニャンのリュート伴奏譜を忠実に弾くのを断念しました。スペリウス(この曲の一番上の声部)が欠けたマイナスワン音源と言いつつも、それ以外のパートを重ねていただくのもOKにするためです。というわけで、ちょっとした舞台裏紹介でした!

・アテニャンの鍵盤用

坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
こちらは、リュート用編曲に遅れることわずか1年後の1530年に同じくアテニャンによって出版された、鍵盤楽器用のTant que vivrayです。施されたディミニューションの豊かさでの点では、リュート版をはるかに凌いでいると言えるでしょう。ちなみにこれと同じ年に、日本では上杉謙信が誕生しています! pic.twitter.com/0tr56RP2lI
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・フェンリャーナのビウエラ用

坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
フランス語圏を飛び越えてシャンソン「Tant que vivray」が器楽の曲集に現れた例の一つとして、1554年セビリアで出版されたフェンリャーナビウエラ用編曲が挙げられます。グロサ(Glosa)とは、この場合は旋律的な装飾のこと。 pic.twitter.com/k2epjRyhda
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坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
グロサの前に、フェンリャーナはTant que vivrayの4声編曲を、控えめなディミニューションを添えて示します。赤い数字のポジションに相当する音は、ビウエラで弾くほかに、歌うことを推奨しています。このタブ譜では高い位置の線は低い音の弦を示すので、ここに印刷された歌詞はバス声部用なのです! pic.twitter.com/SrCUfBSZPo
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坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
さらに詳しく見ると、原曲のシャンソンのバス声部とは随分違った音の動きになっています。ポリフォニーですから、バスが違うと内声もそれに影響されて変えられています。もっと言うと、肝心な箇所のリズム曲全体の「尺」さえ、後続のグロサも含めて相当異なるのです。一体どうしたことでしょうか?
坂本龍右 Ryosuke Sakamoto @contra2nd
これも私なりの解釈を。まずは音楽的見地から。Tant que vivrayは原曲では全声部に歌詞があったが、器楽奏者たちには何よりスペリウス声部が親しみやすく、それを中心に編曲するので残り3声を自由にいじったり、時に省略したりした。またフェンリャーナ自身はバス声の持ち主だった(バッハのように!)。
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